機械/ロボット/コンピュータ/AIが進化すれば、単純な労働は機械に任せて、人間はクリエイティブな仕事に専念できる。
という話を耳にしたことがある。何度も。
技術の進歩によって人間がやらなくてはならない単純な労働は減った。
大きな石を人間が運ぶ仕事とか、本に書いてあることを書き写す仕事とか、そういう単純な仕事は機械がやるようになった。
前にも書いたが、数十年前には「ボウリング場で倒れたピンを並べる係」がいたんだそうだ。そういう、「説明を五分聞けばほとんど誰にでもできる仕事」はどんどんなくなっている。
タバコ屋の店番だったらかんたんな計算さえできれば誰にでもできたが、コンビニ店員として一人で店をまわそうとおもったら一ヶ月以上のトレーニングが必要だ。
多くのクリエイターを支えているのは、単純な仕事だ。
売れない役者やミュージシャンがいろんなアルバイトをしているという話をよく聞く。急な仕事の入る可能性のある彼らにとって「時間の融通が利く仕事」は命綱だ。
時間の融通の利く仕事というのは、たいていの場合誰にでもできる仕事だ。「これはあの人にしかできない」という仕事に就いている人は、急に休んだり辞めたりできないのだから。
誰にでもできる仕事が減っているということは、時間に融通の利く仕事も減っているということだ。
この先、「誰にでもできる仕事」がさらに減っていったら、役者や芸人やミュージシャンやアーティストになるためにフリーターとして生きていく若者も絶滅寸前になるんじゃなかろうか。そんなことできるのは一部の裕福な家庭の生まれだけ。
若い人は気づきにくいが、じつはフリーターよりまっとうな会社の正社員や公務員のほうがよほど時間に融通が利く。一部の職種を除き。
決まった日に休みがとれるのでスケジュール調整しやすいし、まともな会社なら有給もちゃんととれる。
なにより、「金がある」ことはいろんな面で時間の節約になる。無理して徒歩や自転車で移動しなくてもいい、ちょっとした買い物をするのにあれこれ悩む必要がない、時間がないときは外食やテイクアウトで済ませられる。「節約のための時間」を大幅に削れる。
かつては役者やミュージシャンを目指す若者はフリーターになるのが一般的な道だったが、今後はサラリーマンや公務員からクリエイターになるほうが多くなるんじゃないだろうか。
結局、労働からは逃れられないというこった。
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