絶滅危惧動作図鑑
藪本 晶子
「絶滅しそうな動作」を集めた図鑑。
「死語」や「生産終了したもの」に関する言説はよく見るけど、「動作」にスポットをあてるのはめずらしい。たしかにテレビはまだあるけど「テレビのチャンネルをひねる」や「テレビをたたく」といった動作は絶滅したもんね。
この本に載っている動作でぼくがなつかしかったのは、うさぎ跳び、体温計を振る、携帯の電波を探す、カメラのフィルムを巻く、など。
うさぎ跳びはぎりぎりやった世代だとおもう。小学生の時のサッカークラブでやったことがある(やらされた、という感じではなく遊びの延長の罰ゲームみたいな感じだったけど)。中学生のときにはすでに「うさぎ跳びは身体に悪い」と言われていた。
体温計を振る、もなつかしいな。子どものときは水銀体温計を振っていた。一度振った体温計が机に当たって中の水銀が飛び散っちゃったことがあったんだけど、今おもうとおっそろしいもの使ってたなあ。水銀って毒だからね。
カメラのフィルムを巻く、もあったね。使い捨てカメラもそうだったし、ぼくが北京で買った「長城」という謎のブランドのカメラも手巻き式だった。あれはなかなか味があっていい動作だったけどね。
とまあ「ああ、あったなあ」とか「なつかしいなあ」とかおもうんだけど、それ以上のものは何もない。
とにかく文章が無味無臭。せっかく着眼点がおもしろいのに、教科書みたいな文章なので読んでいてまるで引っかかりがない。まあ「図鑑」だからといえばそれまでなんだけど、それにしてもなあ。
巻末に著者とみうらじゅん氏の対談が載っていて、みうらじゅんさんの言葉はやっぱりいちいち味があるから、余計に本編の無味っぷりが目立つ。「結局、真っ先に絶滅していくこういっていうのは、人が工夫してやろうとしたことなんじゃないかなと思いますね」なんてしみじみいい言葉だ。
これはあれだな。カフェとかに置いといて、コーヒーの待ち時間にお客さんがパラパラめくるぐらいがちょうどいい本だね。数分だけ時間をつぶすのにぴったり。無味無臭だからコーヒーの邪魔にもならない。
そういえばスマホの普及とともに「時間つぶしで雑誌をパラパラめくる」動作も絶滅寸前かもな。
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