カラフル
森絵都
死んだあと、天使の世界の抽選にあたって、ある少年の身体に入って人生をやり直せることになる……というあほみたいな導入。まあこのへんはどう書いても嘘くさくなるので、このぐらいのハイテンポでさっくり片付けちゃったほうがいい。変にもっともらしい理由をつけようとするほうが見苦しい。
導入がそうであったように、展開も結末もあくまでライト。悪いことは起こっても、あたりまえのように最後はすべて丸く収まる。しこりなんて残らない。生まれ変わる前の“ぼく”はどんな人間だったのかという謎もあるが、これも「そうなるだろうね」というところに結着する。
とにかくきれいにまとまっていて、良くも悪くも“十代向け小説”だった。
『カラフル』では生まれ変わりを通していじめや身体や進路や恋愛など中学生の悩みが描かれるが、そこで描かれる悩みは「一般的に想像されるもの」の域を出ない。
いじめも、援助交際も、進路の問題も、どこかで聞いたことのあるようなレベルの話。中学生のいじめ、と聞いて大人が想像するレベルのいじめ。
だから読んでいて、頭を使わなくていい。想像の埒外にあるようなハードな展開は待っていないから。新聞の社会面やワイドショーで消化されるぐらいの深みしかない。読んでいて「これはいったい何が起こっているんだろう?」と頭をひねるようなポイントはない。
とまあ、個人的には浅い小説だなという感想だったのだが、それはぼくがいろんな小説を読んできたおっさんだからであって、児童文学を卒業したばかりのローティーンには十分刺激的な内容だとおもう。
実はこの小説、ぼくが読んだのではなく、小五の娘が読んで「おもしろかったよ」とぼくに貸してくれたのだ。
せっかく娘が貸してくれたので最後まで読み、娘に感想を訊かれたら「いろいろ仕掛けがあってけっこうおもしろかったわ」とお茶を濁した。「浅いねー」なんて大人げないことはいいませんよ、もちろん。
いや実際、ぼくが小学生のときに読んでたら十分おもしろかったとおもうしね。
児童文学と大人向けの小説の橋渡し役のような、ティーン向け小説としてはすばらしい小説。つまりおっさんが読んでぶつくさ言うような小説じゃないってことです、ごめんなさい。
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