『誰でもできるロビイング入門
社会を変える技術』
明智 カイト
ロビイストってうさんくさい?
アメリカの政治の本を読むと「ロビイスト」という言葉がよく出てくる。
特定の政策を推し進めてもらうよう政治家にはたらきかける人物、というような意味らしいが、どうもうさんくさいものを感じていた。
選挙を通して選ばれた政治家に、どこの馬の骨とも知れない人物が圧力をかけるの?
それって結局は金に物を言わせて政治家を操ろうとしてるってことじゃないの?
みたいな印象だった。
しかしこの本では、清水康之氏、駒崎弘樹氏、荻上チキ氏、赤石千衣子氏、明智カイト氏の取り組みを通して「自殺者を減らす」「待機児童問題を解決する」「性的マイノリティが生きやすい社会をつくる」など、どちらかというと「弱者を守る」ためのロビイング活動が紹介されている。
政治と関わらざるをえない状況に陥ったら
ぼくは、なるべくなら政治に関わらずに生きていきたいと思っている。
本来、間接民主主義ってのは「一般人は政治のことなんか考えなくていいですよ。すべて専門家に任せておけば安心です」って制度なわけだから、職業政治家以外は政治のことを考えなくて済む世の中が理想だ。
しかしそうは言ってられないこともある。
こんな例が載っている。
これは「至難の業」どころか不可能だよね……。
窓口を一本化すればいいんだろうけど、行政は縦割りになっているから内部から変わることはまずない。
当事者が選挙に出馬して政治家になれば状況を変えられるかもしれないが、あたりまえだが当事者にはそんな余裕はない。出馬しても当選しないだろう。
政治家が動いてくれればいいけど、政治家もひまじゃないから要請がないとなかなか動けない。
そこで有効なのがロビイング活動。
支援者団体が政治家に対して、失業者を救済する法の策定を要請する。
それが多くの人を救う法であれば政治家にとっては票の獲得につながるから、制定に向けて動くことになる……。
つまり、ここで紹介されているロビイング活動とは、「弱者の声をすくいあげて政治家に届け、弱者を救済する仕組みを作ってもらう」という活動だ。
なんとも理想的な政治との関わり方だ。
そうかんたんにはいかないことも多いんだろうけど、少なくともデモ行進やビラ撒きをするよりは、ずっと現実的な方法だよね。
政治家をうまく使う
『誰でもできるロビイング入門』ではロビイングのいろんなケースが紹介されているけど、これを読むと与党の政治家もちゃんと仕事をしているし、野党の議員も批判ばっかりじゃなくて与党と協力して法の策定に尽力しているんだな、と実感する。
ニュースを見ていると政治家ってどうしようもないクズばっかりに見えるけど、目立たないところでちゃんと活動しているんだねえ。
権力の監視は報道機関の大事な仕事だけど、こんなふうに「業績をちゃんと伝える」ことにも紙面を割くようにしてくれたら、もっとみんなハッピーになるような気がするな。
政治家だって人だから、批判ばっかりされてたらやる気なくすでしょうよ。
「〇〇しない政治家は辞めちまえ!」って言うのと、「〇〇してくれるならこれだけの票が獲得できますよ」って言うのではどっちが人を動かせるかって考えたら明らかだよね。
大事なのは「政治家をどう動かすか」で、うまくやっている人や団体はそれをとっくに実行している。
って考えると、世の中を変えたいと思うのなら政治家になるよりロビイストになるほうがいいね。
政治家って支持母体や政党の言いなりにならざるを得ないわけだから、自分のやりたいように動ける範囲って実はすごく少ないらしいし。
一般人の政治との関わり方って、「政治家を批判する」か「投票によって誰かを支持する」しかないと思っていたんだけど、ロビイング活動によって「政治家をうまく利用する」って道もあるんだということに気づかされた。
政治家って、雲の上の存在ではなくて、逆にどれだけ批判してもいい存在でもなくて、「我々の代わりに動いてくれる人」だと思えばもっと有意義な接し方ができるような気がする。
たぶん政治家だって、有権者に対しては「要望を伝えてくれる」ことを望んでるんじゃないかな。
「選挙」「抗議」「批判」以外で、もっと政治家と気軽に関われたらいいな。
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