美人の正体
外見的魅力をめぐる心理学
越智 啓太
人はどれぐらい美人/イケメンを好きなのか。
そもそも美人/イケメンとはどういう顔なのか。
なぜ美人/イケメンが好かれるのか。
美人/イケメンはどれぐらい得をするのか。
逆に美人/イケメンが損をすることはあるのか。
……などなど、とにかく顔の良し悪しに関する研究ばかりを集めて紹介している本。
とにかくいろんな研究のいいとこどり、悪くいえば寄せ集めという感じで、著者の主張はほとんどない。
が、個人的にはこのほうが信頼がおけて好きだ。べつに著者の個人的主張はなくてもいい。
橘玲『言ってはいけない』もいろんな研究を紹介する本だけど、あれはちょっと著者のつけたし(という名の暴走)が過ぎるからなあ。
見た目のいい人のほうがモテるのはもちろんだが、学問の面においても高い知能を持っていると期待されるそうだ。
そういや前の職場に清楚な感じのすごい美人がいて、しゃべってみたらぜんぜん物事を知らないし計算もできないしだらしないので驚いたことがある。
あれは、ぼくが勝手に「この人は顔が整っているから頭も良くて性格もきっちりしているにちがいない」と思いこんでいたせいなんだろうな。
そんなふうに勝手に期待されて失望されることもあるが、期待されることはプラスにはたらくことが多いようだ。
期待されることで、それに応えようとしてじっさいに成績が良くなる。
つまり見た目のいい子はそうでない子よりも勉強もスポーツもできるようになる(傾向がある)わけで、見た目の悪い子にとってはなんとも救いようのない話だ。
「美人は性格が悪い」という通説もあるが、現実には美人は(特に異性からは)性格も良いとおもわれるらしい。
また、自信がつくことで明るく社交的になりやすいわけで、生まれついて魅力的な人はどんどん魅力的になり、そうでない人はどんどん卑屈になってしまう。
いい顔に生まれるかどうかで、恋愛以外の面でもまったく異なる人生を歩むことになるのだ。
改めておもうけど、ぼくもイケメンに生まれたかったぜ。
ただし、男の場合は「見た目がいい」が必ずしもモテるにはつながるわけではないという。
マッチョな男、かっこいい男は一夜限りのアバンチュールの対象としてはモテるが、長期的な恋愛・結婚の対象としては必ずしもそうとはかぎらないようだ。
女性の場合、「やりにげ」されることのコストが大きいため(妊娠・出産したらひとりで子育てをしなくてはならない)、好みが多様化する傾向にあるようだ。
相手を選ぶうえで「浮気をしなさそう」ということも重要なファクターとなるため、「浮気をしなさそう」≒「モテなさそう」な男が選ばれることもめずらしくない。
たしかに「美女と野獣」の組み合わせはときどき見るが、その逆は少ない。
これはわれわれかっこよくない男性には朗報だ。
顔の好みの話。
同性であれば自分と似た顔に好感を持つ、異性に関してはそのような傾向はあまり見られない。
遺伝子を残すためには親戚は助けあったほうがいいけど、親戚には恋愛感情を抱かないほうがいいから。
なるほどね、よくできている。
そういや特に女の人にいえることだけど、似た感じの人でつるんでいる印象がある。
同じぐらいのかわいさ、同じようなメイクの人が友だちになっている。美人とブスの友情はめずらしい。
あれはこういう理由もあるのかもしれないね。
当然ながら見た目がいい人のほうが得をすることが多いんだけど、この本の最後には「美人ならではの苦労」も書かれている。
遊び目的の男に声をかけられる、不当に高い期待をされる、同性から妬まれる、など。
娘が生まれたとき、ぼくは「あまり美人すぎないほうがいいな」と願った。
美人は美人で苦労するだろうし、悪い男に目をつけられて道を踏みはずしやすそうだし、親としては心配が多そうだから。
幸か不幸か、ぼくに似て、今のところは美人ではなさそうだ(もちろん親としてはかわいいけど)。
幼なじみの美人だった子を見ても、あんまり幸福そうには見えないんだよなあ(やけに独身率が高いし)。
美人もあんまりいいことないのかもしれない。ブスよりはマシだろうけど。
「見た目がいい男」がいちばん得かもしれないな。
モテるし、優秀そうに見られるし、あまり妬まれないし(男もイケメンが好きだ)。
「美人ならではの苦労」は聞くけど、「イケメンならではの苦労」なんてぜんぜん聞かないもんなあ。
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