2018年9月10日月曜日

【DVD鑑賞】『勝手にふるえてろ』

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『勝手にふるえてろ』

(2017年)

内容(Amazon Prime Videoより)
24歳のOLヨシカは中学の同級生"イチ"へ10年間片思い中!過去のイチとの思い出を召喚したり、趣味である絶滅した動物について夜通し調べたり、博物館からアンモナイトを払い下げてもらったりと、1人忙しい毎日。そんなヨシカの前へ会社の同期で熱烈に愛してくれる"リアル恋愛"の彼氏"ニ"が突如現れた!!「人生初告られた!」とテンションがあがるも、いまいちニとの関係に乗り切れないヨシカ。"脳内片思い"と"リアル恋愛"の2人の彼氏、理想と現実、どちらも欲しいし、どっちも欲しくない…恋愛に臆病で、片思い経験しかないヨシカが、もがき、苦しみながら本当の自分を解き放つ!!

友人から勧められての鑑賞。
綿矢りさの同名小説の映画化。

おもしろかった。全員ヘンな登場人物、クレイジーな疾走感、ばかばかしいセリフまわし、なにより主役の松岡茉優の演技が光っている(ただちょっとかわいすぎる。このキャラクターならもっとダサい恰好、ダサいメイクをしててほしい)。
偏執的、オタク、人見知り、攻撃的、ナイーブ、メルヘンチック。困った部分を寄せ集めたようなキャラクターをうまく演じている。
突然のミュージカルパートも最高(歌がすごくうまいわけでもないのがまたリアルでいい)。

主人公は、周囲の人間に勝手なあだ名をつけていたり、ずっと片思いをしている男に接近するために興味ない男から言い寄られたときの手口をまんま使ったり、SNSで他人になりすましたり、好きじゃない男から告白されて舞いあがったり、なんつうか「賢い人がバカやってる」感がたまらない。

かと思ったらちょっとしたことで傷つく中学生のような繊細さを持っている。他人のことは平気で攻撃するくせに自分がちょっと傷ついたら大げさに騒ぎたてる。他人に対して成熟したコミュニケーションがとれない、ほんとにめんどくさい女だ。

でもそういうところがすごく魅力的だ。誰の心にもあるガキンチョな部分を具現化したような存在。こんなふうに生きられたらいいだろうな、いややっぱり嫌だな。
ぼくも昔、こういうタイプの女性と仲良くしていたことがあるが、やはり付きあいきれずに離れてしまった。遠目に見ている分には魅力的なんだけどね。でもその身勝手さを受け入れられるだけの度量の大きさはぼくにはなかった。



映像自体にトリックが仕掛けてあって、これまでのあれやこれが実は××だったということが明らかになるのだが(ネタバレのため伏字)、この種明かしをラストに持ってこないところがいい。
「ラストのどんでん返し!」みたいな安易な展開はいらない。そういうのつまらないから。さりげなくやるのがいいんだよね。「驚愕のラストがあなたを待ち受ける!」みたいに書かれたらぜったいに驚愕しない。

テンポの良さもあって序盤から最後までまったく退屈しなかったのだが、ラストで想定内の場所に着地してしまったのは少し残念。ここまでぶっとんだ話をつくるんならもっと思いきったラストでもよかったんじゃないかと思う。まあそれは原作の問題か。

安野モヨコ『ハッピー・マニア』を思いだした。『ハッピー・マニア』のカヨコを内向的にしたらこんな感じだろうな。
どこまでも自分のためにつっぱしる姿って、女性作者とよく合う。男が描いたらもっと周囲を気にしてかっこつけちゃうだろうなあ。

煩悩のままにつっぱしる女性はただただまぶしい。自分ができないからこそ。やりたくないからこそ。


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