大阪人だが、小学生三人を連れて大阪観光をしてきた。
うちは共働きなので、夏休みだ春休みだといっても娘は学童に行かせていた。せっかくの休みなのに毎日学童。しかもコロナ禍のため「弁当はひとりで黙って食べる」「おしゃべり禁止」「室内で遊ぶときはひとりで」など、厳しく対策がとられていた。子どもにとって楽しいはずがない。
そんなわけで娘にとって夏休みや春休みというのは楽しいものではなく、日々「早く授業はじまらないかなー」とぼやいていた。
せっかくの休みなのに毎日学童ではかわいそう、たまにはおもいっきり遊ばせてやろう、とおもい、毎年夏休みや春休みには有給休暇をとって「朝から晩までめいっぱい遊ぶ日」をつくることにしている。
といっても「娘の友だちといっしょにプールに連れていく」とか「ファミレスに連れていって好きなものをおもいっきり食べさせる」とか「いっしょに好きなだけボードゲームをする」とかで、そこまで特別なことをするわけではないのだが。
さて、今年の春休み。
京都に住む姪が小学校を卒業したので卒業祝いも兼ねて、長女(9)、姪(12)、甥(8)を連れて大阪観光をすることにした(次女(4)は申し訳ないが保育園に預けた)。
姉夫婦ともに仕事が忙しく、うちのところ以上に遊びに連れていく時間がないという。そこで「子どもたちだけで大阪までおいで。駅まで迎えに行くから」と言い、大阪を連れまわすことにした。
聞けば、姪は吉本新喜劇が大好きで毎週録画して観ているという。甥は吉本新喜劇にはあまり興味がないが身体を動かすことが大好きだ。
そこで、なんばで吉本新喜劇鑑賞 → 天王寺で串カツ → てんしばでボルダリング → 新世界で街歩き というプランを立てた。夢の大阪満喫コースだ。
というわけで三月某日。長女を連れて日本橋に行き、姪と甥を待つ。
ちゃんと時間通りに現れる姪と甥。彼らのおむつを取り替えていた叔父としては、おお、あの子らが電車を乗り継いで京都から大阪まで来られるようになったか……と感無量。
時間まで少し時間があったので周辺をぶらぶら歩いてたこ焼きを食う。こういう大阪らしいこともしとかないとね。
で、笑いの殿堂なんばグランド花月へ。ここの向かいにあったワッハホールや、かつて存在した心斎橋筋二丁目劇場には行ったことがあったけど、なんばグランド花月はぼくも初めて足を踏み入れる。立派な劇場だなあ。
まずは漫才。出番は、囲碁将棋、ぼる塾、ゆにばーす、2丁拳銃、まるむし商店、大木こだま・ひびき、プラスマイナス。
さすが、みんなおもしろい(まるむし商店は滑舌が衰えていて聞き取れない箇所が多かったが)。テレビで観るのとはちがい、観客にアンケートをとったり、拍手を要求したりして盛り上げてくれる。舞台上と客席との一体感。これぞライブの楽しさ。
中でも出色だったのは2丁拳銃。この日いちばん笑いをとっていたし、小学生たちも笑いころげていた。老若男女を笑わせるすばらしい漫才だった。絵描き歌や童謡などわかりやすい題材だったから、というのもあるんだろうけど。
童謡ネタ部分については二十年以上前からやっているネタだけど、今観ても同じように笑える。やはり2丁拳銃は漫才師なのだ。彼らが東京へ行かずにずっと大阪で漫才を続けていたら今頃大阪を代表する大漫才師になっていたのかもしれないな……と実現しなかった未来について想像してしまう。
漫才の後は新喜劇。こちらもおもしろかった。子どもたちも大笑い。漫才よりもコントのほうが子どもにはわかりやすいよね。
ぼくが感心したのは内場勝則さんの動き。ずっとキビキビ動いていて、遠くから見ても動きがわかりやすい。自分がメインのときだけでなく、他の出演者が話したりボケたりしているときもずっとキレのある動きをしていた。さすがはベテラン。舞台人だなあ。
こういうのはテレビではわからないので、内場さんの動きの良さを発見できただけでも観にきた甲斐があった。
劇場を出て、天王寺へ。串カツを食う。某・テーブルに油があって串カツを自分で揚げられるチェーン店だ。本格的な串カツ屋より、子どもにはこっちのほうがいいのだ。チョコレートフォンデュやソフトクリームも食べ放題だからね!
食後はてんしば(天王寺公園)のPANZAへ。ここでボルダリングに挑戦。三人とも、本格的なボルダリングはほぼ初挑戦。ぼくは十年ぐらい前にやったことがあるが、そのときは生身で登るものでせいぜい三メートルぐらい。今回は命綱をつけて登るので、七~八メートルはあるだろうか。いちばん上まで行くと二階建て住宅の屋根ぐらいの高さになる。
子どもたちははじめてのボルダリングなのでおそるおそる登ってゆく。こわい、こわいと言いながら中ほどでリタイア。
どれ、おっさんがお手本を見せてやろうと壁にしがみつくと、ふくらはぎに嫌な感覚。やばい、脚がつりそう。若くないんだからちゃんとストレッチするべきだった。
それでもなんとかしがみつくが、壁がぬるぬるすべる。前の人の汗が残っているのだ。こえー。以前にボルダリングをやったとき、近くにいた女性がおりるのに失敗して膝を強打し救急車で運ばれていたことをおもいだす。とにかく怪我だけは避けたい。
ということでぼくも八分目でリタイア。体力や握力の衰え以上に、「八分目までいったけど万一怪我をしたらいやだからリタイア」という選択をするようになった自分に年齢を感じる。
子どもたちは徐々に慣れてきて、すいすい登るように。たまたま最初に登ったのがむずかしいコースだったようで、他のコースはわりとクリアしていく。特に八歳の甥はサルのように身軽で、ぱっと壁にとりつくとひょいひょいひょい、っと登ってゆく。いけるかいけないかギリギリ、みたいなところでも退却という選択をせずに果敢に上を目指すところが若さだ。見ているとはらはらするが。
ぼくは数回登っただけで、あとはカメラマンに専念。おっさんなので自分がやるよりも子どもの撮影をするほうが楽しいのだ。
ボルダリングの後は、芝生で休憩をして、新世界へ。そろそろ子どもたちを帰らせないといけないので、ぶらぶら歩いて射的だけさせる。
新世界は観光客向けの店が多く、飲食店以外にも、ゲームセンター、射的、弓道体験、輪投げなどいろんな遊技場がある。姪は「なんかお祭りみたいやなー」と物めずらしそうにきょろきょろしている。「ここは一年中こんな感じやで」と教えると「一年中お祭りやってるなんてすごい!!」と目を輝かせていた。
そうかそうか、と連れてきたおっちゃんとしても満足そうに歩いていたのだが、ふと姪が顔をしかめて「そういや大阪ってタバコ吸う人めちゃめちゃ多いな」と漏らした。
いや、このあたりが特にそういうところなのであって、決して大阪全体がそういう街ではないんだよ……と言い訳がましく説明する叔父さんなのであった。
〝そういうところ〟を歩く子どもたち |
0 件のコメント:
コメントを投稿