『人口減少社会の未来学』という本の中で、平川克美氏がこんなことを書いていた。
ここには少子化を(少しだけ)食い止めるヒントが書かれている。
婚外子の保護を手厚くすることだ。
でも。
断言してもいいが、絶対に日本は「結婚してない親から生まれた子どもを支援する」方向には舵を切らない。
フランスやスウェーデンだって結婚せずに子を生むことを推奨しているわけではない。ただ「結婚せずに生まれた子も差別せずに、むしろ積極的にサポートしていきましょう」と言っているだけだ。
日本はそれすらやらない。やれない。「むしろ積極的に差別していきましょう」という方針を貫く。
他の国はどうだか知らないので比較はできないが、日本人は"見せしめ"が好きだ。人類に共通する習性かもしれないが。
犯罪者が罰を受けることに対して、ほとんどの人は「被害者への償い」「犯罪者の更生」だとは考えていない。「他の人への見せしめ」と思っている。
だから遺族が望まなくても被害者の実名や写真を公表するし、報道に「冤罪だったら」「加害者が刑期を終えて一般市民に戻ったら」なんて視点は少しもない。
あるのは「悪いことをしたやつはこうなるんだぞ。わかったな」という見せしめ意識だけだ。磔(はりつけ)刑の時代とやっていることは変わらない。
見せしめだから、冤罪であっても関係ない。被害者が報道を望んでいなくても関係ない。補償も更生も気にしない。
それが冤罪であっても、犯罪を大々的に報道することは「悪いことしたらこうなるんだぞ」という見せしめには有効だ。
「結婚してから子どもを産んだほうがいい」という考え自体は、世界中ほとんどの文化で主流を占める考えだ。
でも"見せしめ"が好きな人たちは「結婚してから子どもを産んだほうがいい。だから結婚せずに子どもを産んだら不幸になるべきだ」と考える。そうすれば結婚せずに子どもを産む人間は減るだろう、と。
「高校を中退したやつはまともな仕事につくべきじゃない」
「不倫をしたやつはテレビに出るべきじゃない」
「あくどい儲け方をしたやつはろくな死に方をしない」
「夫婦別姓なんか選択する家庭の子どもはつらい思いをする」
赤の他人が高校中退しようが、不倫をしようが、法律スレスレのやりかたで金儲けをしようが、夫婦別姓を名乗ろうが、自分には関係ない。でも"見せしめ"を欲しがっている人にとってはそうではない。自分の考えと違う生き方をしている人には不幸になってほしいと思っている。
結婚してないやつは子どもを産むな、未成年者は子どもを産むな、まともな仕事をしてないやつは子どもを産むな、子どもをかわいがれないやつは子どもを産むな、責任感のないやつは子どもを産むな、他人に迷惑をかけるなら子どもを産むな、でも少子化を止めるために結婚して子どもを産め。
わが国で求めらているのはそういうことだ。
世の中が求めているのは「規範的な生き方をする人」と「見せしめ」のどちらかだけだ。規範から外れているけど幸せな人、は欲していない。
ぼくは「子どもは親のものではない」と思っている人間なので、個人的には、とりあえず産んでみて育てるのが難しそうだったらとっとと手放せばいいと思う。
子育てに必要なのは「何があっても子どもをまっすぐ育てあげる覚悟」ではなく「親が手放した後もちゃんと育てる仕組み」だと思っている。
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