2018年7月3日火曜日
新刊のない図書館
よく大阪市立図書館に行く。子どものえほんを借りるのが目的だ。
ぼくは本を買うのが好きなので(読むために買うというより買うために読んでいるというぐらい)ずっと図書館とは無縁の生活を送ってきたのだが、子どもができて図書館を利用するようになった。
えほんはすぐ読みおわるし、かさばるし、値段は高い。
次々に買っていたら財布がもたない。毎週のように図書館に出かけて、肩がもげるぐらいリュックいっぱいにえほんを詰めて帰る。
大人の本はほとんど借りないが、図書館の棚を見るのは好きだ。
図書館の書架は書店とはだいぶ味わいが異なるので、他人の本棚を見るような楽しさがある。
しばらく見ているうちに気づいたことがある。
ある時期を境に新しい本が入っていない。
ぼくは書店で働いていたこともあるので、本の流行りには敏感だ。
図書館の本棚には、十年前のベストセラー、二十年前のベストセラーはあるけど、ここ数年に売れた本がほとんど並んでいない。
たとえば1990年代~2000年代前半にヒットを飛ばしていた宮部みゆきの本は充実している。ほぼ全作品が並んでいる。だが近年の人気作家の本は少ない。あっても古い本しかなかったりする。
はじめは借りられているだけかと思った。だが、注意してチェックしてみると、いつ見てもない。そもそも置いていないらしい。
まあそれはいい。図書館に新刊の文芸書を置くことはぼくも反対だ。趣味の本は買って読んでほしい。図書館に置くのは新刊書店で手に入らなくなった本だけでいいと思っている。
だが、新しい本がないのは文芸書だけではないことにも気づいた。実用書も古い本だらけだ。
たとえばパソコン入門書のコーナーなどを見てみると、十年ぐらい前の本がずらりと並んでいる。『わかる! Excel2007』なんて本が堂々と置かれている。
パソコン書の世界で十年前なんて大昔だ。医学書の棚に『解体新書』が置かれているようなものだ。
生活に困っている人が仕事を探すにあたりパソコンスキルを身につけようと図書館に行く、なんてシチュエーションもあるだろう(なにしろ大阪市の生活保護受給率は政令指定都市の中でナンバーワンだ)。
そんなときにExcel2007の本しかなかったら困るだろう。
図書館ってそういう人のためにあるものだと思うのだが。
どうしたんだろう。
どうして大阪市はここ十年ほど図書館の蔵書を増やすことを放棄してしまっているのだろう、と首をかしげていたのだが、2011年に大阪維新の会の橋下徹氏が大阪市長になったことに気づいて「ああそういうことかな……」と深くため息をついた。
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