少女
湊 かなえ
ううむ。
よくできている。が、よくできているがゆえにおもしろくない。
とにかく偶然がすぎる。
「たまたま〇〇が□□の親だった」「あのときの××がなんと△△につながっていた」みたいなのがひたすら続く。
天文学的確率の20乗。いくら宇宙が広いからってこれはやりすぎ。
リアリティのない小説が嫌いなわけじゃない。
「ありえねーよ!」って設定も、それはそれでいい。
ただ。
ありえない展開の小説にするには、それなりのテイストが必要なわけ。
『ホーム・アローン』はコメディだからおもしろいわけじゃん。ケヴィン少年の策略がことごとくうまくいくのはご都合主義だけど、それも含めて楽しいわけじゃん。コメディだから。
でもサスペンス映画のラストで、主人公が敵を撃退するために『ホーム・アローン』みたいな仕掛けをやったら興醒めするよね。
べつのたとえをするとさ。
サーティワンアイスクリームに「“ミニオン” フラッフィワールド」って味があるのね。
映画のミニオンとコラボした商品で、公式サイトによると「ストロベリー風味、マシュマロ風味、コットンキャンディが織りなすフワかわいい美味しさ!」って書いてある。
“ミニオン” フラッフィワールド |
まあばかみたいなアイスクリームだよね。
でもアイスクリームだからこれでいいわけじゃん。
だってみんながサーティワンアイスクリームに求めるのは「楽しさ」「おもしろさ」「はじけとんだ感じ」であって、「素材にこだわったおいしさ」とか「プロの料理人の熟練した技術」とか「栄養」とかじゃないから。
だからミニオンのハチャメチャな味でもぜんぜんオッケー。
でも老舗の天ぷら屋が「“ミニオン” フラッフィワールド味はじめました!」ってやったらげんなりするでしょ。いや天ぷら屋にそういうの求めてないから、ってなるじゃん。
そういうことなんだよね。
だから『少女』もかる~いタッチで書いてくれたらおもしろかったはず。よくできてるなーって素直に感心できたとおもう。
映画『キサラギ』なんかやはり死を扱った作品だったけど、とことんポップに描いていたから、ストーリーのありえなさも含めて楽しめた。
かといって湊かなえさんがポップで底抜けに明るい小説を書いたら、それはそれでなんかイヤだな……。
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