黒い波紋
曽根 圭介
曽根圭介作品を読むのは六冊目。
……なのだが、これは期待外れだった。
中盤まではおもしろかったんだけどな。
死んだ父親の遺品を整理していたら、「毎月三十万円を誰かから送金されていた」記録の残る通帳と、犯罪行為を記録したビデオテープを発見する。
で、それらをもとに話が進んでいくので「なるほどこの三十万円とビデオテープの出所が最後につながるのね」と思いながら読んでいたら……。
つながらないんかい! まったくの別案件かい!
途中で国会議員、革命家グループ、右翼団体、冤罪事件などいろんな要素が出てくるのだが、それらもほとんどつながらないまま終わってしまう。
えええ……。
「最後で明らかになる意外な真相」みたいな感じをすごい出してたのに……。
曽根圭介作品、文章はさほどうまくないけどプロットはしっかりしていてそこが好きだったんだけどな。
これは風呂敷の畳みかたがへただったなあ。
この小説内では殺人、脅迫、暴力などが描かれるが、そのへんの描写はべつにこわくない。
おそろしいのは「政治の世界」だ。
もちろんこの作品はフィクションだが、「政治の世界ならこれぐらいのことがまかりとおってもおかしくないな」とおもわせる説得力がある。
ぼくもそうだけど、政治家と個人的にかかわったことのない人にとって政治家稼業ってまったく得体が知れない世界じゃないですか? 政治家という人物はよく見るのに、裏で何をやっているかまったく知れない。
その不透明さは、もしかしたらヤクザ以上かもしれない。
『黒い波紋』はそういう怖さを書こうとした作品だったのかもしれない。
そうだとしたらすごくおもしろい試みなんだけど、それにしては余計な要素が多すぎるんだよなあ。
いろんな要素をちりばめすぎて散漫な印象になっちゃったな。
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