昨年から映画館でパブリックビューがはじまったM-1グランプリ準決勝。
観にいきたかったが、平日夜は子持ちの人間にはちょっと生きづらくて断念。
だが今年はオンライン配信、しかも見逃し配信も可能ということで3,000円のチケットを購入して観てみた。
感想自体は準決勝の翌日に書いていたが、ネタバレ禁止とのことだったので決勝終了後まで公開を待っていました。もういいよね?
ラランド
料理番組をやってみたい。
キューピー3分クッキングのテーマに乗せて料理番組を進行。
ボケのクオリティは安定しているのだが、あまり練られてない感じがした。このネタを改良し続けたらもっともっとおもしろくなるだろうなという気がする。
でも後半のってきておもしろかった。サーヤの狂気が随所に感じられてよかった。
タイムキーパー
幼稚園の先生をやりたい。
大人びた口調の子ども、子どもが真理を突く、というのはベタ中のベタなので前半は退屈だった。既視感があるからよほど新しい視点がないときついよなあ。
でも後半は「幼稚園の先生をやりたい」ではなく「芸人で売れなかったら幼稚園の先生をやりたい」という導入をフリに使っていたり、アンパンマンのマーチを回収したりと、構成が見事だった。
まったく知らないコンビだったけど、構成もいいし技術もあるし今後が楽しみなコンビ。
金属バット
結婚をためらっている。
いやあ、おもしろいなあ。
よく聞くとそこまでたいしたことを言ってないんだけどね。
でも口調とか所作で笑わされる。たいしたこと言ってなくてもおもしろいって、これぞ漫才師という感じ。
罪人面、つくね、ヘキサゴンのOBなど力のあるワードをさりげなく挟むのもいい。
個人的にはすごくおもしろかったけど、決勝進出できなかったのもわかる気がする。差別的だからねえ。ゴールデン番組でやらすのは怖いよね。
ウエストランド
マッチングアプリで彼女を探す。
恨みつらみが心の底から出ている。「誰も傷つけない笑い」に対するアンチテーゼが痛快だった。
どこまでがネタかわからない魂の叫びという感じで、なんかちょっと感動してしまった。
しかしよくこれが決勝に行けたなあ。おもしろかったけど、決勝で評価される気がしないんだよなあ。
ニッポンの社長
ラーメン屋の大将をやりたい。
言葉と動きがあってない、というボケをひたすらくりかえす。
とはいえ、一点突破でいくにはボケが弱かったのかもしれない。後半はもっとむちゃくちゃになってもよかったのかなあ。
ランジャタイ
ポケットから友だちが出てくる。
トム・ブラウンを彷彿とさせるむちゃくちゃさ。
ずっと何やってるのかわからない。
はまればおもしろいんだけど個人的にはまったくはまらなかった。
祇園
こういうの、バカリズムライブで数年前にやってたなあ。
ちょっと前半急ぎすぎた気がする。「クレームがつきにくいようにする」という説明が雑だったかな。ここをもっと丁寧に説明していれば惹きつけられたのかも。
しかし同系列・同クオリティのボケが並ぶので中盤からは客の想像を下回っていた。
マヂカルラブリー
吊り革につかまりたくない。
マヂカルラブリーらしいばかばかしさがあふれていてよかった。だいぶ早い段階で吊り革がどうでもよくなるが、もうそんなことは気にならない。
以前決勝戦に進出したときは「同じボケをひたすらくりかえす」だったのだが、今回はリセットすることなく「どんどんエスカレートしていく」構成なので、中盤以降どんどんおもしろくなってきた。
ただ気になったのは、導入部をのぞいてコンビ間の掛け合いがまったくないこと。
野田がボケ、村上がツッコみ、野田が一切耳を貸さずにボケ続ける。
このスタイルは審査員に評価されにくいんじゃないかな……。
からし蓮根
居酒屋の店員をする。
導入の「いじられろ」のツッコミはおもしろかった。
他にもおもしろいフレーズが随所にあったんだけどね。でも何十組が観たときに「からし蓮根が特におもしろかった!」とはならないんだよねえ。
カベポスター
古今東西ゲーム。
すっごくよく考えられてるなあ。
ボケ・ツッコミとも必要最小限の言葉で堅実に笑いをとってくる。
よくできているけど、逆に言うと、台本が見えてしまうことでもある。
独特のセンスが光るネタをやっていたのに、後半の岐阜いじりはちょっと安易だったなあ。
ゆにばーす
ドッペルゲンガーにきれいな彼女がいた。
自分たちでも「人の見た目をいじって笑いを取る時代は終わったよ」と言ってたけど、まさしくその通りで、「おまえは見た目がブス」「おまえは性格が悪い」「俺は彼女ができない」で素直に笑える時代ではない。
ってことで、終始古くさい印象のネタだった。
キュウ
ルパン三世と質量保存の法則。
独特のセンスが光るんだけど、これは漫才じゃなくてコントだよね。完全に芝居だもん。
この人たちはコントやったほうがいいんじゃないかな。テレビじゃなくて舞台で。小林賢太郎も引退したことだし。
アキナ
友だちの女の子が単独ライブに来る。
全体的に身内向け感が漂ってたなあ。アキナファンにはたまらないだろうな、という感じのネタ。二人のいろんな顔が見られるネタだもんね。アイドル漫才師みたいなネタだ。
秋山が文句を言いながらも山名にずっと従う理由がないんだよなあ。説得力に欠ける。
おいでやすこが
カラオケで盛り上がらない。
いやあ、すごかった。本人たち(というかおいでやす小田)の熱意もすごかったし、R-1グランプリから強制的に締めだされた直後だったので観客も全員応援している空気だった。
そこまで強いボケじゃないのに、ツッコミのパワーで強引に笑いをかっさらう。
すごいなあ。漫才師でもここまで強いツッコミはそうそういないよね。
もう地団駄踏みすぎてタップダンスみたいだったもんな。もう何言っても笑える状況だった。
オズワルド
ハタナカを改名したい。
いなり寿司、試合前のゴールキーパー、君もそっち側。
ワードのセンス、強弱のつけかた、絶妙な不条理さ、そしてクライマックスでの「口開いてんな」ツッコミ。盤石。
こういうローテンション系の漫才ってM-1で勝てないイメージがあるんだけど、もしかしたら今年オズワルドがそのジンクスをくずすかもなあ。
ロングコートダディ
組み立て式の木の棚を作る。
以前にも観たことがあったが、めちゃくちゃ好きなネタ。
「マウントとってこようとする男っているよね」みたいな導入にしたほうがわかりやすいんだけど、そこを説明しないところがおしゃれ。
センスの塊って感じだ。
ただまあ万人受けするネタではないよね。あとここも完全にコント。
このネタをするには兎の演技力がちょっと追い付いてないんだよね。
インディアンス
人助けをした話。
脱線に次ぐ脱線。中川家の漫才のようだが、自然に脱線するのではなく、脱線することが目的になってるように感じる。脱線しすぎて本筋がわからなくなってしまう。
テンポが速すぎるのかもなあ。これだけテンポが速いと「がんばって練習したね」という感じがしてしまう。そしてインディアンスは練習の跡が見えたらだめな芸風なんだよね。
東京ホテイソン
謎解きゲーム。
いやあ、数年前にM-1準決勝に進出したときは若くしてスタイルを確立させているものだと感心したけど、その独特の芸風を貫きつつもちゃんとネタを進化させてるのがすごい。まだ完成していなかったのか。
構成の巧みさと不条理さのバランスが絶妙でいいネタ。
しかし答え合わせが必要で、ほんとに謎解きゲームみたいなネタだね。
コウテイ
学校の先生をやりたい。
バッファロー吾郎を思いだす。小学校の休み時間みたいなネタ。
熱意はすごいけど、ぼくにはまったくおもしろさがわからないんだよね。これはコウテイの問題じゃなくて、ぼくがもう若くないってことなんだろうね。おっさんにはついていけんわ。
学天即
宇宙旅行。
うまい、うまいけど……。
劇場で安心して笑える漫才って感じで、コンテストで数千組のトップに立つ漫才ではないよなあ。
ボケる→ツッコむ で終わっちゃうのがなあ。銀シャリはその後さらに応酬が発生するので、それと見比べると学天即は見劣りしてしまう。
ダイタク
出国管理局。
「何年双子やってんだよ」などのフレーズはおもしろいけど、このコンビはそろそろ双子ネタを脱却してもいいんじゃないかとおもう。
それだけの腕があるコンビなんだから。
見取り図
マネージャー。
数年前の見取り図は、ツッコミはうまいけどボケが弱いコンビだった。
でもここ数年でボケが強くなり、コンビバランスがよくなった。
特にこのネタはボケが異常者なので、ツッコミの強さがちょうどいい。「これだけ無茶なことされたらこれぐらいきつく注意するのも仕方ない」という説得力がある。
ぺこぱ
不動産屋。
いやあ、絵に描いたように迷走してるな。個人的には準決勝でいちばんおもしろくなかった。
自分たちのスタイルを逆手に取ったネタなんだが、正直ぺこぱのスタイルはまだそこまで浸透してないよ。
たった一年であのスタイルに見切りをつけるのはまだ早い。本人たち的には飽きられる前に次の一手を探してるんだろうけど。でも東京ホテイソンがスタイルを貫きつつ新境地を開拓したのを見た後だから余計に低い評価になる。
滝音
不動産屋。
ワードはおもしろい。が、いかんせんネタの内容が薄い。何の話だったかほとんど覚えてない。
「ナックル投げあうキャッチボール」とか「ミニチュアなヘルニア官房長官」とかの言葉のおもしろさは抜群なので、あとはそれに見劣りしないストーリー展開があればなあ。
ニューヨーク
コンプライアンス違反のエピソードトーク。
時代にマッチした話題。ニューヨークって常に「時代に乗っている」感がある。
ニューヨークの「意地の悪いツッコミ」は一般受けしなさそうだけど、このネタはボケ側が全面的に悪なのでキツめの言葉をぽんぽんぶつけても嫌な感じがしない。
よくできている。
錦鯉
パチンコ台になりたい。
いやあ、ばかだなあ(褒め言葉)。来年五十歳のおじさんがこれをやってるというのがめちゃくちゃおもしろい。
出番順もよかったね。若手や中堅がさんざん練りに練ったネタをやって、最後に出てきた49歳がいちばんバカやってんだもん。そりゃ笑うって。
ツッコミもうまいよね。熟練の味という感じ。いい意味でフレッシュさがないのがいい。
本選でも後半の出番順になってほしい。
決勝進出を決めたのは、
- ウエストランド
- マヂカルラブリー
- アキナ
- おいでやすこが
- 東京ホテイソン
- 見取り図
- ニューヨーク
- 錦鯉
準決勝を観るかぎり、だいたい納得のメンバー。
ぼくが選ぶなら、アキナをはずして金属バットを入れるかな。
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