ノイズ【noise】
筒井 哲也
内容説明文がおもしろそうだったので読んでみた。
田舎の集落にやってきたある男。主人公たちが言動に不審なものを感じてネット検索すると、元殺人犯であることがわかる。
近寄りたくないが、刑期を終えて出てきた以上は一般市民。強制的に排除することはできない。
元殺人犯の男は主人公の妻と娘にあからさまに性的な目を向けるようになり……。
第一話はこんな内容。ものすごく期待が高まった。
なるほど。この元殺人犯が“ノイズ”ね。
口ではえらそうに人権の重要性を語っていても、みんな自分の生活のほうが大事だもんね。
こういう事態に直面するとエゴイズムがむきだしになるよね。
己の信条とエゴイズムの間で葛藤しながら元殺人犯から家族を守ることができるのか、というサスペンスね。
……とおもいながら二話目以降を読んだのだが。
期待外れだった。
登場人物がみんなバカなんだよね。二つ選択肢がある状況で、常に悪いほうを選択する。
正当防衛で人を殺してしまったことを隠すために死体遺棄をするとか。
死体遺棄を隠すために殺人をするとか。
そんな感じで、常に「まちがったほう」を選択しつづける。どんどん罪を大きくする。
転落人生を描きたいのかとおもったけど、そういうわけでもなさそう。主人公たちはあんまり後悔しないんだよね。
バカなの? バカなのね。あっそう。
めちゃくちゃ展開が早いので読んでいて退屈はしないんだけど、そのスピード感が裏目に出ている。
「直情的な行動」
「都合のよい偶然が重なる」
「主人公たちのために都合よく動いてくれる村人たち」
のオンパレードで、読んでいてどんどん白けてしまった。
はじめの期待が大きかった分、拍子抜けしてしまった。
ラストまで読んでも「はじめっから正当防衛で届け出しておけばよかったのに」としかおもわなかった。
筒井哲也氏の漫画ってどれも綿密に構成されているのがわかるんだけど、今作はその濃密なプロットがアダになったって感じがする。
「言動の怪しい元受刑者が近所に来たとき、どうするか」
というワンテーマでじっくり三巻使って書いてくれたらおもしろかったとおもうんだけどなあ。
冒頭のこのセリフとかすごくわくわくしたのになあ。
でもじっくり書くのは漫画向きじゃないのかなあ。
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