2050年1月1日土曜日

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2026年5月20日水曜日

【読書感想文】奥田 英朗『リバー』 / 現実の殺人事件を小説で書いても

リバー

奥田 英朗

内容(e-honより)
群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見!十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。かつて容疑者だった男。取り調べをした元刑事。娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか―。

 渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が見つかった。この付近では十年前にも同種の事件があり、真犯人不明となっている。はたして十年前の事件と今回の関連は。

 容疑者として浮かび上がったのは、十年前に逮捕されたが不起訴となった常習犯罪者、解離性同一性障害(多重人格)の青年、死体遺棄現場で目撃情報のあった期間工の男。それぞれが異なるタイプの暴力性を持っている。

 真相解明に向けて、群馬県警、栃木県警、新聞記者、被害者遺族がそれぞれの立場で犯人を追う――。



 群像劇なので登場人物が多く目まぐるしく視点が切り替わるが、あまりごちゃごちゃしないのはさすが奥田英朗。へたな作家がこれを書いたら誰が誰だかわからなくなるだろう。

 事件発生、三人それぞれに怪しい容疑者たち、徐々に示される手掛かり、新たな事件……と、徐々に真相に迫っていくのでどんどん引き込まれる。

 そして終盤でいよいよ真相解明。


 んー。まあ、悪くはない。決して悪くはない。

 でも、ここまでたっぷりページを使って引っ張ってきたのだから、もっともっと驚く展開を見たかったかなあ。高望みしすぎかもしれないけど。

 終盤はずいぶんバタバタっと物語を畳んだ感じがした。


 容疑者は三人に絞られているので真犯人がわかったところで意外性はないし、だったらその分意外な動機があるのかとおもいきや、それもない。というより動機についてはほとんど語られない。犯人の内面については最後まで闇の中だ。

 現実の殺人事件なんてそんなもんといってしまえばそれまでだけど、だったら小説で書く必然性があるのだろうか、という気もする。


 奥田英朗氏は『ナオミとカナコ』『オリンピックの身代金』などで犯罪に手を染める人の抱える闇を見事に描いてきただけに、この作品はちょっと期待に届かなかったな。犯人側の視点で書いてくれたらもっとおもしろかったかも。


【関連記事】

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2026年5月13日水曜日

小ネタ50(浦島太郎 / 坂本 / エウレカ)

浦島太郎

 そういや浦島太郎って漁師だよね。絵本のイラストでも、釣り竿と魚籠を持っている姿で描かれる。

 浦島太郎や乙姫様の感覚では、魚を獲って食うのはよくて、亀をいじめるのはダメなのだろうか。

1.  食うのはいいがいじめるのは許さん

2.  亀だけは特別な存在である

3.  乙姫様は浦島太郎が漁師だとは知らなかった。浦島太郎は自分が殺生するのはいいが他人の殺生は許さないヤバいやつだった


坂本

 共同通信のニュース速報。

 どこの坂本かさっぱりわからない。「五郎丸」や「中曽根」のようなめずらしい名前ならほとんどの日本人が同じ人を思い浮かべるだろうが、坂本はかなり割れそうだ。

 ラーメンズのコント『高橋』を思いだした。


エウレカ

 昔のバイト先での出来事。

 更衣室で着替えていたおじさんが、着替えの途中で何か大事な仕事を思いだしたらしく下着姿で出てきた。

 アルキメデスか。


【読書感想文】麻耶 雄嵩『貴族探偵』 / 短篇で探偵の強すぎるキャラは邪魔

貴族探偵

麻耶 雄嵩

内容(e-honより)
信州の山荘で、鍵の掛かった密室状態の部屋から会社社長の遺体が発見された。自殺か、他殺か?捜査に乗り出した警察の前に、突如あらわれた男がいた。その名も「貴族探偵」。警察上部への強力なコネと、執事やメイドら使用人を駆使して、数々の難事件を解決してゆく。斬新かつ精緻なトリックと強烈なキャラクターが融合した、かつてないディテクティブ・ミステリ、ここに誕生!傑作5編を収録。


「貴族探偵」を名乗る男が事件現場に現れ、召使を使って謎を解いていく……というミステリ。

 一風変わった設定だが、完全な出オチ。ただ貴族探偵というキャラクターがあるだけで、ミステリとしては平凡(というより標準以下では)。ミステリ部分が弱いからキャラでごまかしただけに見える。

 こういう個性的な探偵役というとどうしても筒井康隆の『富豪刑事』を思いだしてしまうが(今から50年以上前の作品)、『富豪刑事』のほうは富豪である必然性があった。金に糸目をつけずに謎解きをする、事件による被害額よりも捜査費用のほうがはるかに高いというおもしろさ。

 だが貴族探偵はべつに貴族である必然性がない。貴族の特権として「警察上層部とのコネクションがあるので事件現場に自由に出入りできる」だけで、謎解き自体はいたってふつうだ。というか古い。貴族ならではの捜査方法とか、平民には決してできない推理とかがあるわけではない。

 趣向を凝らしているようでひねりがない。ただ奇をてらっただけ、という感じ。



 本格ミステリにありがちなのだが、とにかくわかりづらい。

 ややこしい館でややこしい死に方をしている、みたいな事件なのでまず全貌がつかみづらい。容疑者が何人か出てくるが、全員貴族探偵にキャラ負けしているので、誰が誰だかわからなくなる(謎解き前に探偵が自己主張しすぎなんだよね。短篇で探偵の強すぎるキャラは邪魔)。

 がんばってややこしい謎を考えたんだね、ということは伝わるが、読者がそのややこしさに付き合ってあげるほどの魅力がある設定じゃない。


 途中で嫌になったのだが、最後に大きな仕掛けがあるかもしれないとおもって(ミステリはたまに最後まで読むとがらっと印象が変わる作品がある)がんばって読んだのだが、とうとう最後までその印象は変わらないかった。というかラストの『春の声』がいちばんとんでもミステリだった。「自分が刺されてることに気づかずそのまま他の人間を殺しにいき、犯行後に絶命する」とかひどすぎるだろ。

 


【関連記事】

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2026年5月8日金曜日

待ち合わせのお作法


 中1の娘が、中学校で新しくできた友だち3人と日曜日に電車に乗って映画を観にいくことになった。

 中学生ともなると、人によって最寄り駅が異なる。そこで「9時に〇〇駅で待ち合わせ」という約束をしたそうだ。


 そして日曜日の朝8時40分。

 娘が「ちょっと電話するね」と言ってリビングで電話をはじめた。

 その電話を聞いていて驚いた。

「どうする? どこで待ち合わせる?」
「9時でいい? 9時半にする?」
「(お金をいくらぐらい持っていったらいいかという話で)3,000円ぐらいでいいんじゃない?」
「××ちゃんにも連絡したけどもう電車乗ってるみたいで電話できないって」

 いやいや君たち。9時に待ち合わせっていう話だったんだよね。なんで8時40分にそんな相談してるの。ていうか電話している間に9時になってるし(結局待ち合わせは9時半になった)。

 4人が朝に駅で待ち合わせするんだったら、遅くとも前の日の晩までには待ち合わせ場所と時刻と持ち物は決めておかなきゃだめじゃない。

 しょっちゅう出かけてる友だちならまだしも、はじめて一緒に出掛ける友だちなんだろ。なんで待ち合わせの数十分前に相談してるの。ほら、もう電車に乗ってる子もいるじゃない。


「そういうことはもっと早めに相談しなきゃだめでしょ」
と言って娘を送り出した。

 あれでうまくいくとはおもえないけど、まあ失敗するのも勉強だろう。


 夕方、帰ってきた娘に「みんなと会えた?」と訊くと、
「そりゃ会えたよ」とあっさり返された。

 えー、会えたの? あんないいかげんな待ち合わせで……。

 これがスマホネイティブ世代か。ぼくが学生の頃は、スマホどころか携帯電話もなかったから、待ち合わせに失敗したらもう会えない覚悟で時刻と場所をちゃんと決めてたのに、そんなやりかたしてたらいつか必ず困るぞ……と言いかけて、これ完全に迷惑な年寄りの言動だよなと思いなおして口をつぐんだ。