妻からこんな話をされた。
「聞いた話なんだけどね。職場の人の知り合いが赤ちゃんをだっこしてたんだけど、うっかり手が滑って赤ちゃんを落としちゃったんだって。具合が悪そうだったので病院に行ったら揺さぶられっこ症候群みたいなことになってたんだって。そしたら虐待を疑われて児童相談所に赤ちゃんを連れていかれちゃって、赤ちゃんと引き離されたんだって。ひどくない?」
ぼくは「何もひどくないと思うけど」と答えた。
「伝聞の伝聞の伝聞なのでかなり信憑性に欠ける話だけど、仮に赤ちゃんと引き離されたって話が真実だったとして、『うっかり手が滑って落としちゃった』ってのがどうしてほんとだとわかるの? 虐待してた親が嘘をついてるのかもしれないじゃない」
「……」
「仮にほんとに過失で落としてしまったんだとして、赤ちゃんは虐待されたときと同じような状態に陥ったんでしょ? だったら行政が介入して保護するのはいいことだと思うけど」
「……でも親はかわいそうじゃない」
「かわいそうだけどさ。でもなにも一生子どもに会えないわけじゃなくて一時的な保護でしょ。重篤な状態にあるんだったら、公的な機関で預かってもらえるほうが安心だけどな」
「……でもほんとは虐待してないのに虐待を疑われるのってイヤだと思うけど」
「べつに疑われたわけじゃないんじゃない? 行政は虐待という”行為”じゃなくて、揺さぶられっ子症候群という”結果”に基づいて介入したんでしょ。それってすごくいいやりかただと思うけどな。さっきも言ったように真相は本人にしかわからないんだからさ。行政が親の言動を見て『あんたは日頃から子どもをかわいがってるから虐待じゃない』『あんたは虐待しそうだから虐待とみなす』って判断してたら、そっちのほうがよっぽど怖いよ。『あんた虐待してるでしょ』なんて言ったら、それが事実であっても誤りであっても親子関係に悪影響しか与えないだろうし。だから『虐待があったかどうかはわからないけどとにかく子どもが重度の怪我をした場合は公的機関が子どもを保護します』ってやりかたはすごく公平で、かつ児童保護の観点からもすごくいいと思うけど」
「んー。そういう正論を聞きたかったんじゃなくてかわいそうだね、って話をしたかったんだけどな」
あれ、ぼくの返答まずかった?
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