
読書感想文は随時追加中……
読書感想文リスト
海外の本を読むと、章のはじめにどうでもいいフレーズが引用されていることがある。こんなやつ。
本題とまったく関係ないわけじゃないけど、あんまり関係のない引用。あってもなくてもどうでもいい引用。
学術的な本なのに聖書から引用していたり、『マザーグース』や『不思議な国のアリス』のような子ども向けのお話から引用していたり。海外の本の文化なんだろう。シェイクスピアとかもよく引用されているイメージだ。
あれを書くために著者はけっこう労力を割いているんだろうな。いろんな小説とかを引っ張り出してきて、章の内容にちょっとでも関係のありそうな文章を探しているんだろうか。それだけで何時間もかかりそうな気がする。あってもなくてもどっちでもいい引用なのに。息抜き的にやっているんだろうか。
日本で「あってもなくてもいい章のはじめの引用文」をやっている人はあまりいない。宮部みゆきとか伊坂幸太郎がやってた気がするけど、ノンフィクションではまず見たことがない。
日本の研究者もやったらいいのにね。それも海外のかっこいい小説じゃなくて、もっとどうでもいい文章を引用して。
おお、くだらない文章でもなんかそれっぽくなるな。
「まちのしくみ」についての入門書。
都市工学に関する本を読んでみようとおもって手に取ったのだが、あまりにも入門書すぎた。小学生向けぐらいの内容。
高さ数百メートルを超える超高層ビルが日本にほとんどないわけ。日本は地震が多いからだとおもっていたけど、実は技術的には地震に耐えられるような超高層ビルも建てられるんだそうだ。
なるほどねえ。超高層ビルを建てるメリットがあんまりないのか。
超高層ビルを建てても土地面積によって総床面積(すべてのフロアの床面積の合計)は決まっている。土地を広げれば総床面積も広げられるが、都心に広い土地を確保するのはむずかしい。かといって田舎に超高層ビルを建ててもしょうがない。
エレベーターのスペースが多く必要になるから実際に使える床はさらに狭くなる。防災設備も多く必要になるし、高いビルは移動に時間がかかるなど利用者にとっても不便なことが多い。タワマンも決して住みやすいとは言えないらしいし。
高すぎる建物には「目立つ」「見晴らしがいい」ぐらいしかメリットがないわけだ。
だからこそ国力を見せつけるために建てたりするんだろうけど。クジャクが派手な羽を広げるのといっしょだね。あんまりメリットがないからこそ、そんな建物を建てるぐらい余裕があることを示すためことができる。
この本に書かれているのは長く生きていたら自然と耳にするような知識がほとんどだったけど、知らなかったのはアルベルゴ・ディフーゾ(Albergo Diffuso)という観光地の形態。アルベルゴ・ディフーゾとはイタリア語で「ちらばっている宿」の意味だそうだ。
なるほど。これは楽しそうだ。温泉街とかって独特の雰囲気があってけっこう好きなんだよね。
ぼくは海外旅行に行ったときはなるべく現地の人と近い暮らしをしたいんだけど、ホテルに泊まってるとそれはむずかしい。地元スーパーとかに行っても調理手段がないからお菓子ぐらいしか買えなかったり。かといってホームステイとかはいろいろ気苦労も多そうだ。
こんなふうに「町全体が宿」だと、ホテル宿泊客と現地の人の中間ぐらいの生活ができそうだ。
調べたら、岡山県矢掛町や長崎県平戸市など、日本でもアルベルゴ・ディフーゾの取り組みは始まっているらしい。行ってみたいなあ。
ただ、日本に定着させようとおもったら「アルベルゴ・ディフーゾ」ってネーミングはよくないとおもうぞ。言いづらすぎる。
「散宿」みたいに短い言葉じゃないと定着しないぜ。
生物学者が「体温」をキーワードに、生物の行動、寿命、それぞれの時間について考えた本。
同じ著者の『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』もおもしろかったが、これもすごくおもしろい。理論もおもしろいし、理論の話を読んでいてちょっと疲れてきたなとおもったらフィールドワークの話が挿入される。このバランスがちょうどいい。
いやあ、いい本だった。
第一章では北極海に生息するニシオンデンザメというサメの話が語られる。
なんとこのサメ、400年も生きるのだという。とんでもなく長生きだ。長生きの代表とされるカメでも寿命は数十年ぐらい(最長でも約200年)だというから、ニシオンデンザメがいかに長生きかがよくわかる。
なんでニシオンデンザメがこんなに長生きなのかというと、体温が低いからだという。変温動物なので、周囲の水温が0度だと体温も0度近くになる。体温0度! 体温が低いとすべての活動が鈍化する。ニシオンデンザメは7秒に1回ペースで尾びれを振り、時速1km以下でのろのろ動き、2日に1回ペースで獲物を獲るのだという。すべてがスローペースだ。
結果、成長も遅くなり、老化も遅くなり、ニシオンデンザメは長生きできるわけだ。
第二章では、逆に、極寒の地で高い体温を保っているアデリーペンギン。
ペンギンは恒温動物なので南極でも高い体温を維持している。おかげでアデリーペンギンはニシオンデンザメと違い、活発な動きが可能になる。これは餌をとる上で有利になる。
そして第三章はホホジロザメの話。ホホジロザメはニシオンデンザメとアデリーペンギンの中間のような体温を保っているという。魚類なのに水温よりも高い体温を維持しているのだ(ちなみに恐竜もホホジロザメのように、変温動物にしては高めの体温を維持していた可能性が高いという)。
哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、無脊椎動物、恒温動物、変温動物、陸棲成物、水棲生物。いろんな区分があるけど、その区分をとびこえて「体の大きさと体温で活動量が決まる」というものすごくシンプルな法則が成り立つのだそうだ。
体温なんて風邪をひいているかどうかを調べるためのものとしかおもっていなかったけど、こんなにも重要なファクターだったとは!
生物って種によって見た目も行動もぜんぜんちがうからまったく別の仕組みで動いているように見えるけど、すべての種を貫くこんなにシンプルな法則があったなんて、なんかすごくわくわくする話だ。ニュートン方程式や地動説や質量とエネルギーの等価性のような美しさがある。
体温(つまりは代謝量)によって活動量が変わり、活動量が変わるということは時間の感覚も変わる。
もちろん人間も例外ではない。
なるほどー。大人になると1日が経つのが早く感じるのは経験や慣れによるものだとおもっていたけど(その要素もあるんだろうけど)、物理学的な理由もあったんだな。
歳をとるにつれ、アデリーペンギンからニシオンデンザメに近づくわけだ。心臓の鼓動や呼吸のペースがゆっくりになり、代謝が減る。すべてがスローペースになるので、あっという間に時間が流れる。
ファンタジーでエルフという種族は長生きすると言われているが、ってことはエルフはめちゃくちゃのんびりしてるんだろうな。ニシオンデンザメのようにゆっくり動いて数日に一度しか食事をしない。(人間から見ると)ぼんやりしていてなんともつまらない種族だ。
さっきも書いたけど、具体例(実体験)と理論のバランスがすごくいい。
調査の体験記や失敗談が語られるので研究者のエッセイとしてもおもしろいし、ニシオンデンザメ、アデリーペンギン、ホホジロザメなど種ごとの観察結果を書き、具体の積み重ねの結果としての総括的な理論が書かれる。
わかりやすくていい構成だ。もちろん内容もおもしろいんだけど、なにより構成がすばらしい。
いろんな面で勉強になるなあ。
ルール
(橘 玲『DD(どっちもどっち)論 「解決できない問題」には理由がある』より)
(朱川 湊人『花まんま』より)
(逢坂 冬馬『歌われなかった海賊へ』より)
(浅倉 秋成『教室が、ひとりになるまで』より)
(高野 秀行『未来国家ブータン』より)
(川上 和人『鳥肉以上、鳥学未満 Human Chicken Interfaceより)
(吉田 修一『国宝』より)
(ボニー・ガルマス(著) 鈴木 美朋(訳)『化学の授業をはじめます。』より)
(渡辺 佑基『進化の法則は北極のサメが知っていた』より)