2020年12月25日金曜日

2020年に読んだ本 マイ・ベスト12

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今年読んだ本の中のベスト12。

2020年に読んだ本は130冊ぐらい。今年はちょっと多かった。
コロナはあまり関係ない。むしろ通勤時間が減ったので読む時間は減ったかもしれない。にもかかわらず冊数が増えたのは読むスピードが速くなったからか? この歳で?

130冊の中のベスト12。
なるべくいろんなジャンルから選出。
順位はつけずに、読んだ順に紹介。

ちなみに今年のワーストワンはダントツで、
 水間 政憲『ひと目でわかる「戦前日本」の真実』
でした。十年に一度のゴミ本( 感想はこちら )。



エレツ・エイデン ジャン=バティースト・ミシェル
『カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する』


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 ノンフィクション。

 ありとあらゆる書籍データから、発行年ごとに使われている単語を集計。それをグラフ化することで、意外な事実が見えてくる。

 本に出てくる単語を数えているだけなのに、いろんなものや国の栄枯盛衰や、文法変化の法則、思想弾圧の歴史が見えてくる。



杉坂 圭介『飛田で生きる』



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 エッセイ。

 現代に残る遊郭・飛田新地(大阪)で料亭という名目の売春宿を経営していた人物による生々しい話。

 意外にも飛田新地の料亭は、暴力団は徹底的に排除、定められた営業時間はきっちり守る、料金は明朗、あの手この手で騙しての勧誘もしない……と、ものすごくまじめにやっているそうだ。
 売春は非合法なのに飛田が生き残っている理由がわかる。なんだかんだいっても今の社会に必要な場所なのだ。



ジャレド=ダイアモンド『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』

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 ノンフィクション。

 人類の性行動は他の動物とまったく異なる。交尾を他の個体から隠れておこなう、受精のチャンスがないときでも発情する、閉経しても生き続ける……。ヒトの性行動は例外だらけだ。おまけにどれも、一見繁殖には不利なことばかりだ。

 この本で知ったのだけど、オスが子育てをする動物は決してめずらしくない。ヒトのオスが乳を出せるようになる可能性もないではないらしい。あこがれのおっぱいが自分のものに……(そういうことじゃない)。



朝井 リョウ『何者』

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 小説。

 就活をしていた時期は地獄の日々だった。就活の場では、ぼくは何者でもなかった。履いて捨てるほどいる学生の中のひとり。それどころかコミュニケーション能力の低いダメなやつ。自尊心が叩き潰された。

『何者』には当時のぼくのような登場人物が出てくる。何者でもないのに、他者より優れているとおもっているイタい人間が。
 おもいっきり古傷をえぐられた気分だ。やめてくれえとおもいながら読んだ。個人的にすっごくイヤな小説だった。それはつまり、いい小説ということでもある。



福場 ひとみ『国家のシロアリ』

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 ノンフィクション。

 信じたがたいことだが、東日本大震災の復興予算のうち莫大な金額が災害とはまったく無関係なことに使われていた。外交費用、税務署の庁舎整備、航空機購入費、クールジャパン振興費……。おまけに被災した自治体への支給は渋っておいて、国会議事堂の電灯を変えたりスカイツリーの宣伝に復興予算が使われていた。

 なんとも胸糞悪い話だが、これは事実なのだ。そしていちばんおそろしい話は、流用の責任を誰一人とっていないということ。

 おそらくこれからコロナウイルス関連予算も同じように無関係なことに使われるのであろう。だって誰一人責任をとってないんだもの。官僚が味をしめてないはずがない。



更科 功『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか』

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 ノンフィクション。

 人類700万年の歴史がこれ一冊に。

 ぼくは、ヒトが他の動物よりも優れているから今の地位を築いたのだとおもっていた。
 だがヒトの祖先は他のサルよりも弱かったからコミュニケーション能力が発達し、ネアンデルタール人よりも小さく脳も小さかったため、飢えに強く、道具を作ることができた。

 ホモ・サピエンスはぜんぜん優れた種族じゃないのだ。



ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』

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 小説。

 言わずと知れた有名作品だが、やはり長く愛される作品だけあってすばらしい。特にラストの一文の美しさは強烈。物語すべてがこの一文のためにあったかのよう。まちがいなく文学史上トップクラスの「ラスト一行」だ。

 みんな頭が良くなりたいとおもってるけど、賢くなるのって幸せにはつながらないよね。娘を見ていてもつくづくそうおもう。



伊藤 亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』


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 ノンフィクション。

 目が見えないことは欠点だと感じてしまうけど、目が見えないからこそ「見える」ものもあるということをこの本で知った。

 目が見えないことが障害になるのは、彼らが劣っているからではなく、社会が「目が見えること」を前提に作られているからだ。
 この先テクノロジーが進歩すれば、目が見えないことは近視や乱視程度の軽微なハンデになるかもしれない。



マシュー・サイド『失敗の科学』


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 ノンフィクション。

 多くの事例から、失敗が起きる原因、失敗を減らすシステムを導きだす本。全仕事人におすすめ。

 世の中には「まちがえない人」がたくさんいる。
 人気のある政治家やテレビのコメンテーターはたいていそうだ。「私の言動はまちがっていた」と言わない。
 こういう人は失敗から何も学ばない。学ばないから何度でも同じ失敗をする。

 トップに立つべきは「失敗しない人」じゃなくて「失敗を認められる人」であってほしいのだが。



櫛木 理宇『少女葬』


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 小説。

「イヤな小説」はけっこう好きなんだけど、そんなぼくでもこの小説は読むのがつらかった。
 イヤな世界に引きずりこまれる。

 二人の少女のうちどちらかが惨殺されることが冒頭で明かされるので、気になるのは「どっちが殺されるのか?」
 そうおもいながらサスペンスミステリとして読むと胸が絞めつけられる。

 決して万人にはおすすめできない小説。



坂井 豊貴『多数決を疑う』


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 ノンフィクション。

 ついつい「多数決=民主主義」とおもってしまいがちだけど、この本を読むと多数決が民主主義からほど遠い制度だとわかる。
 市民からいちばん嫌われている候補者が選ばれることもありうる制度。まったくいい制度じゃない。
 多数決のメリットはほとんど「集計が楽」だけといってもいい。

 政治家のみなさんは、そんなダメダメ制度によって選ばれただけであって、決して「民意を反映して」選ばれたわけではないとよーく肝に銘じてください。



M.K.シャルマ
喪失の国、日本 インド・エリートビジネスマンの「日本体験記」』



 エッセイ。

 今年いちばんおもしろかった本。
 1992年に来日したインド人が見た日本。ユーモアが随所に光るし、観察眼も鋭い。
 そしてインドや日本に対する批判も的確だ。特に今読むと、シャルマ氏が20年以上前に指摘した「日本の欠点」はまるで改善されておらず、それが原因で日本が衰退したことを痛感する。




来年もおもしろい本に出会えますように……。


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