少年たちのおだやかな日々
多島 斗志之
七作の短篇からなる作品集。
それぞれべつの話だが、どれも主人公は十四歳の少年。
ある出来事をきっかけに日常が少しずつ壊れてゆく……というサスペンス。
「友人のお母さんの浮気現場を見てしまう」「友達のお姉さんにゲームをしようと誘われる」「教師から泥棒の疑いをかけられる」
といった、どこにでもありそうな出来事が引き金となり、少年たちが恐ろしい目に遭う。
すごく鮮やかなオチはないが、それぞれテイストが異なる怖さを描いていて楽しめた。
十四歳男子を主人公に据えるという設定がいい。
自分が十四歳のころを思いだしても、火遊びをしたり、高いところに登ったり、入っちゃいけない場所に入ったり、言っちゃいけないことをいったり、詳しくは書けないようなことをたくさんした。
あの頃SNSがなくてほんとうによかった(インターネットはかろうじてあったが子どもが遊べるようなものではなかった)。
十四歳って、身体は大人になりつつあって、性的な好奇心は大人以上に高まって、けど社会的にはぜんぜん子どもで、でも自分の中では全能感があって、周囲に対して攻撃的になって、大人が嫌いで、世間のことをわかったような気になって……というなんともあやういお年頃だ(「中二病」はおもしろい言葉だけど、その一語だけでひとまとめにしてしまうのはもったいない)。
そんなあやうい十四歳だから、危険をかえりみずに未知の世界に足を踏み入れてしまう気持ちはよくわかる。
読んでいていちばんドキドキしたのは『罰ゲーム』という短篇。
友だちの家に行ったら、きれいだけどちょっとイジワルなお姉さんが「ゲームをしよう」と持ちかけてくる。
エッチな展開に持ちこめそうとおもった主人公はそのゲームに乗ることにする……という、なんともドキドキする導入。
ところがお姉さんが決めた罰ゲームはとんでもないもので……。
こわい。でもエロい。
エロの可能性が待っているのに退くわけにはいかない。エロの前では恐怖すらも絶妙なスパイスになってしまう。
このお姉さん、明らかに頭イカれてるんだけど、"エロくてイカれてるお姉さん"って最高じゃないですか。
小学五年生のとき、ジェフリー・アーチャーの『チェックメイト』という短篇小説(『十二の意外な結末』収録)を読んで、すごく昂奮した。
今思うとエロスとしても小説としても大した話じゃないんだけど、エッチなお姉さん+この先どうなるかわからない展開 というのは、思春期男子にとっては居ても立ってもいられないぐらいのドキドキシチュエーションなのだ。
中学生だったときの気持ちをちょっと思いだしたぜ。あっ、そういう青春小説じゃなくてサスペンス? 失礼しました。
その他の読書感想文はこちら
0 件のコメント:
コメントを投稿