2018年6月10日日曜日

日本人は殺さなさすぎ

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この国で生活してみていちばん驚いたのは、電車が時間通りに来ないことだ。
日本の電車は正確だって聞いていたから余計に驚いた。どこが正確なんだよ、しょっちゅう遅れるじゃないかって思った。
しばらくしてから知ったんだが、ジンシンジコっていうんだってな。要するに、人が電車に轢かれてるわけだ。

おいおい、日本ってのはずいぶん物騒な国だな。おれの国だってマフィアが裏切り者を殺した後に線路に置いて処分したりはしてたが、こんなに頻繁にはなかったぜ。
ところがどうやらそうじゃないらしい。ほとんどが自殺だっていうからもう一度びっくりだ。

おれの生まれ育った国じゃあ自殺は大罪だ。宗教とかそういうんじゃない。あたりまえのこととして誰もが持っている考えだ。殴られたらやりかえすとか、きょうだいでファックしちゃいけないとか、そういうレベルでの常識だ。誰も教えちゃいけないが誰でも知っている。

それでもたまに自殺をするやつはいる。家族は隠すが、あの家で自殺者が出たなんて知れわたったら、そりゃもうひどいもんだぜ。
家に石を投げられたり、火をつけられたり、とても同じ家には住めない。自殺みたいな悪いことをしたやつの家族だからな、ひどい目に遭うのもしょうがないけど、それにしたってかわいそうなもんだぜ。

おれの国じゃあ殺人より自殺のほうが悪だ。
だって殺人はしょうがない場合もあるだろ。このままじゃ自分が死んじまうとか、家族が危ない目に遭うとか。日本でも正当防衛ってのがあるんだろ。
殺人は「まあそんな状況に置かれたらしょうがねえよな。殺したくなる気持ちもわかるぜ」ってこともあるけどよ、自殺はねえだろ。「生きてたほうがいいに決まってる」としか思えねえよ。

だから日本人が働きすぎて自殺するなんて話を聞いたとき、こういっちゃなんだが、日本人ってのは頭いいようでばかなんだなって思ったぜ。
おれの国には働きすぎて自殺するようなやつはひとりもいない。死ぬほど働かされるぐらいなら、雇い主をぶっ殺す。そしたら問題は解決だ。そっちのほうが罪も軽いし、自分も死ななくて済むしな。
じっさい、そういう殺しもときどきあるぜ。金儲けに目がくらんだ資本家が、労働者にぶっ殺されることが。外国の会社の社長がほとんどだ。もちろん罪には問われるが、世間は労働者の味方よ。殺すほど働かせた資本家のほうが悪いに決まってる。
そうそう、日本人は「死ぬほど」っていうだろ。あれも違うな。おれたちの国じゃあ「殺すほど」っていうんだ。

だから日本人がいう「ブラック企業」なんてのも、おれの国にはほとんどない。
だって働かせすぎたら殺されるんだからな。いやでも労働環境は改善するってわけさ。どの社長も夕方になったら「おい、早く帰れよ」って言ってまわる。優しいんじゃない、殺されないためだ。

でかい会社の社長は殺されないためにボディーガードを雇うこともあるが、ボディーガードだって労働者だからな。へたすりゃそいつに殺されることもある。結局、恨みを買わないようにするのがいちばんってことだ。

おれに言わせりゃ、日本人は殺さなさすぎだ。
やみくもに殺せとは言わねえよ、でも自殺するぐらいなら殺せばいい。へたに恨みを買ったら殺されるかもしれないと思うようになれば、きっとパワハラもセクハラもいじめも劇的に減るぜ。


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