ランドール・マンロー(著) 吉田 三知世(訳)
以前紹介した『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか』の続編のような本。
タイトルは『ハウ・トゥー』で、「○○するには」という問いに対する答えが並ぶのだが、どの答えも現実的でない。
「スマホを充電するためにエスカレーターを利用した発電機を作る方法」みたいなのがひたすら並ぶ。
たとえば、『川を渡るには』の章。
川を渡るためにはどうしたらいいか。ぼくらがおもいつくのは、濡れるのを覚悟で歩いて渡る、泳ぐ、ボートに乗る、といったところだろう。
ところがこの本では
- 川を飛び越えるために必要な速度はどれだけか
- 水面を滑るにはどんな道具とどんな乗り物を用意すればいいか
- 川を凍らせるにはどれだけの電力が必要か
- 川の水をすべて沸騰させるにはどれだけのエネルギーがいるか
- 凧を使って川を渡ることは可能か
といった、まったくもって役に立たない答えが披露されている。
カンザス川を凍らせるには87ギガワット(重量物運搬ロケットの打ち上げ時の出力と同じぐらい)が必要、ということを知っても何の役にも立たない。
だがユーモアと知性たっぷりにつづられた文章は、役に立たなくても読んでいて楽しい。
『プールパーティーを開くには』の章。
ただ「常識的に達成可能か」「意味があるか」「効率がいいか」「コストに見合う手段か」という意識から離れれば、課題に対する答えは意外とたくさんあるということに気づかされる。
プールを水で満たすために地球温暖化を加速させる。すごい発想だなあ。
へえそうなんだとうならされた記述。
へえ。棒高跳びに必要なのは跳躍力じゃなくて速度なんだ。
あれは跳んでるんじゃなくて「走ったままの速さで上に行く」競技なんだね。棒高跳びで高く跳ぶために必要なのは「速く走ること」と「重心が高いこと」なんだね(競技としてはうまくバーを越えるテクニックも必要だが、高く跳ぶためにはこのふたつが必要)。
「氷の上は滑る」ということは小学生でも知っているのに、いまだに物理学では「なぜ氷の上は滑るのか」を完全には説明できないのだそうだ。
宇宙の果てとか深海とかを除けば科学はこの世のほとんどを解き明かしているようにおもってしまうけど、身近なことでも案外わかってなかったりするんだね。
おもしろかったんだけど、全部で28章もあるので後半は飽きてしまった。ばかばかしいのはおもしろいけど、ずっとばかばかしいとうんざりしてくるね。
この半分ぐらいの分量でもよかったかも。
あと訳文はもうちょっとなんとかならんかったのかね。
序文の一部だけど、ほんとひどい。中学校の英文和訳だったらこれで正解だけど、全単語を訳してるので読みづらいったらありゃしない。
まあ本文はここまでひどくなかったけど。
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