女子校育ち
辛酸 なめ子
自身も女子高出身者である著者が、自身の体験、卒業生、在校生、教員などの証言をもとに「女子校」について書いた本。
ぼくは男だし、ずっと共学に通っていたし、近隣に女子校もなかったので、女子校なるものにはまったく縁がない。
漫画『女の園の星』程度の知識しかない(もちろんあれがリアルとはおもってない)。
男子校に関しては行ったことないけど、だいたい想像つくんだけどね。男しかいなかったらたぶんこうなるんだろうな、ってのが。でも女子に関してはイメージすら湧かない。
そんなわけでこれまで女子校について思いをめぐらせたことすらなかったのだが、娘がひょっとしたら中学受験をするかも、さらに近所にはほどよいレベルの女子校がある、ということになって突如身近な話として立ち上がってきた。
娘に「女子ばっかりの学校と男子もいる学校とどっちがいい?」と訊くと「どっちでもいい」とのこと。まあ、共学の環境しか知らないから女子校って言われてもイメージできないよねえ。
ということで『女子校育ち』を手に取ってみた。
(以上、決しておっさんが女子校生ってどんなんじゃいゲヘヘという下心で読んだんじゃないですよという長い言い訳)
生活指導について。
ここまで掃除に力を入れるのは女子校特有の話ではなく、単に厳しい学校かどうかによるんだろうけど。
とはいえ男子校だと「あらゆる面に厳しい学校」はあっても「掃除や家事にのみ特に厳しい学校」ってのはないだろうから、女子校らしい話なのかもしれない。
ここで紹介されている学校は卒業してからもついつい掃除をせずにはいられないほど掃除の習慣が身につくらしく、ものがあふれすぎて引き出しがひとつも閉まらない娘の机を見ているぼくとしては「こういう学校に行って掃除のできる子になってくれたらいいな……」との思いを隠せない。まあぼく自身がぜんぜん片付けのできない人間なのでまずおまえが改めろって話なんだけど。
制服について。
このへんは女子ならではだよなあ。
高校のとき、同じクラスの女子が「ほんとは○○高校に行きたかった」と言っていた。そこはぼくらの学校より偏差値の低いとこだったし遠かったので「なんで○○に行きたかったん?」と尋ねると「制服がかわいいから」との答えが返ってきて仰天した。そんなことが学校を選ぶ基準になるなんて……と、おしゃれとは無縁だったぼくからすると信じられないことだった。冗談で言っているのかとおもったぐらいだ。
でも、制服で学校を選ぶ子って女子の中ではめずらしくないらしい。そういえば、人材紹介会社の営業から聞いたけど、女性は転職時に「オフィスのきれいさ・新しさ」を重視する人が多いらしい。個人的には、よほど汚いとかくさいとかじゃなければなんでもいいけど、女性はそうでもないみたいだ。つくづくちがう人種だなと感じる。
女子校に進学するメリットについて。
「容姿において差別されない」ことの利点については、ほんとその通りだとおもう。
申し訳ないけど、ぼくも学生時代、女子のことはほとんど容姿でしか見てなかったもん。
「見た目がかわいくないけど話していておもしろい子」はいたし、そういう子とも仲良くしていたけど、「かわいい子」とはまったく別枠の存在だった。見た目が良くない子は、どんなに優しくて、どんなに気が合っても、異性としては「つまんないけどかわいい子」を上回ることはなかった。
特に中学生なんか「美女と野獣」カップルはいても、その逆はまずいないよね。
もうちょっと大人になったら容姿以外の部分も見えるようになってくるんだけどね。「あんまりかわいくないけど付き合ったら楽しいだろうな」とおもえるようになる。でも男子中高生時代は「女はかわいさがすべて」だったな。周囲もやっぱりそんな感じだったから、かわいくない子と付き合ってたらダサイ、みたいな風潮もあった。ほんとひっどい話だけどさ。
否応なく美醜競争に巻き込まれるのはかわいそうだ。ブスはもちろん、美人もまた。
そんなわけで「容姿において差別されない」という一点だけでも、娘を女子校に行かせるメリットは十分にあるとおもう。
それにしても。
とにかく著者の視点が下品。女子校に通う中高生を取り上げて、やれ処女率がどうだ、やれ男ウケがどうだ、やれフェロモンが出ているだ、やれモテなさそうだ、やれ遊んでそうだ、と下世話きわまりない。
「男が書いたらセクハラだけど女性だからセーフ」とかおもって書いてたんだろうな。じっさい、この本が刊行された2011年はまだそういう認識が一般的だったし。
でも令和の感覚で読むとずいぶん気持ち悪い。自分が中高生の頃、大人から(男女問わず)そういう目を向けられたら気持ち悪く感じただろうに。
よくちくまプリマー新書がこんなひっどい本を出してたなとおもう。三流週刊誌みたいな切り口だもん。
もっとも十年以上前の本を取り上げて「感覚が古い」と糾弾するつもりはなくて(それはあまりにずるい)、ただただ「2011年当時はこういう感覚が許されてたんだなあ」と隔世の念に駆られる。人々の価値観って変わってないようで変わってるんだなあ。
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