娘がどこかに行きたいという。時節柄、人の多い場所には行きたくない。
そこで「散歩でもしようか」と言って外に出る。
娘は「どこに行くの?」としきりに訊いてくる。子どもには「目的もなくただ歩く散歩」ができないのだ。ぼくもそうだった(だから飼い犬の散歩も嫌いだった)。
目的を与えるため、「数字さがしゲーム」を提唱した。
街中にある0~99の数字をさがす(3桁以上の数字から一部をとるのはダメ)。街をぶらりと一周するまでの間になるべく多くの種類を見つけよう。
数字をさがしながら娘と歩く。
少ない数字はかんたん。0円、一番、24時間、10時~22時。
住んでいるのが都心部なのでお店も多い。メニューや営業時間を見ると数字がたくさん並んでいる。
1桁の数字はすぐにコンプリートした。
24以下もそうむずかしくなかった。営業時間でよく使われている(ただし16時などは開店時刻にも閉店時刻にもなりにくいので意外と少なかった)。バス停を発見。時刻表は数字の宝庫だ。数字が一気にそろう。ただし当然ながら59までしかない。
車のナンバープレートは禁止とした。労せずして見つかってしまいつまらないからだ。
ナンバープレートのように意味のない数字はつまらない。
番地を探すが意外と少ない。都心部はマンションが多く、住所表記が多くないのだ。住所で使われている数字は小さいものが多い。田舎だと「○○町 1-1419」なんて住所があったりするが、街中は住所が細かく分割されているのでかえって数字が大きくならないのだ。
メニューには料金も書かれているが2桁の料金などまずない。せいぜいトッピング50円ぐらい。
30分ぐらい歩いて25ぐらいまでの数字はコンプリートしたが、大きい数はむずかしい。
なにかの拍子に73なんて半端な数を見つけるとおもわず「やった!」と声が出てしまう。
不動産屋の店先に貼っている物件を眺める。これも数字が多い。家賃○○万円、駅から○○分、築昭和○○年……。
これはいいぞとおもって見ていたら、店内から従業員が出てきて「なにかお探しですか」と訊かれた。
「あ、いえ、大丈夫です」とあわてて退散した。ちぇっ、せっかく数字がいっぱいあったのに。
そんなこんなで一時間ぐらいかけて、1~99までの数字のうち6割ぐらいは見つけることができた。やっぱり大きい数字はむずかしいね。
こういう散歩は昔からよくやってきた。
小学生のとき、母と姉と「なるべく多くの公園を見つける」という散歩をやったことがある。
やはり小学生のとき、友人と「できるだけ多くのクラスメイトの家の前まで行く(前まで行くだけ)」ツアーをやった。
高校生のときは「できるだけ多くのクラスメイトの家の前まで行く(さらにインターホンを押して出てきた人にお菓子を配る)」ツアーをやった。
ただ歩くのはつまらなくても、目的があるととたんにゲーム性が増して楽しくなる。たとえそれが「数字を見つける」といった何の役にも立たない目的であっても。
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