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読書感想文リスト
漫才コンビ・南海キャンディーズの山里亮太さんによる自叙伝的エッセイ。
文章はちょっと読みにくいが(半端に技巧を凝らしてるせいで文章が上滑りしている。こういう自叙伝みたいなのは飾らない文章でいいんだけどな)、内容はおもしろかった。
己の醜い部分、思い悩んだこと、芸人としてかっこよくない面もつまびらかにしている。後からふりかえって書いているので当時の本心とはちがう部分もあるかもしれないけど。
山里さんはかなり早い段階で「自分は天才じゃない」と悟ったらしい。
ここでの天才とは、「打算や戦略などとは無縁で、自分がやりたいことをやっているだけで周囲から高く評価されるような芸人」だ(はたしてそんな人がほんとにいるのかわからないが)。
この気持ち、痛いほどよくわかる。ぼくも学生の頃はなんとかして「特殊な自分」を演出しようとしていた。あえて人がやらないことをする。「やっぱおまえ変わってるな」と言われるたびに(それって褒められているわけじゃなくて呆れられたりばかにされたりしていたんだろうけど)気を良くし、ますます「変わり者」であろうとする。
そうやって「人とはちがう特別な自分」を築こうと必死になっていた。
ぼくはなんだかんだで三十歳ぐらいまで「自分が天才である可能性」を捨てきれなかったけど、山里さんはもっと早めに自分が天才でないことに気づき、天才でないからこその戦い方に舵を切った。そのおかげで芸人として成功することができた。
成功する芸人はほとんどみんなそれぞれ才能を持っている人だけど、見ていると
「芸人という職業があってよかったな。他の道に進んでいたらどうしようもない人生を送っていたかもしれないな」
とおもわせる人と、
「この人はどの道に進んでもある程度成功していただろうな」
とおもわせる人がいる。
山里さんは後者だ。もちろん芸人としても大成功している人だけど、ひょっとしたら別の道ならさらに大きな成功を手に入れていたかもしれない。なぜなら、表舞台に立つ芸人でありながら、しっかりと裏方の視点を持っているから。
ドキュメンタリー風のテレビ番組のオーディションを受けることになったときの話。
「どう振る舞ったら制作者は使いたくなるか」を分析して、適切な対策を立て、制作者が求めている通りに振る舞う。
なるほど、これは制作者としては使いたくなるだろう。やらせを命じなくても、忖度して勝手に要望に応えてくれるのだから。これならやらせじゃない。でもやらせと同じ結果が得られる。
よく政治家が汚職なんかをしたときに「秘書が勝手にやった」と弁明するけど、あれは言い訳じゃなくてほんとに秘書が勝手にやっていることもあるという。
ほんとに優秀な秘書というのは「お金を出してくれる人がいるんですけどもらっておきましょうか」なんて確認したりしない。確認した上でお金を受け取ったら政治家も共犯になってしまうから。だから有能な秘書は許可をとらずに勝手に動く。政治家のほうもほんとはわかっているけど、これなら「知らなかった。秘書が勝手にやった」という言い訳がぎりぎり成立する。かぎりなくクロに近くても検察は起訴できない。
山里さんは政治家秘書になっていたとしても優秀だっただろうね。
この本を読んでいておもうのは、山里さんはつくづく策略家だということだ。視野が広く、先を読む力があり、リサーチ力も高く、行動力もすごい。会社員や経営者としても成功していた可能性が高い。
「お客さんの反応を見ながら1本の漫才を何百回もマイナーチェンジさせてブラッシュアップしていった」なんて話が出てくるが、まあこれをやっている漫才師は他にもいるだろう。
山里さんがすごいのは、それが舞台の上だけにとどまらないこと。
たとえば、しずちゃんを相方にしようと考えたときのこと。周囲から情報を集めてしずちゃんの好きなものを徹底的に調べあげ、それについて学習し、さも自分も前から好きだったかのように話すことで「ほら俺たちってこんなに価値観が合うんだよね」と思わせようとした、なんて話が出てくる。
すごい。一歩まちがえばストーカーだ。でもここまでやるからこそ成功するのだろう。漫才師としてネタがおもしろいのはあたりまえ、それにプラスして舞台を降りてからも売れるための最短距離を見据えている。
はじめてM-1グランプリに出たときの回想。
M-1グランプリといえば、若手漫才師にとっては最高峰の大会。ほとんどの芸人がそこで優勝することを目標に戦っている中、山里さんはその先を見ている。
たしかにあの大会(2004年)はアンタッチャブルが圧倒的な力で優勝をしたので、南海キャンディーズが他のネタをやっていたとしても優勝できなかっただろう。だったら1本目よりスケールダウンしたネタを披露するより、審査員からは評価されなくてもテレビマンが「バラエティで使いやすそうだ」と感じるネタを披露したほうがいい。理論的にはたしかにその通りなんだけど、現場にいるとなかなかそう思えないよなあ。
甲子園で、チームの勝利よりもスカウトの目に留まることを優先してプレーするようなもの。良くも悪くもプロフェッショナルな思考をしている。
読んでいておもうのは、山里さんは努力の天才だということ。
目標に向かって戦略を立て、試行錯誤しながら努力の方法を修正し、負の感情を自らを奮い立たせるエネルギーに変換し、褒め言葉はそのまま栄養に変え、自らをおだて、自分を戒め、あの手この手で努力を継続する。自分にも厳しいし、他人にも厳しい。
これを天才と呼ばずしてなんと呼ぼうか。
カラスの研究者である著者が、「もしカラスがいなかったらどんな世界になってるか?」について書いた本。カラスが果たしていた役割(ゴミ掃除、果実の種子散布など)はどの鳥が埋めるのか、カラスの代わりに我々の身近にいるであろう鳥は何か、などについて考察している。
正直言って、あまりおもしろくない。同著者の『カラスの教科書』『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』がおもしろかっただけに期待しすぎていたのかもしれないが。
カラス好き、鳥好きからしたら「カラスの代わりにハゲワシの仲間が活躍する」とか「カラスが担っていた役割をオウムやインコの種類が担うかもしれない」って大問題なのかもしれないが、そこまでカラスに思い入れのない者からすると「ふーん」としかおもわないんだよね。
そもそも生活していてカラスを意識することがほとんどないので(自治会のごみ当番になったら意識するかも)、もしある日突然カラスが消滅したとしてもしばらく気づかないんじゃないだろうか。
以前ミノムシが絶滅寸前だと聞いたときに「ふーん、そっか。そういや最近見てなかったな。でも大人になったらどっちみち虫をじっくり見る機会なんてほとんどないしな」としかおもわなかった。
カラスもぼくにとってはその程度の存在だ。そりゃあカラスがいないよりはいたほうがいいけど「カラスが絶滅しそうですがあなたが一万円出してくれたら絶滅を防げます」と言われてもちょっと迷ったあげく「じゃあ申し訳ないけど……絶滅で……」と言ってしまいそうだ。
そもそも「もしも世界からカラスが消えたら」というテーマ選びが失敗している気がする。
著者が『カラスの教科書』でこう書いていた。
カラスは「真っ黒」という強烈な特徴を持っているから印象に残るだけで、色以外は無個性、凡庸な鳥なのだ。なんでも器用にこなせる代わりに「これだけは他の誰にも負けない」という武器は持っていない。
だから「もしも世界からカラスが消えた」としても、他の鳥がその隙間を埋めるだけで、大きな影響はないんだよね。
この本ではネタに困ったのか、小説とか漫画とかに出てくるカラスがどうなるとか、名前に「鴉(からす)」が入っているキャラがどうなるとか、かなりどうでもいい記述にページを割いている。このあたりは文章がおもしろいわけでもなく、完全に蛇足だったなあ……。
カラスは世界中の広範囲にわたって生息しているが、南米にはカラス族がいないそうだ。
「南米にはカラスより前にコンドルがいたからカラスが定着できなかった」という仮説だ。
大企業が海外に進出したものの、その国にはすでに競合する企業があったため(そして元々の企業のほうが競争に優位なため)事業不振により撤退を強いられるようなものだね。カラスとコンドルって見た目はだいぶちがうけど(でもコンドルも黒っぽい)、実は近い業種なのかもね。
鳥とは関係ないけど、おもしろかった話。
twitterはイーロン・マスク氏に買収されてXになりtwitterの名前は消滅したが、意外にも学名に「twitter」「retweet」という名が残っていたとは。
飛行機に乗っている人のなかで、いちばんおしゃれに気を遣っている人は誰でしょう?
(答えはこの記事の最後)
笛の定義とはなんだろう。「息を吹くことで音が鳴るもの」といったところだろうか。単純なものでいえばホイッスルや指笛、指を使って音階を変えられるリコーダー、フルート、オカリナ、ハーモニカ(ハーモニカは指を使わなくても音階を変えられるけど)などももちろん笛だ。ここまで異論はあるまい。
サックスはどうだろう。でかいけど、あれも笛と呼んでいいんだろうか。笛と呼んでいる人を見たことはないが。
調べたところ、トランペットやトロンボーンは唇を震わすことで音を鳴らすので金管楽器、サックスは息を吹きつけることで音を鳴らすので笛の一種、フルートは金属でできていても金管楽器ではない、という解説が見つかった。
……ぜんぜんわかんない。金管楽器を演奏したことがないのでちっともわからない。トランペットも吹くんじゃないの? 唇を震わせてフルートを奏でたらその瞬間に笛から金管楽器に変わるのだろうか?
鍵盤ハーモニカはどうだろう。あれも人が吹くことで音が鳴るが、笛と言っていいのだうか。アコーディオンはどうだろう。風の力で音を奏でているから笛だろうか。
三大・落語好き以外にも知られている有名な落語といったら『寿限無』『饅頭こわい』『時そば(上方落語では時うどん)』だろう。
筋がわかりやすいしインパクトがある。日常会話で「寿限無か!」「饅頭こわいみたいなことね」と言ってもほとんどの人に伝わるだろう。
他の古典芸能では「タイトルは広く知られている」はあっても「興味のない人にもストーリーまで知られている」まではあまりないんじゃないかな。ぼくは『義経千本桜』とか『白鳥の湖』とか『オペラ座の怪人』とか『キャッツ』とかはタイトルは知っていてもストーリーはぜんぜん知らない。
なぞなぞの答え:副操縦士(服装重視)
謎解き問題集。信頼と実績のニコリ社の刊行だけあって、質が高い。
メインの問題に加え、欄外にミニパズル。章末にはそれまでの謎解きの答えを使ったもう一段階上の謎解き。さらにラストは集大成のような問題が用意され、それを解いた後にもQRコードを読むとWeb上で謎解きが……とボリュームたっぷり。
難易度もちょうどよく、あっさり解ける問題は最初の数問だけで、ちょっと考えて解けるもの、ヒント1を見て解けるもの、ヒント2を解けるもの……など(ヒントは各問題3つまである)、「とうとう最後まで解けなかった」という問題がひとつもなかった。
謎解きが好きなのでいろんな問題を解いてきたけど、けっこうひどい問題も多い。「またこのパターンか。ある程度やってきた人なら一瞬で解けるやつじゃん」という問題だったり、逆に「こんなの謎を解くというより作者の頭の中を読めっていう無茶クイズじゃん」という問題だったり。
ニコリは数十年もパズルを作ってきた会社だけあって、難易度の塩梅が絶妙。特別な知識がなくても解けて、知識があってもひらめきがないと解けない。小学生でもけっこう解けるんじゃないかな。
謎解き入門者にもベテランにもおすすめの一冊。
公式サイトにおためし問題もあるよ(おためし問題はこの本の中では易しめ)。