2019年12月27日金曜日

2019年に読んだ本 マイ・ベスト12

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年に読んだ本は100冊ぐらい。その中のベスト12。

なるべくいろんなジャンルから選出。でも今年はノンフィクション多め。
順位はつけずに、読んだ順に紹介。

ハリエット・アン ジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』


感想はこちら

アメリカの奴隷制度のことを歴史の教科書を読んで知っていた……つもりになっていた。 でもぜんぜん知らなかったのだと教えてくれた本。

本当の奴隷の生活を知った今となっては軽々しく「まるで奴隷のようだ」なんて使う気になれない。
ごくふつうの社会人であり家庭人であった人が奴隷に対してはとんでもなく残忍な仕打ちをする。人間は(おそらくぼく自身も)置かれた環境によってこんなにも残酷になれるのかと背筋が凍った。


文部省『民主主義』

感想はこちら

昭和二十三年に文部省(現在の文科省)が中高生に向けて刊行した教科書の復刻版。

現在、政府与党はルールをねじまげ、隠蔽を重ね、民主主義をぶっ壊そうとしている。こうなる未来を予見していたかのような官僚の言葉。

当時の官僚は立派だったんだなあ。今の腐敗しきっている政府に手を貸している官僚は全員これを読んで反省しろ。反省しないやつは社会のゴミクズだからすぐ現世から卒業しろ。いやほんとに。


小畑 千尋『オンチは誰がつくるのか』

感想はこちら

長年、オンチであることをコンプレックスに感じていたぼくは、この本を読んで救われた。

音楽の先生ってみんな子どもの頃から苦労せずに音程をとれた人だから、オンチの人の気持ちがわからないんだよね。そしてちゃんとした指導もしない。 「音がずれてるよ」と言うだけ。どうやったら正しい音がとれるのか、具体的な方法は何一つ示さない。
ぼくは今でもオンチだけど、オンチとはどういう状態なのか、どういうトレーニングをすれば克服できるのかがわかっただけでもずいぶん気持ちが楽になった。


西村 賢太『二度はゆけぬ町の地図』

感想はこちら

ほぼ著者の実体験であろう私小説。
見事なまでのクズっぷりでかえってすがすがしいぐらい。自分が家賃をためこんだくせに、家賃を催促する大家を逆恨みして殺意を抱いたり。ラスコリーニコフかよ。

しかしこの本を読んでいると「己の中の北町寛多」に否が応でも向き合わされる。怠惰で、嫉妬深くて、小ずるくて、身勝手きわまりない自分に。おもしろいけどつらい。


トレヴァー・ノートン『世にも奇妙な人体実験の歴史』

感想はこちら

真実を明らかにするために、自らの健康や、ときには命をも賭けた人たちの記録。
毒物を口にしたり、病原菌を体内に入れたり、爆破実験に参加したり、食べ物を持たずに漂流したり、安全性がまったく保障されないまま深海に潜ったり気球で空を飛んだり……。
クレイジーの一言に尽きる。

が、そんなクレイジーたちのおかげで今の我々の安全で快適な生活がある。いろんな意味で「ようやるわ」と言いたくなった。


トーマス・トウェイツ『ゼロからトースターを作ってみた結果』

感想はこちら

トースターをゼロから作るために、鉱山に行って鉄鉱石を拾い、じゃがいものでんぷんからプラスチックを作ろうとし(これは失敗したけど)、銅の含有量の多い水を電気分解して銅をとりだし、辺境の山でマイカ(雲母)を採取する。

もう説明不要。ただただおもしろい。


福島 香織『ウイグル人に何が起きているのか』

感想はこちら

ウイグル人たちがどんな残酷な目に遭っているか、のレポート。

もうすぐ世界一の経済大国になろうかという国(しかも国連の常任理事国)の中でこんなことが起こっているとはにわかに信じがたい。21世紀の世の中で。

そしていちばんの問題は、(日本も含めて)ほとんどの国がウイグル問題を知りながら見て見ぬふりを決めこんでいるということ。なぜなら中国が軍事的にも経済的にも大国だから。
対岸の火事じゃないよ、ほんとに。



フィリップ・E・テトロック&ダン・ガードナー『超予測力』

感想はこちら

「Yes/No」で答えられる質問を出したところ、大半の人の正答率はチンパンジーといっしょ、つまり50%前後だった。
ところが明らかに高い正解率を出す人たちがいる。

自分の正しさを常に疑う、思想信条に従って予測しない、過去の予測の検証をくりかえす、こういう人たちの未来予測は的中しやすい。
……つまりほとんどの政治家やコメンテーターたちとは正反対の人たちだよね。


島 泰三『はだかの起原』

感想はこちら

「なぜ人類は体毛に覆われていないのか」というお話。
保温、保湿、防水、外からの攻撃を守るなど様々なメリットのある毛。なのに人類にはない。
謎を解き明かすためにいろんな仮説をつぶしていく過程はすごく刺激的だった。

……そしてそれ以上に刺激的だったのが、著者の悪口。他の研究者のことをけちょんけちょんに書いている。主張はもちろん人間性まで全否定。

主張のおもしろさと悪口のおもしろさで合わせ技一本の入賞。


今村 夏子『こちらあみ子』

感想はこちら

とにかくすごい小説。圧倒された。

「好きじゃ」
「殺す」
の応酬のすごみたるや。
別世界の住人とおもっていた人の人生を追体験させてくれた。


デーヴ=グロスマン『戦争における「人殺し」の心理学』

感想はこちら

いいニュースと悪いニュースがある。
戦場における人間の行動を調査したところ、ほとんどの人間は敵を殺そうとしないことがわかった。人間は基本的に人を殺したくないのだ。それが戦うべき敵であっても。これがいいニュース。

悪いニュースは「人を殺したくない」という気持ちを取り払うために、軍があの手この手で兵士を教育(というかほぼ洗脳)していること。その取り組みは効果を上げて、近代の戦争では大半の兵士が躊躇なく引き金をひけるようになっているらしい。


ビル=ブライソン『人類が知っていることすべての短い歴史』

感想はこちら

こんな重厚な本が文庫で1,700円ぐらいで買えるなんて! 全科学をぎゅっとまとめた本だからね。森羅万象が1,700円。安すぎる。

文章は軽妙かつユーモラスでおもしろい。中学生ぐらいで読んでいたらもっと勉強を好きになっていたんじゃないかなあ。


来年もおもしろい本に出会えますように……。


【関連記事】

2018年に読んだ本 マイ・ベスト12

2017年に読んだ本 マイ・ベスト12



 その他の読書感想文はこちら


このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿