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読書感想文リスト
講談社ブルーバックス。
宇宙人とのファーストコンタクト(どうやってコミュニケーションをとるか、未知の言語をどう解読するか)的な話かとおもったら、その先の話、つまり宇宙人とコミュニケーションがとれるようになったときにどんな話をすればいいか、という本だった。うーん、ぼくが生きている間は使うことはなさそうだな(ファーストコンタクトもないだろうけど)。
要するに「地球以外の星や宇宙のことを知ろう」が内容なのだが、それだとあまりにとっつきにくいから「宇宙人と仲良くなるためには地球と他の惑星・衛星の違いを知っておかなくちゃいけないよね」という切り口で小説仕立てにしている本だ。
「日本と諸外国の地理的比較」だと難解だから「海外旅行の前に読む本」というタイトルをつけた、みたいな感じだね。
太陽の個数について。
ぼくらは太陽は1つだけだとおもっているけど、ぼくらのいる太陽系がたまたまそうなっているだけで、宇宙規模で見ると太陽が1つしかないのはむしろ少数派なのだという。2個、3個の恒星を持っている惑星のほうが多いそうだ。
太陽と月がそれぞれ1つしかないことがキリスト教、ユダヤ教、イスラム教など唯一神を信仰する宗教が多い理由ではないか……と著者は書いている(ただぼくはそれはちょっと無理があると思う。地球上にも複数の神を信じる文化はたくさんあるので)。
我々の暦は1つしかない太陽や月の見え方をベースにしているが、太陽が複数ある星ではまた別のカレンダーを使っているはず……という話はなかなかおもしろい。
別の銀河のカレンダーがどうなっているかなんて考えたこともなかったから(たぶんこの先も考えないだろう)。
そして100億年後の地球のカレンダーについて。
はっはっは。100億年後の心配はしなくて大丈夫だろう。どっちにしろ今のようなカレンダーは使っていまい。
動物の身体はほぼ左右対称であることがあたりまえだとおもっているけど、別に左右対称でなくてもいいわけだ。植物なんかは自由気ままに枝を伸ばしてるしな。
そういえば、自動車とか電車とかもみんなボディは左右対称だ。あれこそ非対象でも良さそうなものだけど。タイヤさえ対称形であれば他は非対象でもまっすぐ進むもんな。地球人が「動くものは左右対称でなければいけない」という思い込みにとらわれているせいかもしれない。
時計の針が右回りなのは、地球限定どころか、北半球限定の常識なのだ。南半球の日時計は逆回りだし、もっといえばもしも赤道直下の日時計が元になっていれば時計は円ではなく直線的な形をしていたはずだ。
我々が常識だとおもっていることがいかに地球限定、太陽系限定の常識にすぎないかということを思い知らされる。地球外生命体とふれあわないかぎりはそれで何の問題もないんだけど。
オフィスビルがあって、その三階にはA社だけが入居している、という場合がある。
そこそこ大きなビルであれば、フロアごとに自動販売機が置いてあって、そうなると三階の自動販売機を利用するのはほとんどA社の社員だけ、ということになる(来訪客とかが利用することもあるだろうが無視できるほど少ないものとする)。
自動販売機を管理している会社は、そこでどんな商品がどれだけ売れたか、というデータを持っているだろう。おそらくだけど、売れた時間帯なんかのデータも。
すると、自動販売機のデータからその会社の働き方が見えてくるはずだ。
たとえばこの会社は遅い時間にコーヒーがよく売れてるからブラックっぽい(コーヒーだけに)とか、あの会社は深夜2時にエナジードリンクがよく売れてるから激ヤバだとか、そういった分析ができる。
逆にお茶とか水とかがよく売れてる会社はわりと平和そうであんまりストレスがないのかなとか、お茶よりもコーラがよく売れてるから若い従業員が多いのかなとか。
就活をしている学生からすると、ホームページに掲載された「社員の働き方」なんかよりも自販機データとかの生の情報のほうがよっぽど参考になるだろう。就活情報サイトには自販機データも載せてほしい。
しかしそうすると本当に邪悪な会社では、対策として「エナジードリンクは別フロアで買うこと」なんてお達しが下るかもしれない。
いい本だった。実におもしろいノンフィクション。
この本を読むまで、落合博満という人に対してあまりいい感情を持っていなかった。ぼくがプロ野球を観るようになった頃にはすでに「球界でいちばん高い年俸をもらっているプレイヤー」だった。それも(ぼくから見れば)成績の割に高すぎる年俸をもらっている選手だった。
ぼくがプロ野球を観始めたのは1993年。当時の落合選手は中日ドラゴンズで四番を打ってはいたがホームラン数は20本前後。正直、四番としてはものたりなさすぎる成績だ。なのに年俸三億円という破格の給料をもらっていた。
その後、FAで読売ジャイアンツに移籍したことでぼくの印象はさらに悪くなった(アンチ巨人なので)。39歳、前年のホームラン数は17本。完全にピークを過ぎた選手なのに、年俸は四億円。なんでこんなに高く評価されてるんだ、とおもっていた。
後年、中日の監督になってからもあまり印象は良くなかった。その頃にはぼくはあまりプロ野球を観なくなっていたのだが、「日本シリーズで8回まで完全試合をやっていた山井を交代させた監督」という印象だけが残っている。
そんなこんなで、落合博満という人物に対するぼくの印象は「金に汚い非情な人」という印象だ。たしか契約更改でも毎回交渉が長引いていた。
(ただし「高い年俸をもらう」ことに関しては決して悪いことばかりでもないよな、ともおもう。トッププレイヤーが高い給料をもらうことで他の選手も「落合さんがあの成績であれだけもらっているんだったらおれももっと上げてくれ」と交渉しやすくなるので、選手全体の待遇改善に貢献している部分もある)
監督としての落合氏の実績は圧倒的だ。
落合氏がドラゴンズの監督を務めたのは2004年から2011年までの8年間。その9年間で、リーグ優勝4回、2位3回、3位1回。すべてAクラス(3位以上)。日本シリーズには5回出場して2007年には日本一にも輝いている(球団53年ぶりの日本一だ)。
ちなみに落合氏退任後の2012年以降のドラゴンズの成績は2位→4位→4位→5位→6位と絵に描いたような転落をたどり、退任後の14年間で優勝は0回、Aクラスになったのも2回だけとすっかり弱小チームになってしまった(現時点で2026年もリーグ最下位だ)。いかに落合監督時代が強かったがわかる。
だが落合監督は、親会社やファンから愛されなかった。選手やコーチの中にも監督のやり方に不満を漏らすものが少なくなかった。2011年のシーズンを最後に契約を打ち切られることとなる。
なお、契約打ち切り直前の3シーズンのリーグ成績は2位→1位→1位である。こんなに好成績を残して切られた監督はそうはいない(リーグ5連覇を果たしてそのまま辞めた西武・森監督もいるが)。
うーん……。「勝てば客は来る。たとえグッズか何かをくれたって、毎日負けている球団を観に行くか? 俺なら負ける試合は観に行かない」これは正しくないとおもうなあ。落合さんはずっと選手・監督としてプロ野球の世界に生きてきた人だから勝利至上主義になるのは当然だが(そしてそれは決して悪いことではないのだが)、ファンからすると強いだけが愛される条件ではないんだよな。勝利だけを求めて球場に足を運ぶファンはむしろ少数派で、球場の雰囲気が楽しいとか、選手が身近に感じられるとか、スター選手を生で観られるとか、そういう要素のほうがずっと大事だ。
ただ落合さんにファンサービスをしろというのも無茶な話で、問題は監督に「勝利」と「ファンサービス」と「人件費削減」というときに相反する課題をいっぺんに押しつけようとした球団にある。
あくまで監督には勝利だけを追い求めさせ、ファンサービスの面は別の誰かをCMO(最高マーケティング責任者)とかに据えて任せるべきだとおもうのだが。
単なるプロ野球の話にとどまらず、組織論、リーダー論として読んでもすごくおもしろい。
多くのプロ野球の監督は、やっていることは少年野球の監督、野球部の顧問とそんなに変わらない。グラウンドの外でも選手たちの行動に口を出し、礼儀を教えたり、人生を語ったり、ときには暴力をもって指導したり(最近はそういう人は多くないが)。言ってみれば“指導者”だ。
だが落合監督は指導者にはなろうとしなかった。あくまで監督。成長するのは選手自身。選手の能力を冷静に見極めて、勝つために必要な選手を試合で起用する。求められればアドバイスはするが、基本的には教えない。必要なのは「言われたことに従う選手」ではなく「勝つために必要な選手」。そのために何をどうやって身につければいいかは選手が自分で考える。
理想を言えば、落合監督のやりかたのほうがいいとおもう。言われた通りに動く選手ばかりのチームよりも、全員が勝利のために何が必要かを考えて己を律するチームの方が強いだろう。状況の変化にも対応できるし、なんなら監督が代わっても強いはずだ。
でもそれはあくまで理想の話だ。みんながみんな落合監督のように考えて動けるはずがない。まして(ぼくの勝手なイメージもあるが)野球選手なんて「上の言うことは絶対」の世界である野球部で生きてきた人たち。急に「自分の数字を上げることだけを考えろ。チームのことなんて考えなくていい」と言われたってなかなか切り替えられないだろう(ちなみに落合博満氏は高校野球部は体質が合わずサボってばかり→大学野球部も古いやり方についていけず退部というプロ野球選手としては超異色の経歴を持っている。この経歴が独特の思想を作りあげたのだろう)。
落合監督のやり方は正しい。でもそれがうまくいくのはすべての選手が(技術だけでなく精神面でも)超一流だった場合だけだ。実現しなかったが落合氏がWBC日本代表監督になっていたらすごくいいチームを作っていたかもしれない。
プロの選手になっても「指示してくれないとわからないよ」「細かく指導してほしいよ」というアマチュア精神の持ち主も多いから、落合監督のやり方は全員に支持されたわけではない。ただ、少なからず理解している選手・コーチもいたことが『嫌われた監督』には書かれている。
落合監督退任後も彼らがそのマインドを継承させていけば中日ドラゴンズはずっと強いチームでいられたはず。……だがそうならなかったのは先ほど書いた通り。監督交代後は平均以下のチームになってしまった(監督だけの責任ではないにせよ)。
一流の組織をつくるのはむずかしいが、それを維持するのはもっとむずかしいのかもしれない。
落合博満という人はつくづく天才だったんだな、とおもう。もちろん選手としても超一流だったが、それは単に身体能力が高かったからではないとこの本を読むとわかる。
他の人には気づかない観察眼、既存の常識にとらわれない野球理論など、とにかく指揮官としても天才的だったのだとわかる。
ある選手の守備範囲がわずかに狭くなったことに気づき、別の選手のエラー数が多いのは守備範囲が広いから(他の選手なら追いつきもしない打球に追いつけるからこそのエラー)だと見抜く。しかも選手やコーチですら気付かないのに。
落合監督が嫌われたのは、その“発見”を逐一説明しなかったからだ。説明することで選手の考える機会を奪うからというのもあるだろうし、天才だからこそ己の考えが周囲から理解されないことを知っていたかもしれない。
他の選手・コーチ・監督と見ている景色がちがったんだろうな。
Amazon Primeにて鑑賞。
タイトルと画像でほのぼのアニマルコメディかとおもって観たのだが、これがなかなか、いやかなり見ごたえのある本格ミステリ映画だった。
たったひとりで多くの羊たちと暮らしている牧場主のジョージ。彼は偏屈で人付き合いはうまくないようだが、羊たちのことは深く愛し、毎晩羊たちにミステリ小説を読み聞かせてやるほどだった。
ある日、ジョージが牧場で変死。付近には殺人事件の痕跡。羊たち(人間の言葉を理解できる)は真相解明のため捜査に乗りだす。
一方、ジョージの弁護士によって彼には多額の財産があったことがわかる。遺言書には養子に出されアメリカで暮らす娘が相続すると書いてある。だが遺言書はつい最近書き換えられたばかり。おまけに娘は事件直前にたまたまアメリカからやってきたところ。はたしてかぎりなく黒に近い娘なのか、それとも別の人物なのか。遺言書の中で示唆されている「二人の殺し屋、善き羊飼い、悪い羊飼い、マヌケ、春生まれの羊、冬生まれの羊」とはそれぞれいったい誰のことなのか……。
(以下、ちょっとネタバレを含みます)
羊たちを主人公にしたコメディ映画でありながら、ミステリとしてはきわめて王道なのがすばらしい。事件の内容は観客に十分に語られ、容疑者、事件の動機もしっかりと、しかしさりげなく提示される。ヒントの分量も申し分なく、ちゃんと推理すれば真犯人にたどりつけるようになっている。そして真犯人は絶妙にちょうどいい人物。登場シーンは多く、それでいて意外な人物。
ミステリとしてきわめてフェアだ(真犯人にたどりつく“色”はちょっと無理があるが……)。
特に感心したのが序盤の「文化フェスティバル」のシーン。コメディパートなのだが、この映画においてすごく効果的な役割を果たしている。「文化フェスティバル」のせいでまんまと騙されるんだよね。
ミステリとして優れているが、ヒューマン(羊だけど)ドラマとしてもよくできている。最初は何も考えていないように見えた羊たちの心の動きにだんだん共感できるようになってくる。そして死んだ後で見えてくるジョージの人間性。
映像はおもしろく、ミステリとしてよくできていて、登場人物たちの心の動きや成長もしっかり描いている(それでいてくどくない)。
いい映画だった。とにかく羊に対する愛がびんびんと伝わってくるぜ。