2019年3月25日月曜日

【読書感想文】イケメンがいちばんいい / 越智 啓太『美人の正体』

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美人の正体

外見的魅力をめぐる心理学

越智 啓太

内容(e-honより)
なぜ美人は一人勝ちといわれるのか?納得の定説から予想を超える新事実まで、最新の研究成果に基づいたネタ満載。美人が大好きな人、美しくなりたい人の知的好奇心を鮮やかに刺激する!

人はどれぐらい美人/イケメンを好きなのか。
そもそも美人/イケメンとはどういう顔なのか。
なぜ美人/イケメンが好かれるのか。
美人/イケメンはどれぐらい得をするのか。
逆に美人/イケメンが損をすることはあるのか。

……などなど、とにかく顔の良し悪しに関する研究ばかりを集めて紹介している本。

とにかくいろんな研究のいいとこどり、悪くいえば寄せ集めという感じで、著者の主張はほとんどない。
が、個人的にはこのほうが信頼がおけて好きだ。べつに著者の個人的主張はなくてもいい。

橘玲『言ってはいけない』もいろんな研究を紹介する本だけど、あれはちょっと著者のつけたし(という名の暴走)が過ぎるからなあ。



見た目のいい人のほうがモテるのはもちろんだが、学問の面においても高い知能を持っていると期待されるそうだ。

そういや前の職場に清楚な感じのすごい美人がいて、しゃべってみたらぜんぜん物事を知らないし計算もできないしだらしないので驚いたことがある。
あれは、ぼくが勝手に「この人は顔が整っているから頭も良くて性格もきっちりしているにちがいない」と思いこんでいたせいなんだろうな。

そんなふうに勝手に期待されて失望されることもあるが、期待されることはプラスにはたらくことが多いようだ。
 ローゼンソールらはある小学校で、知能検査を行いました。そして、担当の先生に「この知能検査は、今後その子どもがどのくらい伸びるかをテストするものなのです」と信じさせて、今後伸びる可能性のある子どもとして何人かの子どもの名前を示しました。その8か月後にもう一度知能検査を行ったところ、実際にそれらの子どもたちの知能が伸びていることがわかったのです。この実験の面白いところは、じつは先生に示された「伸びる子ども」のリストは単に、ランダムに選ばれた生徒にすぎなかったことです。つまり、「この子どもは伸びる」と先生が信じたことにより、実際にそれらの子どもたちの知能が伸びてしまったのです。
 このように、先生の期待が現実化してしまう効果が存在すると仮定すると、美人だったりハンサムだったりする子どもは先生から期待され、実際に成績が良くなってしまう可能性があります。また、このような効果が自己拡大していく可能性について言及している研究者も少なくありません。つまり、魅力的 → 先生から期待される → 勉強を頑張る → 実際に成績が良くなる → さらに先生から期待される → さらに頑張るという良い方向のスパイラルが形成されるというわけです。これは逆の場合、恐ろしいスパイラルとなります。つまり、魅力的でない → 先生から期待されない → 勉強を頑張らない → 成績が低下する → さらに期待は低くなる → さらに成績が低下するという流れです。

期待されることで、それに応えようとしてじっさいに成績が良くなる。
つまり見た目のいい子はそうでない子よりも勉強もスポーツもできるようになる(傾向がある)わけで、見た目の悪い子にとってはなんとも救いようのない話だ。

「美人は性格が悪い」という通説もあるが、現実には美人は(特に異性からは)性格も良いとおもわれるらしい。

また、自信がつくことで明るく社交的になりやすいわけで、生まれついて魅力的な人はどんどん魅力的になり、そうでない人はどんどん卑屈になってしまう。

いい顔に生まれるかどうかで、恋愛以外の面でもまったく異なる人生を歩むことになるのだ。

改めておもうけど、ぼくもイケメンに生まれたかったぜ。



ただし、男の場合は「見た目がいい」が必ずしもモテるにはつながるわけではないという。
 じつはこのような「男らしい男」を選択する場合にはいくつかのリスクもあるのです。一つは、このような男性は生殖力が強いため、自分の遺伝子を最大限残すために、一人の女性との間で家庭を作って、そこで少数の子どもを作り育てるというよりは、多くの女性と短期的な関係を築くという方略のほうが有利になる可能性があります。つまり、「やりにげ」方略、子どもの養育には投資を行わないという方略をとりやすくなるのです。女性から見るとつまり「男らしい男」は、生殖力があるが「やりにげ」される可能性があるちょっと危険な存在ということになります。
 このような危険な存在をあえて選択するということも可能ですが、危険を避けて長期的な関係を築くためには、「女性らしさを持っている男性」を選ぶのもいい選択かもしれません。この場合、それほど「モテる」要素を持っているわけではないし、女性的な特性を持っている可能性があるので、「やりにげ」されずに、じっくりと自分の子どもの養育に投資を行ってくれるかもしれません。

マッチョな男、かっこいい男は一夜限りのアバンチュールの対象としてはモテるが、長期的な恋愛・結婚の対象としては必ずしもそうとはかぎらないようだ。

女性の場合、「やりにげ」されることのコストが大きいため(妊娠・出産したらひとりで子育てをしなくてはならない)、好みが多様化する傾向にあるようだ。
相手を選ぶうえで「浮気をしなさそう」ということも重要なファクターとなるため、「浮気をしなさそう」≒「モテなさそう」な男が選ばれることもめずらしくない。

たしかに「美女と野獣」の組み合わせはときどき見るが、その逆は少ない。

これはわれわれかっこよくない男性には朗報だ。



顔の好みの話。
この図を見てみると、同性の人物の場合には、自分に類似した顔が選ばれやすかったのに、異性の場合にはそのような傾向はあまり見られないということがわかります。これが、おそらく我々に備わった近親交配回避のためのメカニズムだと思われます。
 同性の場合には2人の間に子どもを作ることはなく、好意を持つということは、相手を援助することなどと関連するので、単純に血縁関係が大きい相手を選好するほうが、結果的に自分の遺伝子を多く後世に残すことができます。相手の遺伝子と自分の遺伝子に共通するものが多いほど、相手を助けてその生殖を支援することが結果的に自分と同じ遺伝子をより多く後世に残すことにつながるからです。そのために似ている個体であればあるほど好感を持ったほうが、より適応的だと考えられます。
同性であれば自分と似た顔に好感を持つ、異性に関してはそのような傾向はあまり見られない。
遺伝子を残すためには親戚は助けあったほうがいいけど、親戚には恋愛感情を抱かないほうがいいから。
なるほどね、よくできている。

そういや特に女の人にいえることだけど、似た感じの人でつるんでいる印象がある。
同じぐらいのかわいさ、同じようなメイクの人が友だちになっている。美人とブスの友情はめずらしい。
あれはこういう理由もあるのかもしれないね。



当然ながら見た目がいい人のほうが得をすることが多いんだけど、この本の最後には「美人ならではの苦労」も書かれている。

遊び目的の男に声をかけられる、不当に高い期待をされる、同性から妬まれる、など。

娘が生まれたとき、ぼくは「あまり美人すぎないほうがいいな」と願った。
美人は美人で苦労するだろうし、悪い男に目をつけられて道を踏みはずしやすそうだし、親としては心配が多そうだから。
幸か不幸か、ぼくに似て、今のところは美人ではなさそうだ(もちろん親としてはかわいいけど)。

幼なじみの美人だった子を見ても、あんまり幸福そうには見えないんだよなあ(やけに独身率が高いし)。
美人もあんまりいいことないのかもしれない。ブスよりはマシだろうけど。

「見た目がいい男」がいちばん得かもしれないな。
モテるし、優秀そうに見られるし、あまり妬まれないし(男もイケメンが好きだ)。

「美人ならではの苦労」は聞くけど、「イケメンならではの苦労」なんてぜんぜん聞かないもんなあ。

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