『正しい保健体育II 結婚編』
みうらじゅん
前作の『正しい保健体育』がべらぼうにおもしろかったので読んでみたが、うーん、期待はずれ……。前作が良すぎたせいもあるんだけど。
前作ではふざけながらも真正面から「性」に向き合っていて、みうらじゅんらしい「セックスとのつきあいかた」が書かれていたんだけど、『結婚編』ははぐらかしばかりで、どうも真剣に向き合っているように思えなかった。
「結婚は介護してくれる人を見つけること」「スリルを求める浮気はしたほうがいい」なんてマッチョな思想と、みうらじゅんのふざけきった文章があんまりなじまない。みうらじゅん自身は不倫して離婚して二十歳近く若い女性と結婚したから、まさにこの思想を体現しているんだけど。
『正しい保健体育』は「童貞はどう性と向き合うべきか」という明確な軸があったんだけど、『結婚編』にはそういった視点がなく、何を語ってもどうも収まりが悪かったなあ。
通して読むと何が言いたいのかわからないけど、部分部分で見るとみうらじゅんならではの独自の哲学がくりひろげられていて感心するところもあった。
この文章、「モテモテ」でない男の憎悪と偏見がよく出ているなあ。やはり「モテモテ」とは縁遠いところにいるぼくとしても、うなずかざるをえない。
こういう人、いるよね。女と見ればあたりかまわず手を出そうとする人。
「女性経験人数が多い」ってのはだいたいこういうタイプだよね。確率が高いわけじゃなくて、母数が多い。10,000人に声をかけるから、成功率1パーセントでも経験人数100人というタイプ。
経験人数が多い、ってのはモテるかどうかよりも「どれだけ多くの女性に声をかけたか」で決まるんだろうね。
そう考えると「モテモテ」もあんまりうらやましくないな。やっぱり「自分からは何もしないけど美女が言い寄ってくる」タイプのモテ方が理想だよね。少女漫画とAVの中にしかないやつ。
みうらじゅんの考える少子化の原因について。
「セックスレス」という横文字の言葉こそが少子化の原因だと。
めちゃくちゃな陰謀論だ。
でもこれはこれで一理あるかもしれない。
言葉の持つ力ってあなどれないよね。違法残業をサービス残業と言い換えたり、強制わいせつをセクハラと言い換えたり、軽い言葉にすることで罪の意識も減るということはたしかにある。
政治家の仕事のひとつに「名前をつける」という行為もあるとぼくは思う。
「もはや戦後ではない」だとか「国民所得倍増計画」だとか、むずかしい言葉を使わずに直感的に施策をイメージさせるのは政治家にとって大事な資質だろう(考えたのは政治家本人ではないかもしれないが)。
「働き方改革」だとか「プレミアムフライデー」だとか、結局何が言いたいのかわからない、それどころか何かをごまかそうとしているようにしか思えないフレーズを聞いていると、最近はうまいネーミングをつける政治家(または官僚)が少ないのかもなあと残念に思う。
ああいう能力は女性政治家のほうが長けてるのかもしれないね。田中真紀子、蓮舫、辻元清美あたりは寸鉄釘を刺すようなフレーズ選びがうまかったもんなあ(ただし攻められると弱いのも彼女らに共通する特徴かもしれない)。
ワードセンスのいい政治家が現れてほしいなあ。で、鮮やかなコピーで高齢化に対する危機感を高めてほしい。
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