2022年4月5日火曜日

分別ある人間のごみの分別

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 ごみの分別ってむずかしくないですか。

 正直に言おう。ぼくは、なんとなくで分別している。


 いや、一応は知っている。

 ぼくの住んでいる地域のごみは「生ごみ・一般ごみ」「プラスチック」「紙ごみ」「衣類」「ビン・缶・ペットボトル」に分かれている。その他、1メートルを超えるような大型家電はリサイクル料を払って回収に来てもらう。乾電池や蛍光灯は区役所などで回収。牛乳パックや卵のパックや食品トレイはスーパーで回収している。
 どうだ、すごいだろう。これだけ知ってたら立派なもんだ。

 それでも、「これはどうしたらいいんだろう?」とおもうものがある。


 靴を捨てようとおもった。
 これは……衣類? まあ分類的には衣類だろう。ただしごみとして見たらどうなのだろう。衣類でいいのか。おまけにファスナー付きの靴だった。衣類に金属が含まれていてもいいのか?

 食品が入っていたプラスチックの袋。油がぎとぎとについている。
 これは……プラスチックでいいのか? 洗ってから捨てたほうがいいのか? しかし油を排水溝に流すのはよくないと聞いたことがある。ティッシュなどで拭えばいいのか? しかしごみを捨てるためにごみを増やすってなんだか本末転倒な気がする。

 困ったときは妻に訊く。なにしろ彼女は大学院で環境工学を学んだという経歴の持ち主なのだ。いってみればごみのスペシャリスト。迷ったときは彼女に任せている。

 その結果、靴は一般ごみ、油でぎとぎとのプラスチックも一般ごみになった。汚れがひどいものはプラごみにしてはいけないらしい。


 最近いちばん迷ったのは、ウォーターフロスを捨てようとおもったときだ。知ってる? ウォーターフロス。
 水のタンクにノズルがついてて、それを口内に入れてボタンを押すとすごい勢いで水が出て、歯間にたまった食べカスを掃除してくれるやつ。
 こいつが壊れて動かなくなったので捨てようとおもったのだが、何ゴミかわからない。二十センチぐらいなので大型家電ではない。一部にはプラスチックが使われているが、金属も使われている。分解できればいいのだが、ネジすらなくて素人にはばらすことができない。
 プラスチックもあるし、金属もあるし、充電式なので中にはバッテリーもある。これは……何ごみだ?

 とうていぼくの手におえないので妻のご託宣を仰ぐ。
「一般ごみ」
 なるほど、そうか。……一般ごみ!?

 えっ、この電化製品で、金属もプラスチックもバッテリーもあるやつを、ティッシュとか鮭の皮とかといっしょに捨てていいの!?
 うちのマンションは一般ごみ用ダストシュートがあるんだけど、ダストシュートからこの電化製品を投げ捨ててしまっていいの?

 いっこうに腑に落ちなかったが、妻が言うならしかたない。首をかしげながらダストシュートに放りこんだ。




 ごみの分別に納得がいかないのは、ぜったいにどこかで妥協せざるをえないことだ。紙とビニールがくっついてる製品とか、プラスチックと金属がくっついてるやつとか。ひきはがそうとするけど完全にははがれないやつ。
 どっちに捨てても、ちょっとは不純物が混ざっちゃう。これが気持ち悪い。

 ということで市が発行しているごみ分別表を見たところ「なるべく分別してほしいけど多少混ざってしまうのはしかたない」ということらしい。たとえばプラスチックの中に紙が混ざってても、処理するときに分けられるから、とのことらしい。

 えええ……。
 だったらそもそも分別しなくていいんじゃないの、とおもってしまう。もうそっちで分けてよ。だいたい分別しなくていい地域もあるし。京都市に住んでたことあるけど、すげー雑だったよ。カン・ビン・ペットボトル以外はぜんぶ一緒だったよ。今はどうだか知らないけど。

 人々がごみの分別に使っている時間と労力って、全国規模にすればとんでもなく大きいはず。でも、九割の人がちゃんと分別しても、一割の人が適当に捨ててたら台無しになってしまう。プラごみの中に生ごみが混ざってしまう。

 当然、処理する側もそうなることは想定していて、プラごみから生ごみを選りわけるシステムをつくっている。

 だったら、九割の人がちゃんと分別してる労力ってなんなの?

 釈然としない。




 そもそも、ごみの分類を一般市民にさせること自体が無理があるとおもう。

 八歳の娘は、いまだにティッシュとかプラスチックの容器とかを持ってきて「これは何ごみ?」と訊いてくる。

 いいかげんにおぼえてよ、とはおもうが、かくいうぼくだって「プラスチック製品の定義を答えよ」と言われたら困ってしまう。たくさんのプラスチック製品を見てきて経験的に「プラスチックかそうでないか」と見分けられるようになっただけで、明確な線引きはたいへんむずかしい。

 子どもも外国人も目が見えない人もおばかさんもみんなごみを出すのに、「全員が正しく分類できる」という前提で制度をつくるほうがどうかしている。




「白黒つけなきゃいけないのに白黒つけられない」ってのが気持ち悪いんだよね。

 だからさ。せめて。

「一般ごみ」「プラスチックごみ」「資源ごみ」みたいなのにもうひとつ追加して、「分類不能ごみ」って項目をつくってほしいんだよね。わかんないやつはぜんぶそこに放りこむの。

 そんなことしたらみんな「分類不能ごみ」にしちゃうって?

 いいじゃない、それはそれで。そうなったら、そもそも一般市民に分類させるのは無理だったってことだよ。

 ほとんどの人が守れない制度なら、制度のほうが欠陥なんだよ。


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