コンビニ外国人
芹澤 健介
コロナ禍で減ったが、少し前はコンビニで働く外国人をよく見た。というより、ぼくの住んでいる大阪市だと外国人店員のほうが多いぐらいだったかもしれない。
そんな「コンビニで働く外国人」を切り口に、日本で生活・労働をおこなう外国人の現状や問題点について調べたルポルタージュ。
もっともこの本の刊行が2018年で、コロナ前とコロナ後ではすっかり社会が様変わりしてしまったので今とはちがう面もちらほらあるけどね。
コロナ禍で数が減ったとはいえ、今の日本には外国人労働者が大勢いる。彼らなくしては社会が成り立たないといってもいい。
ぼくは移民受け入れに賛成だ。どんどん受け入れたらいい。というか、今の日本は「移民受け入れますか? それとも社会崩壊を選びますか?」という二択の状況なのだ。賛成も反対もない。
それでも「日本は単民族国家」ファンタジーを信じている人々にとっては、移民はなかなか受け入れがたいものらしい。現実と空想の区別がつかないアホとしかおもえないのだが、問題はそのアホどもが政治的に大きな力を持っていることだ。
というわけで「アホどもの眼をなんとかごまかしつつ、移民を受け入れる政策」が必要になる。
移民を受け入れないと社会が破綻する。でもアレな人向けには、移民は受け入れていないことにしない。
そこで、「出稼ぎ労働者を留学生として受け入れる」「外国人技能実習制度という名目で実質的に移民を受け入れる」という嘘をつく。実態は変えずに名前だけ変える。なんとも日本政府らしいこずるい発想だ。
そもそもが嘘からスタートしているから、ごまかしが横行する。「稼げるよと言って外国人を集めてるのにいざ日本に来てみたらおもうほど就労できない」「技能実習制度なのに母国に持ち帰るようなスキルが身につかない」となり、ツケを被るのは日本に来た外国人だ。
韓国は移民を積極的に受け入れ、政府が入国やら就業状況やらをきちんと管理しているそうだ。はじめから「移民」ということにすればきちんとチェックできるけど、日本は嘘で集めているから、外国人が働きつづけようとしたら「逃げて不法移民として働く」「犯罪に手を染める」しか道がなくなる。政府が犯罪者を生みだしているのだ。
とはいえ、日本にいる外国人の数は増えているのに、外国人の犯罪件数は減っているそうだ。一部の人が持っている「外国人が犯罪をする」というイメージは過去のものになりつつある。まあもともとファンタジーなんだけど。
日本にいる外国人は優秀だ。アルバイトをしている外国人を見ているとつくづくそうおもう。自分が外国のコンビニで働けるかと考えたら、彼らがどれだけすごいことをしていたかと思い知らされる。
とはいえ、接客の仕事の中ではコンビニは外国人にとってかんたんなほうだそうだ。たしかに仕事の内容は多いけど、客に対して話す言葉はある程度決まっている。「袋はいりますか」とか「お箸はおつけしますか」とかいくつか覚えればだいたい済みそうだもんね(宅配便とか振込とかはたいへんそうだけど)。
だが正社員として就職する道はまだまだ険しい。
あーあ。もったいないなあ。くだらない慣習で優秀な人材を逃しているなあ。まあ外国人にかぎった話じゃないけど。
採用担当者や経営者の話を聞くことがあるけど、いまだに「採ってやる」みたいな意識の人が多いからね。若い人はどんどん少なくなってるのに。まだ「たくさんいる中からちょっとでも悪いところを探してふるい落とす」感覚なんだよね。育てる気がない。
「コンビニで働く外国人を切り口に日本にいる外国人の問題を読み解く」切り口はおもしろかったけど、後半はコンビニとほとんど関係なかったのが残念。
あと気になったのが、「二〇三五年には三人に一人が高齢者という超高齢化社会になる」という記述。この認識は遅すぎ。「超高齢社会」の定義は人口の21%以上が高齢者である社会。日本が超高齢社会になったのは2007年だ。2035年には超超超高齢社会ぐらいじゃないかな。
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