2018年3月10日土曜日

フラッシュモブが嫌われる99の理由

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フラッシュモブが嫌いという人は多い。
道端で、知らない人たちが突然踊りだすというドッキリ企画みたいなやつ。

「フラッシュモブ」で検索すると、フラッシュモブに対する憎悪があふれかえっている。
世の中の人はこんなにもフラッシュモブが嫌いなのか。

ぼく自身、フラッシュモブに恨みはないが、好きでもない。どっちかっていったら嫌いだ。
テレビで何度かフラッシュモブを観て「うわぁ……。これはキッツいなあ……」と感じたこともある。
旧友から「今度フラッシュモブやるんだけど一緒にやらない?」と誘われて「やめとくわ」と即答したこともある。

でも嫌いな人が多いということは、好きな人も多いということだ。じゃなかったらとっくに消滅している。
好きな人もいるのに、嫌いな人はとことん嫌い。それがフラッシュモブ。

フラッシュモブはなぜこんなに嫌われるのか、考えてみた。




 迷惑


自室でやるなら好きにしたらいいけど、フラッシュモブやる人たちって公道とか空港とか人の多いとこでやりたがるでしょ。

あれがなければ、大半の人にとってはフラッシュモブは「好きでもないけどどうでもいい」存在なんだと思う。なのに無関係な人を巻きこむせいで「うっとうしい。嫌い」という印象を持たれてしまう。選挙カーと一緒。

もしぼくがフラッシュモブの現場に遭遇したらわざとど真ん中を歩いて台無しにしてやろうと企てているんだけど、残念ながらまだその機会には恵まれていない。




 だまされる


「フラッシュモブ」で検索すると、「フラッシュモブでプロポーズされたから嫌すぎて振った」とか「結婚式で大嫌いなフラッシュモブをやられたから離婚した」なんて話が出てくる。
嘘か真かわからないけど、嫌な思いをした人の気持ちはわかる。

フラッシュモブにかぎらず、「サプライズ」が嫌な人は少なくないと思う。
要は「だます」って行為だからね。

上手な詐欺師はだまされたことにすら気づかせないと聞く。周囲の人が「おばあちゃん、あの人にだまされたのよ」っていくら言っても当のおばあちゃんは「そんなことはない」って認めない、なんて話も。
そんな詐欺は、だまされた本人がいい思いをしてそれに見合った対価を払ったのだと思えば、法律的にはアウトでもさほど憎むべき罪とは思わない。

でもそれはよほどうまいことやった場合の話であって、まあたいていだまされていい気はしない。

よほどセンスのいい人がスマートにやるなら「こりゃ一本取られた!」って気持ちよくなれるけど、そうじゃないかぎりはだまされたら腹立つよね。

まして、はじめてフラッシュモブを考案した人ならともかく、今さらフラッシュモブやったって「何こんな使い古された手段でサプライズ気取ってんの。きんもー☆」だよね。

頭を使わずにお手軽にサプライズをしようという浅はかさが嫌われる原因なんだろうな。




 赤の他人が楽しそうにしている


フラッシュモブって、わけわかんない人混ざるでしょ。
ぼくが「フラッシュモブやらない?」って誘われたときも、名前も聞いたことがない人のプロポーズという名目だった。

赤の他人が楽しそうに踊っていて、踊れないのは自分ばかりなり。
こんな状況、楽しいわけがない。

フラッシュモブが嫌われるのって、一応「ターゲット(だまされる人)のためにやる」ということになってるのに、踊ってるやつらがいちばん楽しそうだからだよね。
いや、やったらじっさい楽しいと思うんだよ。達成感もあるし、仲間内の結束も感じられるし、「他人を驚かせたい」ってのは人間の根源的な欲求だと思うし(うちの四歳の娘もよく背後から「わっ!」と言って驚かせようとしてくる)。

だからこそ、楽しく踊る輪の中に入れない人は疎外感を味わうことになる。

あれ、みんながつらそうにしていたらそこまで嫌われないだろうね。
たとえば二時間ぐらい休みなく踊るとか。踊ってるやつらが次々にぶっ倒れていって、救急車で運ばれるやつも現れて、あたり一面死屍累々。
そしたらサプライズをしかけられた側も「私のために苦しんでるわ!」って嗜虐的な悦びを感じてくれるかもよ。




悪意がない


なんといってもフラッシュモブが嫌われる最大の要因はこれだよね。
悪意がない。よかれと思ってやってる。これがいちばんタチ悪い。

以前、駅前のそんなに広くない歩道橋で、道いっぱいに広がって「盲導犬のために募金お願いしまーす」ってやってた。子どもとか使って。
すげーじゃまだったんだけどさ。でも本人たちはまったく悪いと思ってないの。崇高な目的のためなら人に迷惑かけていいと思ってんの。通行人も、盲導犬募金の人に注意しにくいから、じゃまだなと思いながらせまい隙間を我慢して通ってるの。
道をふさいでるのが派手な着物を着たら新成人だったら、誰か注意するなり警察に通報するなりするんだろうけどね。

善意の人って困るよね。やましいところがないから行動にブレーキがかからない。
会社経営者でも、金儲けのためにやってる人はそこまで悪いことをしない。「社会貢献」「人材育成」とか唱えるやつ、そしてそれを本気で信じているやつは際限なく悪いことをする。
「若いときの苦労は自分のためになる。だから残業が多くたって文句を言うな」ってやつはいっぱいいるけど、「おれの資産を増やすためにおまえら一日十六時間働け!」と言うやつはいないでしょ。

たぶんフラッシュモブが大好きな人に「やられて嫌な人もいるんですよ」って言っても伝わらないんだろうね。善意でやってるから。善意から出た行動なら「気持ちがうれしい」と言ってもらえると思っているから。



ぼくがフラッシュモブに誘われたとき、上に書いたようなことを言って「悪いこと言わんからフラッシュモブなんてやめとけ」って説得しようかな、と一瞬思った。

でも「やったことないからだよ。一回やったらフラッシュモブのおもしろさがわかるよ!」なんて悪意のないとんちんかんな答えが返ってきそうだなーと思って結局何も言わなかった。

善意につける薬はない。


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