2018年8月20日月曜日

わかんないやつほど原因を知りたがる

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以前の会社で、Web事業部という部署にいた。
ホームページの運営や広告の運用を担当する部署なのだが、営業職や事務職の人からすると「なにやらパソコンに強い人たち」というぐらいの認識しかなく、かなり専門外の質問をぶつけられた。
Excelの使い方を訊かれたり「Windowsの更新の案内が出てるけどこれって更新してもいいんですかね」と訊かれたり。
OfficeやWindowsの使い方はWebじゃねえよと思うんだけど、違いを説明するのもめんどくさいので、わかる範囲で教えてやった。

だがそういうバカはすぐに調子に乗るので、こっちがわざわざ業務の手を止めて善意で教えてやっているということを忘れて「早く教えてくださいよ」みたいな言い方もされた。
ぼくは優しくないので、せいいっぱい優しい声を作って
「ブラウザ、わかりますか? あなたがインターネットと読んでいるやつです。それでYahoo!でもGoogleでも開いてもらって、検索窓に『エクセル、スペース、平均』と入力してください。そしたらわかります」
なんて教えてやっていた。要するに「ググレカス」を丁寧に言っていただけなんだが。


ひどいやつだと「なんかFAXが送れなくなったんですけど、見てもらえます?」とか言ってきた。さすがにそのときはいつも心の中に押しとどめている「知らねえよ」という言葉が外に漏れた。
なんならWeb事業部がいちばんFAX使わない部署だからね。基本的に紙でやりとりしないんだから。
そのうち水道修理とか頼まれるんじゃないだろうか、と思っていた。「Web事業部なんだから水道のことぐらいわかるでしょ」なんて。


ときどき、社内で使っている顧客管理システムがダウンすることがあった。
そのシステムは外部業者に保守委託していたものだが、営業の連中はそんなことわからないから「顧客管理システムが開けない! Web事業部なにやってんだ!」みたいな怒りの電話をかけてきた。

知らねえよ、と思うのだけれど一応委託会社に「サーバーが落ちているようなので確認と復旧をお願いします」と電話を入れる。
その間にも、全国各地の営業部から電話がかかってくる。
その電話の内容にずいぶん差があった。

まれに営業部にも優秀な人はいて、そういう人は
「顧客管理システムにつながらないようですが、そちらでもですか。では委託会社側の問題ですね。いつぐらいに復旧しそうかわかりますか? そうですか、では他の作業を進めますので復旧したら連絡お願いします」
と、必要最小限のことを伝えてその状況下でできることをおこなっていた。

一方、わからないやつほど原因を知りたがる。
「なんかファイルが開かないんですけど、これってなんでですか? 動かなくなった原因はなんですか? どうやったら直るんですか?」
原因も修復方法もこっちは知ったこっちゃないし、それを今専門家が調べてるんだろうし、仮にわかったとしてそれをおまえに伝えて一ミリでも解決に近づくとは思えない。
わかんないやつほど、原因や対応方法を知りたがった。


行政機関や大学でトラブルや不祥事があると、抗議や質問の電話がひっきりなしにかかってくると聞く。体験したことはないが、迷惑この上ないだろう。
賭けてもいいが、電話をかけてくるやつの中に専門知識を持っている人はひとりもいないだろう。
専門家ほど知っているからだ、専門分野に素人が口を出して良くなることなどひとつもないと。
仮にあったとしても、それは今ではない。
問題がひと段落したときに改善策や防止策を話し合う上では「素人目線の意見」もひとつの参考になるかもしれないが、問題の解決に当たっている最中に素人意見はじゃまになるだけだ。

それに、抗議の電話を聞かなくてはならないのはまず問題の当事者ではなくただの窓口の人だ。何も知らない場合がほとんどだろう。
偉い人がやらかした問題に対して、ど素人が部外者に抗議をする。なんて不毛なんだ。

テレビのニュースでも「なぜこのような不祥事が起きたのか」なんて検証をやっているが、テレビのニュースはそんなことやらなくていい。
起こったことだけを淡々と伝えてくれればいい。原因を追究して再発防止策を講じるのはニュースキャスターの仕事でも視聴者の仕事でもない。

なんとなくわかった気になってすっきりしたいという気持ちもわかるけど、部外者の「原因追及」は問題解決を遠ざけているだけにしか見えない。


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