2022年4月27日水曜日

【読書感想文】『参上!ズッコケ忍者軍団』『ズッコケ妖怪大図鑑』『ズッコケ三人組の推理教室』

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  中年にとってはなつかしいズッコケ三人組シリーズを今さら読み返した感想を書くシリーズ第七弾。といっても今回からは「読み返し」ではなく「はじめて読む」作品も。

 今回は28・23・19作目の感想。

(1~3作目の感想はこちら、4・5・7作目の感想はこちら、8~10作目の感想はこちら、6・11・14作目の感想はこちら、12・15・16作目の感想はこちら、17・13・18の感想はこちら


『参上!ズッコケ忍者軍団』(1993年)

 カブトムシ捕りの穴場スポットに、隣の小学校の連中が基地を作り、エアガンやガスガンで戦争ごっこをしている。下級生が脅されたことに憤慨したハチベエたちは仲間を集めて喧嘩をしかけにいくが返り討ちに遭って恥をかかされてしまう。そこで復讐を果たすため、忍者軍団を結成して戦術を練る……というストーリー。

 うーん。これは、子どもの頃に読んでいたらもっと純粋に楽しめたんだろうなあ。ズッコケ三人組総選挙でも二位に輝いている人気作品だし。でもおっさんの目で読むと「そんなことしちゃだめだろ」「やめといたほうがいいって」と言いたくなることばかり。ぼくも老いたなあ。

 エアガンで撃たれたから仕返し、というのはわかる。「ロケット花火で攻撃」はまあいいだろう。エアガンで撃たれたならそれぐらいしてもいいとおもう。「トウガラシ爆弾で目つぶし」も、ぎりぎり許容範囲内だ。
 でも「パチンコで投石」「木刀で戦う」とかを読むと、「いやいやこれはしゃれにならんでしょ」とおもってしまう。一生残る傷を負わせたり、下手したら命にかかわるけがを負わせることになりかねない。そんなことになったらお互い悲惨だ。まして「敵の食糧に下剤を混入する」までいくと、子どもの喧嘩だからでは済まされない。警察沙汰だ。

 と、ついつい眉をひそめてしまう。子どものときに読んでいたらただひたすら痛快な物語だったんだろうけど、親の立場になると純粋に楽しめない。


 己の力を過信して敵をみくびったせいで、ろくに調査もシミュレーションもせずに楽観的なデータだけを見て敗退するってのは旧日本軍っぽくておもしろかったけど、そこを除けばストーリー全体が予定調和っぽい。 

 たとえば、くノ一の存在。中盤でクラスの美少女三人組が忍者の仲間になるのだが、このくだりはあまりに不自然。六年生の女子(それもクラスでイケてる側の子らで、私立中学を受験する子)が、男子たちが忍者ごっこで戦争をすると聞いて「わたしたちも仲間に入れて」なんて言うかね?
 この子たち、「塾の帰りに夜の書店に行ってちょっとエッチな女性週刊誌を立ち読みする」なんて描写もあるのに、そんな子が忍者ごっこをするとはおもえない。
 願望がすぎる。六年生の女子なんて、男子とは五歳ぐらい精神年齢に開きがあるけどなあ。

 初期の作品『ぼくらはズッコケ探偵団』『ズッコケ㊙大作戦』『とびだせズッコケ事件記者』あたりでは、女子は明確に男子の(特にハチベエの)敵として書かれていたのだが、時代の変化もあるんだろうけど、ずいぶん書き方が変わったなあ。女の子の読者に迎合したのかなあ。あのくだりはリアリティがなかった。


 また、敵の描写も薄っぺらい。喧嘩に負けて恥をかかされたので復讐を誓うという構図は『花のズッコケ児童会長』と同じだが、『児童会長』のほうは相手には相手の正義があったのに対し『忍者軍団』のほうは敵は単純な悪者として存在する。彼らには彼らの言い分だったり心境の変化があったとおもうのだが、ほとんど表現されていない(最後にちらっと匂わせる程度)。
 まあ、人間の心情に思いをめぐらせることなくただ倒すべき存在として認識するのが戦争なのだから、ある意味で正しい書き方なのかもしれないが。とはいえ隣町の小学校と戦争しました、勝ちました、やったね、という書き方は文学的じゃないなあ。

 この隣町の小学校、夏休みにみんなで秘密基地に集まってカレーを作ってたべたり、中学生に勉強を教えてもらったり、めちゃくちゃ楽しそうなんだよなあ。隣の学校の子をエアガンで脅して追い払ったのは良くないけど、よく考えたらそれ以外はそこまで悪いことをしていない。緒戦は、ハチベエたちが仕掛けてきたから防衛しただけだし。まあハカセとモーちゃんの服を脱がせたのはやりすぎだけど、基地をぶっこわされるのはかわいそうだ。

 ズッコケシリーズって「クラスのイケてない子らが知恵と勇気で活躍する」話が多いけど、『忍者軍団』に関しては逆で「両親共働きで夏休みに退屈している子らが男だけで集まって秘密基地を作ったり飯盒炊爨したりで楽しくやっていたら、女の子と仲良くしている隣の学校のグループがやってきてめちゃくちゃにされてしまった話」なんだよな。

 どうしても、三人組たちよりも隣町の小学校側に肩入れしてしまう。むしろこっちを主人公にしたSIDE-Bストーリーが読みたいぜ。



『ズッコケ妖怪大図鑑』(1991年)

 雪の上に残った奇妙な獣の足跡、奇妙な物音、女の幻……。ハカセとモーちゃんの住む市営アパート近辺で次々と怪奇現象が起こる。真相を究明するためアパートの旧館を訪れた三人組とモーちゃんの姉さんは、巨大な火の玉に遭遇する。
 アパートが建っていた土地の歴史を調べていたハカセは、はるか昔にこの地にいた「権九郎」なる存在にたどりつく……。

『心霊学入門』『恐怖体験』などに続く怪異譚。
 おばけだの幽霊だのはまったく怖くないので怪談が好きではないのだが、この『妖怪大図鑑』は薄気味悪くてけっこう好きだ。この物語は「妖怪が出ました、怖い目に遭いました、退治しました」でおしまいではなく、〝妖怪を呼び起こした人間たち〟が描かれるからだ。しかも彼らは根っからの悪人というわけではなく、妬みやプライドを持ったごくごくふつうの老人たち。あまり裕福でなく、おそらくコミュニティとのつながりも薄い老人たちが、別の住人を逆恨みして妖怪の力を借りる……という構造になっている。

 これは不気味だ。たしかに「近所にいる、裕福でなさそうな老人たち」ってなんとなく不気味なんだよね。じっとこちらを観察してきたり、始終不機嫌だったり、やたら他人のことに干渉したり、悪意を漂わせている人もいる。この「不機嫌な老人たち」を悪意の元凶に持ってきたのはじつにいい。

 そして、三人組たちの活躍により騒動の原因である妖怪は退治されるわけだが、妖怪を呼び起こして地域住民たちを攻撃させた老人たちは何の罰も受けることなく、この地域に残りつづける。

 攻撃された住人たちの一部は転居を余儀なくされ、原因をつくった老人たちは怨念を抱えたまますぐ近所に住みつづける。おお、おそろしい。この後味の悪さ、ぼくはけっこう好きだ。


 伝え聞いた話が多いのでスピード感がないとか、モーちゃんの存在感がなさすぎるとかの問題はあるが、怪談系の話の中では好きな部類に入る作品。『大当たりズッコケ占い百科』もそうだけど、死んだ人の話よりも生きている人間の悪意のほうがずっと怖いぜ。

 好きなシーンは、市立図書館でハカセと宅和先生が話すくだり。宅和先生、教え子と対等に歴史の話ができてすごくうれしかっただろうなあ。



『ズッコケ三人組の推理教室』(1989年)

 シャーロック・ホームズの魅力にとりつかれたハカセたち。何か事件はないかと探していたら、クラスの美少女・荒井陽子の飼い猫がいなくなったという話を聞きつける。猫はまもなく見つかったが、見つけ主から高額な謝礼を暗に要求されたという。さらにモーちゃんの母親の知人もやはりネコの失踪にからんで謝礼を支払ったことが判明。一連の事件の真相を探るため、三人組は荒井陽子といっしょに捜査を開始する……。


 ぼくはズッコケシリーズを一作目から二十二作目までは所有していたし何度も読み返していたのでけっこう細かいところまでおぼえているのだが、なぜかこの作品だけは記憶がおぼろ。ところどころ読んだ記憶はあるから、図書室とかで借りて読んだのかなあ。

 この作品の特筆すべきは、なんといっても荒井陽子の存在。序盤から終盤まで三人組と行動をともにしていて、もはや四人組といってもいいぐらいの活躍を見せている。
『うわさのズッコケ株式会社』でも中森晋助が仲間に加わっているが、基本的に三人組についてくるだけで、物語を牽引することはなかった。この作品における荒井陽子の活躍はかなり異色だ。

 ズッコケシリーズって少年の話だったのが、1989年の『ズッコケ三人組の推理教室』、1989年『大当たりズッコケ占い百科』、そして1990年『ズッコケTV本番中』このあたりから急速に女子の登場シーンが増えてくる(まあ『占い百科』における女子は陰湿で怖い存在として描かれてるけど)。

 男女雇用機会均等法が施行されたのが1985年。中学校で男女ともに技術・家庭科を学ぶようになったのが1990年(知らない人も多いとおもうけどそれまでは技術は男子だけ、家庭科は女子だけだった)。1980年代後半は男女平等が声高らかに叫ばれるようになった時代だったのだ。ズッコケも時代の流れをしっかりとらえていたのだろう。


 ストーリーは児童文学のド定番、探偵ものだ。ひょんなことから事件に巻きこまれた子どもたちが知恵を出しあって犯罪事件を解決する話。『ぼくらはズッコケ探偵団』『こちらズッコケ探偵事務所』とほぼ同じ構成だ。ただ、『探偵団』は殺人事件・ひき逃げ事件、『探偵事務所』が誘拐・窃盗事件だったのに比べれば、こちらはペットの誘拐事件と犯罪のスケールは小さくなっている。その分身近に感じられるので、ぼくとしてはこっちのほうが好きだ。殺人や児童誘拐だと「警察に任せろよ」とおもってしまうけど、ペットの誘拐ぐらいだったら警察も本気で取り組まないだろうから小学生が捜査することに説得力がある。

 事件発生から、新たな謎が浮かびあがり、小さな手掛かりから徐々に犯人に接近し、最後は緊張感のある捕物帳。
 ハカセの推理、ハチベエの行動力、陽子の冷静さと社交性、モーちゃんの落ち着きと機転により犯人逮捕につながり、バランスもいい。全体的にうまくまとまっていて、お手本のような子ども向け探偵小説だ。

 気になったのは、猫誘拐犯が無罪放免されたこと。同情の余地はあるとはいえ、猫を誘拐して百万円以上を騙しとったのにあっさり許してしまっていいものか。
 被害者たちが猫をさらわれ、かつ十万円をとられたのに目をつぶってやるのも理解できない。せめて金は返させろよ。これで許してやったら、こいつら場所を変えてまたやりかねないぞ。


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