後ハッピーマニア 1
安野 モヨコ
『ハッピーマニア』の続編。
前作の約15年後の話。
いやあ、『ハッピーマニア』はおもしろかったなあ。
当時、シゲタカヨコというキャラクターは革新的だった。
男のぼくにとって、シゲタカヨコの行動原理は衝撃的だった。
(「あたしは あたしのことスキな男なんて キライなのよっ」というセリフのインパクトの強さよ)
まったく理解不能……とおもうと同時に、ああなるほどと腑に落ちた。
一部の女性の行動がまったく理解できなかったんだけど、そうかあの人はシゲタみたいな人なのか! とおもって見るようにしたらいろいろと合点がいった。
そうかそうか。
恋愛は「素敵な相手」を得るための手段かとおもっていたけど、目的ととらえている人もいるのか……。
あと、恋愛は「自分をより高いステージに連れてってくれるもの」という発想も、まず男にはない。
男の恋愛は短絡的なので「いい女とヤりてえぜ」としかおもっていなくて、それ以上でもそれ以下でもない。
男が恋愛によって得たがるのは「女」だけど、女が求めるものは「男」だけじゃないんだ……。
もちろんシゲタカヨコは漫画のキャラクターなので極端な価値観の持ち主だけど、ぼくにとってはまったく理解不能の女心をほんのちょっとだけ理解させてくれた(ような気がする)存在だ。
あと東村アキコの『東京タラレバ娘』もぼくが女性の恋愛観を把握するための参考図書なのだけど……『ハッピーマニア』と『タラレバ娘』が参考図書って相当歪んだ見方だな……。
それはそうと、好きだった漫画の続編が読めるのはうれしい。
よくぞ続きは書いてくれた。
(ところで『働きマン』の続きはどうなったの……)
前置きが長くなったが、さて『後ハッピーマニア』。
理想の男を求める終わりなき旅を続けていたカヨコも45歳。
まあいろいろありながらもタカハシとそこそこの結婚生活を続けていたのだが、突然タカハシから離婚を切り出される……というショッキングなオープニング。
まさかというかさもありなんというか。
しかしなあ。
ひどいぜタカハシ。
カヨコはもちろんいい妻ではないけど、そんなことは誰もが知るところで、タカハシだって当然承知の上で結婚したわけで、それなのに45歳になってから離婚してくれだなんてあまりにひどい話だ。
まじめな女に目移りするって、そんなことは20年前に済ませておけよ……。
そりゃないぜタカハシ。
おまえがそんな薄情な男とはおもわなかったぜ。
フクちゃんもヒデキもみんな(田嶋以外)それぞれ結婚というものに対して苦悩を抱えていて、それぞれ事情はわからんでもないのだが、タカハシだけは理解できん。
シゲタカヨコに見切りをつけるタイミングはなんぼでもあっただろうに。
前作ではいちばん常識人に見えたタカハシが、今作だといちばんのダメ人間に見える。
まあまだ物語がはじまったばかりなのでこれからどうなっていくかわからないけど……。
あれだね。
若いときのバカは笑い飛ばせても、歳とってからのバカは痛々しいだけだね。
登場人物のやっていることは『ハッピーマニア』も『後ハッピーマニア』も大きく変わるわけじゃないのに、20代がやっていたら「バカやってんなー」と軽く笑い飛ばせることでも、40代だと「いや……これは……ダメでしょ……」って深刻に受け取ってしまう。
たいがいのことはそうだね。
ケンカでも軽犯罪でも不貞でも破局でも失業でも、20代でやるのと40代でやるのでは受けるダメージがぜんぜんちがう。
40代だと、すべてが「もう取り返せない」になっちゃう。
ほれたはれたで生きていけない。
老後とか親の介護の問題とかも考えなくちゃならない。
ぼくは今、結婚したときのシゲタカヨコと、離婚を切り出されたときのシゲタカヨコのちょうど間ぐらいの年齢だ。
たぶん、ここからの大きな進路変更はむずかしい年齢。
うーん、家庭を大事にしなきゃなあ。
まさか『ハッピーマニア』の続編を読んでこんな感想を抱くとはおもわなかったぜ。
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