2020年10月8日木曜日

【読書感想文】もはやエロが目的ではない / JOJO『世界の女が僕を待っている』

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世界の女が僕を待っている

WORLD SEX TRIP

JOJO

内容(e-honより)
マネしたくてもマネできない!エロをテーマに世界100か国超を旅する人気ブロガー・YouTuberが、日本人が足を踏み入れないローカル風俗に突撃!


著者は世界中をまわり、風俗店や出会い系で各国の女(とオカマ)とエロいことをしているブロガーだそうだ。
そんな著者による、世界各国の風俗エピソードがてんこもりの〝クレイジージャーニー〟な旅日記。


ぼくは海外風俗はおろか国内風俗ですら「なんか怖い目に遭いそう」と尻込みしてしまう小心者なので、『世界の女が僕を待っている』に書かれているのはまったく未知の世界の出来事でおもしろかった。
アジア、ヨーロッパ、アフリカ、中東。100か国以上の風俗店をまわっている。
読んだだけでお腹いっぱいという感じで、真似しようとはおもわなかったが。

しかしこの人すごいなあ。尊敬はできないが感嘆する。
世界中あちこちまわって、危険な地域にもエロのためならとずんずん入っていって、エロいことをしている。
風俗にも行くし、非合法な風俗にも手を出すし、外国人の素人もナンパするし。
非合法風俗もそうだけど、イスラム圏で女性を口説いたりしているのも読んでいてハラハラする。へたしたら逮捕されたり命をとられたりするんじゃないの。
ただただ感心するばかりだ。

しかしこの人、行動力はあるし、外国語は堪能だし、マメだし、めちゃくちゃモテるだろうな。エロいし。




沿ドニエストル共和国(国際的には承認されていない国家なので形式的には東欧・モルドバの一部)を訪れたときの話。

バーの店主に、娼婦のところへと連れていってもらったそうだ。

 彼の車に乗り込み、心当たりがあるというスポットへ向かった。出発して2、3分で減速した。旧ソ連スタイルの団地の前の公園あたりでキョロキョロしている。
「いないか」
 ここに女の子が立っていることがあるらしい。また少し車を走らせ停車した。車から降りると、店主は薬局の方に歩いていった。
 そこはロシアホテルという名前のホテルの前。薬局の入り口に女性が数人立っていた。どう見ても一般女性が雑談しているようにしか見えない。店主は彼女たちに話しかけている。まさか、これが立ちんぼ? 知らないと絶対に気づくわけがない。彼はしっかり値段交渉までしてくれて、50ドルで話がついた。
 女の子は3人いたが、彼女たちを取り仕切ってるらしいおばさんがひとりの名前を呼んだ。選ぶ権利はないらしい。30代後半、いや40くらいだろうか。少し年増だったが、この際、年齢なんてどうでもいい。未承認国家で風俗を体験することに意義がある。

この本の端々から感じたことだけど、もはやエロいことするのが目的じゃないんだろうね。

エロが目的であれば、気に入ったところに腰を据えて何度も通うほうがいい。
この人はもう「できるだけいろんな地域の女とヤる」という使命感で動いているように見える。
でなきゃ、わざわざ危険な地域、不衛生な店、レベルの低い女性のいる風俗店に行く必要がない。

いかに「気持ちいい思いをしたか」ではなく「いかに危険な場所、ヤバい場所、めずらしい場所でセックスしたか」が目的になっている。
変態と言わざるをえない。




ぼくが十数年前に中国に留学したときに、現地に長く住んでいる日本人のおじさんから「こっちじゃ床屋で売春やってるんだよ」と教えてもらった。

言われてみればなるほど、ごくふつうの床屋もあるが、薄着の女性が店内のソファで数人寝そべっている床屋もある。後者は風俗店なのだ。

そんな床屋が大学の近くとかレストランの隣とかにあるので、それだけでもうドキドキしてしまった。
日本の風俗店は、いかにもという場所に固まって存在しているので、日常の中にごく自然に溶けこんでいる中国の風俗店はたまらなく刺激的だった。

性欲をもてあましている若い男だったのでもちろん興味はあったが、「中国マフィアが出てきたら」「変な病気に感染したら」「中国警察に捕まって帰国できなくなるんじゃ」などと考えてしまい、店の前からちらりと中をのぞくことぐらいしかできなかった。

今おもうと、ものはためしで行ってみてもよかったなーとおもう。
商店街の中にあるような風俗店なら、よほどのことをしないかぎりは警察に捕まったり身ぐるみはがされたりする危険性は低かっただろうし。

しかしそれで味を占めてすっかり海外風俗にハマってしまい……となっていたかもしれないのでやっぱり行かなくてよかったかな。




ウクライナの「自宅に出張してくれて下着姿で料理をしてくれる風俗」の体験談。

 約束の時間を5分ほど過ぎたところで、「女の子が到着した」と連絡が入った。民泊予約サイトのエアービーエヌビー(Airbnb)で借りていたアパートの下まで降りると、女の子の姿が見えた。
 身長175㎝、体重47㎏。小さな顔、高身長、細身。そのままモデルで通りそうなスタイルの子がスマホ片手に立っていた。特別美人というわけでもなかったが、これだけのスタイルで顔まで綺麗な若い子がエロマッサージで仕事しないだろう。そもそも裸で料理してくれるだけで十分面白い。見た目は問わないと覚悟していた。性格も良さそうで、ずっとニコニコしていて英語力もまずまず。
「綺麗だね」と褒めると「もちろんよ。私ウクライナ人だし」と。インスタグラムやマッチングアプリが普及した今、ウクライナ人女性は自分たちが世界中の男から注目される特別な存在だと理解している。デートした女の子たちには、こういった高飛車なスタンスの子が多かった。実際綺麗なので文句はないのだが。
「私、キッチンになんか立たないのよ。今日が初めてだわ」
 なんと、料理未経験。料理なんてしたくないのにマネージャーに頼まれて断れなかったと。服を脱いだ彼女は、下着姿で料理をはじめた。真っ白な下着がよく似合う。
 なんていい眺めなんだ……。そしてややシュール。ワインを飲みながら下着で料理するスタイル抜群の金髪女子を眺める。最高だ。まじまじと見てるとだんだん面白くなってきてニヤついてしまう。
 15分ほどで完成。皿に盛られたのはボソボソのスクランブルエッグ。YouTubeで勉強してきたと。リクエストしたのはオムレツだが、まぁ問題ない。
「ちょー美味しい! 本当にはじめてなの? 天才!?」
 まったく美味しくなかったが残さず食べきった。

シチュエーションにこだわる風俗って日本に多そうだけど、外国にもあるんだね。


こういう話はたしかに刺激的でおもしろいんだけど、読んでいるとだんだん辟易してくる。
この本はほんとにエロのことしか書いてなくて、せっかく外国に行っているのに近くの観光スポットのこととかはほとんど書いてない。
エロい話はたしかに興味深いんだけど、ずーっとエロいともうイヤになってくるんだよね。

昔のエロ本って、エロい写真や記事だけじゃなくて、ぜんぜんエロくないコラムがあったり妙に社会派の記事があったりしたけど、あれはあれで必要だったのかもしれないなあ。


そもそも、他の男がかわいい女の子とうまいことやった話なんか読んでも楽しくないんだよね。

こっちは失敗談が読みたいわけ。
とんでもないオバサンが出てきたとか、怖いおじさんが出てきて法外な料金を請求されたとか、身ぐるみはがされて這う這うの体で逃げてきたとか。

失敗談もないではないが、基本的には知らない男がうまいことやった話だからなー。




読んでいておもうのは、どんな国でも売春ってあるんだなーってこと。

もちろん非合法の国も多いが、形を変えてこっそりやっていたりする(中国の床屋みたいに)。
厳しい国でも「女の子は隣国の風俗に働きに出る」「男たちは隣国の国境の街まで行って女を買う」みたいな形でそれぞれの欲求を満たしている。

まったく売春が存在しない地域なんか地球上で南極ぐらいかもしれない(ちなみにこの本には砂漠で女を買う話も出てくるからもしかしたら南極にもあるかもしれない)。

世界最古の職業は娼婦だ、なんて話もあるぐらいだから古今東西どんな社会にも売春は存在したのだろう。
恋愛にだって打算や金品の受け渡しがからんだりするから、セックスと金を完全に切りはなすことはきっと不可能なんだろう。

だったら、もういっそ合法化しちゃえばいいのに。
『世界の女が僕を待っている』では、世界最強の風俗はFKKというドイツの風俗だと書いている。

ドイツは売春が合法なので、きちんと売春のルールが決められていて、FKKではルールに則って売春がされている。
利用者にとっては危険な目に遭ったりぼったくられたりする心配がないし、働く女性にとっても安全だ。他の国から働きに来ている女性も多いらしい。
いい制度だとおもう。

もういっそ競馬みたいに国営化したらいいのに。公娼制度を復活させて。

営業場所や時間を定めて、年齢制限もして、税金もとって、衛生面や健康面のチェックもきちんとして、労働者は社会保険にも加入させて……とすれば、国も儲かるし、女性も公務員として安心して働けるし(もちろん男性が働いてもいい)、利用者も安心だし、三方良しだとおもうのだが。


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