以前、会社の人たちとバーベキューをした。バーベキュースペースのある大きめの公園で。
何人かは子どもを連れてきていたのだが、子どもたちは早々にバーベキューに飽きて「公園で遊びたい!」と言いだした。
ぼくは付き合いで参加したもののこういう集まりはあまり好きではないので、これ幸いと「ぼくが子どもを見ときますよ」と言い、子ども七~八人を連れてその場を離れた。
付き合いのバーベキューより子どもと遊ぶほうが楽しい。親たちはビールを飲み、肉を食っていた。
しばらく公園で遊んでいると、テレビ収録のスタッフと、当時M-1グランプリ優勝直後だったミルクボーイが現れた。ロケをしていたのだ。
ロケスタッフがぼくらのもとに寄ってきた。ミルクボーイがカメラの前で子どもたちにいくつかのインタビューをした。子どもたちは元気よく答える。
その後、スタッフから「今の映像をテレビで放送するかもしれません。お子さんの顔が映ってもよろしいでしょうか。よければこちらの用紙にサインお願いします」と訊かれた。
だがぼくはこの子たちの親ではない。勝手に判断するわけにいかないので、親に電話をして事情を説明した。電話の向こうが色めき立ったのがわかった。
「えっ!? テレビ? 行く行く!」
野次馬根性丸出しだ。酔っぱらった親たちがあわてて駆けつけたが、残念ながらテレビクルーは別の場所へ行ってしまった後だった。
どんな番組か、番組はいつ放送されるのか、などと質問されて、答えているうちにふと気がついた。子どもが一人いない。三歳の子の姿が見当たらない。
さっきインタビューに答えているときにはいた。その後、出演の許諾がどうとかやっているうちに一人でどこかに行ってしまったらしい。
真っ青になった。三歳というと、けっこう遠くまで行けるし、おまけに「困ったら誰かに訊く」「訊かれたことに答える」なんてことはできない。迷子になるといちばんややこしい時期だ。
大人たち総出で迷子をさがした。もちろんぼくも責任を感じて必死にさがす。
だが、さっきまでさんざんビールを飲んでいたHという男は泥酔していてまったく使い物にならない。座りこんで「テレビ出たかったな〜」などと言っている。
ぼくはちょっとキレて「子どもが迷子なんですよ。さがしてください!」とHを叱りつけた。ちなみにHも人の親だ。三歳の子が広い公園で迷子になるのがどれだけ危険なことかわからないはずはないだろうに。
あちこちさがしまわった。公園の警備員のおじいちゃんを見つけて、園内放送をしてもらえないか訊いたが、彼はあからさまにめんどくさそうな顔をしている。
「私ではそういうことを判断できないんですよね……」
「だったら誰かに訊いてもらえないでしょうか。お願いします、事故に遭ったりしたら大変なので」
と頼んでいると、泥酔していたHが駆けよってきた。「いました! いました!」と叫びながら。
えっ! いた!? でかした!
「すみません、もう大丈夫です、お騒がせしました」
と警備員に言いかけたそのとき、Hが言った。
「いました! 今トイレに行ったらミルクボーイがいました!」
……そっちかい!
「いやー。ミルクボーイいたんでうれしくて握手してもらいました!」
と語るH。
いやみんな迷子さがしてるんだけど……。しかもトイレで握手求められるってミルクボーイも気の毒に……。
という出来事でした(迷子は無事に見つかりました)。
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