2018年9月13日木曜日
敬遠の語
小学生のときは友だちの親にも学校の先生にも敬語を使っていなくて(せいぜい丁寧語ぐらい)中学校に入ったら先輩に対して敬語。
だいたいの人はそんな感じで敬語を身につけていく。
だからだろうか、敬語を使う間柄=上下関係だと思っている人がいる。学校で教わる「敬語とは相手を敬う言葉です」を鵜呑みにしている。
だから、敬語を使われたら自分は敬われている、偉そうにしないといけないと誤解してしまうのかもしれない。
だが敬語は「敬意の語」だけでなく「敬遠の語」でもある。特に丁寧語に関しては後者の意味が強い。
ぼくはあまり人付き合いが好きではないので「敬遠の語」としての敬語を使っているときは居心地がいい。
仕事の付き合いの人、近所の人、娘の保育園の先生、保護者同士の付き合い。こちらも敬語、向こうも敬語。
あんたに対して敵意はないが心を許したわけでもないぜ、この線からこっちに入ってくんじゃねえぞ。
武士と武士がすれちがうときに相手の間合いに入らないようにするような緊張感。これが安全な距離だ。
ところがこのメッセージを正しく汲みとることができない輩が急にため口で話しかけてくる。
これいわば侍の刀に触れてくるようなもの。刀をチャキっと鳴らすように「あぁ」と露骨に不機嫌な声を出せば相手も斬られまいと離れてゆく。それでも間合いの中から出ようとしない不届き者に対してはいたしかたあるまい、刀を振り上げてばっさり。
斬られた無礼者は傷口を押さえながら「な、なんで……」とよろよろ。
「なんでですか、ですよ」
ぼくはそう言い残して、後ろを振り返らずに歩きさる。
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