『生ける屍の死』
山口 雅也
本格ミステリ、なのかな……?
殺人事件があり、きちんと伏線があって、ヒントが提示されていて、矛盾のない謎解きがある。
このへんは本格派なんだけど、「死者が続々と生き返る」「主人公も殺されるがよみがえって犯人を追う」という非常識な設定が設けられている。
めちゃくちゃ異色なのに本格派、というなんとも扱いに困るミステリ作品。
内容紹介文にあるこの文章、パンクでかっこいいなあ……。
しかしこの本、テンポもいいしユーモアもあるのに、とにかく読むのがしんどかった。
小説を読んで疲れたのはひさしぶりだ。
疲れた理由としては、
- 文庫本で650ページという分量。
- 文章が翻訳調
- 舞台がアメリカの葬儀会社と、なじみのない場所
- 登場人物が多い。20人くらい出てくる。
- 登場人物の名前がおぼえづらい。兄弟の名前がジョン、ジェイムズ、ジェイソン、ジェシカって、いやがらせとしか思えない……。
ふつう、推理小説って後半になるにつれて登場人物が減っていき(死ぬから)、容疑者が絞られていくんだけど、『生ける屍の死』では登場人物が減らないし(死んでもよみがえるから)、容疑者も絞られない。
これ、相当上級者向けだわ……。
しかし読むのがつらかった分、ラストの謎解きで得られるカタルシスは大きかった。
動機も「人がよみがえる世の中だから」という理由だし、犯行も「人がよみがえる世の中」ならではのやりかただし、謎解きも「よみがえった死者だからわかった」という手順を踏んでいる。
設定は奇抜だが、その設定を十二分に活用している。
アメリカの葬儀会社を舞台にしている必然性もあるしね。これが日本を舞台にしていたらやっぱり違和感があっただろう。
「死者がよみがえる系のミステリ小説」としては、これを超えるものはそう出てこないだろうね。まずないだろうけど。
刑事の謎解きがすごい。
どんな事件だよ。
気になってしかたないぜ……(もちろんこれは推理小説に対するパロディなんだけど)。
その他の読書感想文はこちら
0 件のコメント:
コメントを投稿