2023年3月30日木曜日

【読書感想文】堀本 裕樹『桜木杏、俳句はじめてみました』 / 小説部分が蛇足な小説

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桜木杏、俳句はじめてみました

堀本 裕樹

内容(e-honより)
母親に連れられて初めて句会に参加した、大学生・桜木杏。俳句といっても、五・七・五で季語を入れればいい、くらいしか知らなかった杏だが、挑戦してみると難しいけど面白い。句会のメンバーも個性豊かな人ばかりで、とりわけ気になるのは爽やかなイケメン・昴さん。四季折々の句会で俳句の奥深さを知るとともに、杏は次第に恋心を募らせて…。


 俳句啓蒙小説。

 以前読んだ某歌人の「短歌啓蒙小説」がひどい出来だったので嫌な予感もあったのだが、予感が的中してしまった。


 キャラクターがとにかくダサい。

 特に主人公。いかにも〝おっさんが描いた女の子〟って感じだ。

 イケメンが大好きで、でも誰にでも優しくて、元気で明るくて前向きで、ちょっとしたことにドキドキして、親に対する感謝の気持ちを忘れなくて、おっちょこちょいで、感受性豊かで、好きな人に対してひたむきで……と、とにかく人間としてつまんない。朝ドラのヒロインみたいでまるで人間味がない。

 そのほかの登場人物も、つまらない冗談ばかり飛ばすおっさんとか、クセの強い銀行員とか、必ず語尾を伸ばす話し方でずけずけとものを言うギャルとか、かっこいい俳人先生におネツのおばちゃんとか、ザ・ステレオタイプ。

 俳句は言葉の選択が大事だ、なんて登場人物に言わせてるくせに、あつかましいおっさんには「〜でんな」「〜でっせ」なんてオーサカ弁(本物の大阪弁ではなくフィクションの世界にしか存在しない嘘の方言)を使わせるのはどうなのよ。言葉を大事にしなさいよ。

 俳句のおもしろさを伝えようとしてるんだけど、俳句やってるのってこんな感性の人なのか、とおもってしまう。逆に俳句を貶めてるんじゃないの?


 登場人物だけでなく、ストーリーも退屈。

 すべてのストーリー、すべての台詞が「俳句の楽しさを伝えるためだけ」に用意されたものなんだもの。説明台詞ばっかり。句会だけじゃなく、他の場面でも何かあれば「これは俳句の世界では~」「この季語は~」といちいち説明する。

 そういや昔、友人がパチスロにドハマリしてて、何の話をしても「そういやパチスロでも~」「それってパチスロでいうところの~」とパチスロの話ばっかりしてた。それまではちゃんと他人の話に耳を傾けるやつだったので、人の話を聞かないというよりパチスロのことしか考えられなくなってたんだろうな。それといっしょ。

 こんなやつが現実にいたら嫌われるだろうなあー。


 これは小説じゃなくて教科書だね。教科書にもおもしろいものとそうでないものがあるけど、これは後者。




 俳句の話はたしかに勉強になることも多かったので、それだけに小説部分のつまらなさが目立ってしまった。小説部分が完全に邪魔。

 ふつうに俳句の教科書を書いてくれたほうがよかったな。


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