2050年1月1日土曜日

犬犬工作所について

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 読書感想文リスト



2026年5月13日水曜日

小ネタ50(浦島太郎 / 坂本 / エウレカ)

浦島太郎

 そういや浦島太郎って漁師だよね。絵本のイラストでも、釣り竿と魚籠を持っている姿で描かれる。

 浦島太郎や乙姫様の感覚では、魚を獲って食うのはよくて、亀をいじめるのはダメなのだろうか。

1.  食うのはいいがいじめるのは許さん

2.  亀だけは特別な存在である

3.  乙姫様は浦島太郎が漁師だとは知らなかった。浦島太郎は自分が殺生するのはいいが他人の殺生は許さないヤバいやつだった


坂本

 共同通信のニュース速報。

 どこの坂本かさっぱりわからない。「五郎丸」や「中曽根」のようなめずらしい名前ならほとんどの日本人が同じ人を思い浮かべるだろうが、坂本はかなり割れそうだ。

 ラーメンズのコント『高橋』を思いだした。


エウレカ

 昔のバイト先での出来事。

 更衣室で着替えていたおじさんが、着替えの途中で何か大事な仕事を思いだしたらしく下着姿で出てきた。

 アルキメデスか。


【読書感想文】麻耶 雄嵩『貴族探偵』 / 短篇で探偵の強すぎるキャラは邪魔

貴族探偵

麻耶 雄嵩

内容(e-honより)
信州の山荘で、鍵の掛かった密室状態の部屋から会社社長の遺体が発見された。自殺か、他殺か?捜査に乗り出した警察の前に、突如あらわれた男がいた。その名も「貴族探偵」。警察上部への強力なコネと、執事やメイドら使用人を駆使して、数々の難事件を解決してゆく。斬新かつ精緻なトリックと強烈なキャラクターが融合した、かつてないディテクティブ・ミステリ、ここに誕生!傑作5編を収録。


「貴族探偵」を名乗る男が事件現場に現れ、召使を使って謎を解いていく……というミステリ。

 一風変わった設定だが、完全な出オチ。ただ貴族探偵というキャラクターがあるだけで、ミステリとしては平凡(というより標準以下では)。ミステリ部分が弱いからキャラでごまかしただけに見える。

 こういう個性的な探偵役というとどうしても筒井康隆の『富豪刑事』を思いだしてしまうが(今から50年以上前の作品)、『富豪刑事』のほうは富豪である必然性があった。金に糸目をつけずに謎解きをする、事件による被害額よりも捜査費用のほうがはるかに高いというおもしろさ。

 だが貴族探偵はべつに貴族である必然性がない。貴族の特権として「警察上層部とのコネクションがあるので事件現場に自由に出入りできる」だけで、謎解き自体はいたってふつうだ。というか古い。貴族ならではの捜査方法とか、平民には決してできない推理とかがあるわけではない。

 趣向を凝らしているようでひねりがない。ただ奇をてらっただけ、という感じ。



 本格ミステリにありがちなのだが、とにかくわかりづらい。

 ややこしい館でややこしい死に方をしている、みたいな事件なのでまず全貌がつかみづらい。容疑者が何人か出てくるが、全員貴族探偵にキャラ負けしているので、誰が誰だかわからなくなる(謎解き前に探偵が自己主張しすぎなんだよね。短篇で探偵の強すぎるキャラは邪魔)。

 がんばってややこしい謎を考えたんだね、ということは伝わるが、読者がそのややこしさに付き合ってあげるほどの魅力がある設定じゃない。


 途中で嫌になったのだが、最後に大きな仕掛けがあるかもしれないとおもって(ミステリはたまに最後まで読むとがらっと印象が変わる作品がある)がんばって読んだのだが、とうとう最後までその印象は変わらないかった。というかラストの『春の声』がいちばんとんでもミステリだった。「自分が刺されてることに気づかずそのまま他の人間を殺しにいき、犯行後に絶命する」とかひどすぎるだろ。

 


【関連記事】

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2026年5月8日金曜日

待ち合わせのお作法


 中1の娘が、中学校で新しくできた友だち3人と日曜日に電車に乗って映画を観にいくことになった。

 中学生ともなると、人によって最寄り駅が異なる。そこで「9時に〇〇駅で待ち合わせ」という約束をしたそうだ。


 そして日曜日の朝8時40分。

 娘が「ちょっと電話するね」と言ってリビングで電話をはじめた。

 その電話を聞いていて驚いた。

「どうする? どこで待ち合わせる?」
「9時でいい? 9時半にする?」
「(お金をいくらぐらい持っていったらいいかという話で)3,000円ぐらいでいいんじゃない?」
「××ちゃんにも連絡したけどもう電車乗ってるみたいで電話できないって」

 いやいや君たち。9時に待ち合わせっていう話だったんだよね。なんで8時40分にそんな相談してるの。ていうか電話している間に9時になってるし(結局待ち合わせは9時半になった)。

 4人が朝に駅で待ち合わせするんだったら、遅くとも前の日の晩までには待ち合わせ場所と時刻と持ち物は決めておかなきゃだめじゃない。

 しょっちゅう出かけてる友だちならまだしも、はじめて一緒に出掛ける友だちなんだろ。なんで待ち合わせの数十分前に相談してるの。ほら、もう電車に乗ってる子もいるじゃない。


「そういうことはもっと早めに相談しなきゃだめでしょ」
と言って娘を送り出した。

 あれでうまくいくとはおもえないけど、まあ失敗するのも勉強だろう。


 夕方、帰ってきた娘に「みんなと会えた?」と訊くと、
「そりゃ会えたよ」とあっさり返された。

 えー、会えたの? あんないいかげんな待ち合わせで……。

 これがスマホネイティブ世代か。ぼくが学生の頃は、スマホどころか携帯電話もなかったから、待ち合わせに失敗したらもう会えない覚悟で時刻と場所をちゃんと決めてたのに、そんなやりかたしてたらいつか必ず困るぞ……と言いかけて、これ完全に迷惑な年寄りの言動だよなと思いなおして口をつぐんだ。



2026年4月30日木曜日

【読書感想文】高橋 哲哉『沖縄について私たちが知っておきたいこと』 / 沖縄は「戦争特区」

沖縄について私たちが知っておきたいこと

高橋 哲哉

内容(e-honより)
沖縄になぜ基地が集中しているのか?基地問題を理解し、その解消を目指していくためには、沖縄が日本に併合された経緯や、その後何度も本土の犠牲になった歴史を知らなければならない。琉球処分、人類館事件、沖縄戦、アメリカによる統治、基地問題…。本土と沖縄の関係を読み解くための大事な一冊。

 沖縄の近代史と現在抱えている問題(主に基地問題)についての本。

 自分が沖縄の問題についていかに知らないかを思い知らされた。



 琉球王国が「琉球処分」を経て日本になった、という経緯すらぼくは知らなかった。歴史の教科書にも載ってなかったよ。日本の歴史においてかなり重要なトピックスだとおもうのに。沖縄の学生は教えられるのかな。

 吉田松陰が「琉球処分」の構想を示していたそうだ。

 その松陰が獄中で記したという「幽囚録』に、次のような趣旨の記述があります。
「日本はいま武力を整え、軍艦大砲を備えれば、外に向かって大きく飛躍することができる。蝦夷地、琉球、さらに朝鮮、満州、そして支那、ルソンなどを日本の支配下に収めることができる」。
 松陰はここで、日本の周辺地域を軍事力で奪取していく際に、琉球を他の諸藩の藩主と同じように幕府に従わせるのだ、という言い方をしています。のちに明治政府が行なう「琉球処分」は、まるでこの松陰の計画を実行するかのように進められたのです。「琉球処分」とは、一八七二年から七九年にかけて、明治政府が琉球王国を廃して沖縄県を設置した一連の措置をいいます。その際、明治政府は、全国で実施した廃藩置県と同じ形を取るために、まず琉球国王の尚泰を琉球藩主として封じて華族とし、東京に藩邸を与えます。そのうえで、清との朝貢関係を続けようとする琉球側の抵抗を押し切り、尚泰を強制的に東京に連行して沖縄県を設置し、琉球王国を滅亡させたのです。

 琉球王国は独立国家であり、文化圏としては日本より中国に近かったそうだ。だが江戸時代に島津氏に侵攻されて領土(奄美群島)を奪われ、さらに明治政府によって強引に日本に組み込まれた。その際琉球王国は中国(清)に助けを求めたが、日清戦争で清が破れたことにより日本のものになってしまったのだそうだ。

 知らなかった……。沖縄の人からしたら「そんなことも知らないのか」とおもうレベルの話なのかもしれないが。


 こういう経緯を知ると、単純に「沖縄も日本だ!」とはとても言えない。むりやり植民地にしたようなもんだもんな。

 さらに日本政府が沖縄にしてきた仕打ちはそれだけではない。

 太平洋戦争で日本軍が沖縄を“盾”にしたのは周知の事実だし、戦争の最中にも「沖縄を差し出すことで国体の護持(要するに天皇制の維持)を図っていた。戦後は沖縄はアメリカ統治下におかれた。さらに返還後も昭和天皇からアメリカに対して「米軍が沖縄に駐留を続けてくれることが望ましい」なんて秘密の要請があったそうだ(天皇が政治に口出ししている時点で完全に違憲行為だが)。

 ずっと日本政府は沖縄を「いざとなったら切って捨てるトカゲのしっぽ」という扱いをし続けてきたのだ。植民地扱いと変わらない。



 そしてそれは今も変わらない。

 返還後、日本全体の米軍基地面積に占める沖縄県の割合は、減るどころか年々増えている。

 かつては日本全体の米軍基地の11%ほどが沖縄にあったのだが(それでも面積を考えると十分多い)、今では75%を超えているそうだ。沖縄と本土の待遇の差は開くばかりだ(ちなみに「基地のおかげで沖縄経済は潤っている」というよくある言説はこの本の中で明確に否定されている。基地があることで経済効果はマイナスになるそうだ)。

 このように見てくれば、現在の日米安保体制下での在日米軍基地のあり方に根本的な矛盾が横たわっていることに気づくでしょう。日本の人口の九九%(有権者数でもほぼ同じ)を占める本土の人びとの政治的意思で選択され、その八割を超える圧倒的多数で支持され、今後も維持されていくだろう安保体制のもとで、人口・面積ともわずか一%程度の小さな沖縄に、全体の七割を超える米軍基地(米軍専用施設)が置かれているという矛盾です。


 これを見ると「多数決が民主主義とかけ離れたシステム」であることがよくわかる。よく多数決=民主主義だと勘違いしている人がいるけど。

 多数派が「嫌なことは少数派に押しつけてしまえ」とすれば、今のシステムだとかんたんにそれができてしまうんだよね。実際「医療費も介護費も年金も負担は下の世代に押しつけよう」という制度になってるし。

「選挙で多くの議席をとった」ってのは民意でもなんでもないのに、それをもって「民意を得た」と勘違いする(または勘違いしたふりをする)バカが政治家にもたくさんいるんだから、嫌になっちゃうよ。



 巻末に高橋哲哉氏と知念ウシ氏の対談が載っているのだが、知念氏の言葉が強く印象に残った。

 琉球諸島を中心に今ある米軍に加えて、自衛隊の軍事施設が増強されるのは、私たちの地域がまるで「戦争特区」にされているように感じます。「戦争はこちらへどうぞ」と日本政府のほうが、誘致しているような感じ。それが怖いんです。
 現実が怖いから、とにかくこの現実を正面から見ないで、生き延びるために少しごまかしながら、それでも気になってチラチラ見ているみたいな、そんなところもあるんです。ところがネットのニュースでヤマトゥの報道を見ると、まの報道を見ると、まったく危機感がないですね。
 それにコロナ禍がやや落ち着いたといって観光客がまたドッと増えました。南の島のパラダイス沖縄、観光客が夢見るリゾート・アイランドみたいな沖縄のイメージがふりまかれて、軍事基地化の恐怖感とのギャップがすごい。違う国の話みたいだし、私たちとは違う沖縄の現実を生きている観光客がいる。分裂している感じ。自分がバラバラにされるような感じです。

 軍事費を増やしたり米軍基地を増やしたりして沖縄を「戦争特区」にすればするほど、沖縄は危険になる。軍備を増強するほど危険になるのはあたりまえの話だ。戦争になったら軍事拠点がまっさきに狙われるのだから。

 軍備に関する負担だけは沖縄に押しつけておいて、さらにはそれを忘れさせようと「南国リゾート」のイメージだけを喧伝する。

 本土の人が思い描く「本土と沖縄」の関係と、沖縄の人のイメージはどんどん乖離してゆくばかりだ。



 ぼくが沖縄に関する政治ニュースを見ていていちばん気持ち悪いと感じるのは、「外部の人が口を出しすぎる」ことだ。

 もちろん沖縄の人といっても考え方は人によって違うから、政治について意見が割れるのは当然だ。でも、こと沖縄政治に関してはやたらと外部の人間が口を出す。

 あいつは間違っている、あの考えはおかしい、こっちが正しい。そういうのを沖縄の人が言うならわかるが、他県の人間が言うのはおかしくないか?

 だって鹿児島県政とか宮崎県政についてはああだこうだ言わないじゃない。なのに沖縄問題にはやたらと口を出す。まるで「沖縄の人間は沖縄のことをわかっていないからおれたちが正しい方向に導いてやる」と言わんばかりに。そんなわけないのに。

 そうやって県民の意見を封じ込めるほうが政府にとっては都合がいいんだろうけど。


 沖縄県人の本土への不満ってのは生半可なものじゃないだろうなとおもう(人によるだろうけど)。この本の中には独立の話も出てくるけど、今は「そんな話も出てきかねない」ぐらいでも、今の状況が続くようだとほんとに大規模な独立運動が起こってもおかしくないとおもえてくる。


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