そこそこ本を読むほうだ。
「読書が趣味なんですね。月にどれぐらい読むんですか」
「十冊ぐらいですね」
「へーすごい。私はぜんぜん読んでませんね。もっと読みたいんですけど、どうやったらそんなに本を読めるんですか?」
みたいな会話をよくするんだけど、最近気づいた。
「どうやったら本を読めるんですか」という質問をする人は、「本を読む方法」じゃなくて「本を読まない理由」を探している。
読まない人は「時間がなくて本が読めない」なんてことを言う。
嘘だ。
そりゃあ超大物政治家とか売れっ子タレントとかだったら「仕事と食事と風呂と睡眠と車移動が生活のすべて」みたいなスケジュールを送ってるかもしれないが、ほとんどの人はそんなことはない。
「時間がなくて映画館に行けない」「忙しくて旅行に行けない」ならわかる。映画や旅行はある程度まとまった時間を必要とするから。
でも本なんていつでもどこでも読める。ぼくは三十秒あれば本を読む。電車の待ち時間、電車の中、飲食店で注文してから、食事をしながら、食後にお茶を飲みながら、仕事で客先訪問して担当者が出てくるまでの時間、着替えをしながら、風呂、寝る前。それぞれ数十秒~ニ十分ぐらいだけど、合計すればそこそこの時間になる。一ヶ月で十冊ぐらいは読める。
読まない人は、その時間にスマホでゲームをしたり、動画を観たりしている。時間がないわけじゃない。本を読める時間を他のことに使っているだけだ。
本を読む気のある人は 「どうやったら本を読めるんですか」なんて質問をしない。そんなひまがあったら読んでる。
読書に限った話ではない。「英語勉強したいなー」とか「体鍛えないとなー」とか「マラソンでもしよっかなー」なんて言う人は、ほんとにやろうとおもってない。なんとかして〝できない理由〟を探しているだけだ。
「どうやったら本を読めるんですか」と質問する人が望んでいる答えは、
「休みの日に三時間ぐらい時間をつくるんですよ。カフェにでも行ってゆっくり読むと集中できます」だ。
こう言われたら安心して「あーいいですねー。でも最近忙しくって、なかなかそんな時間とれないですねー」と言える。
まちがっても「読みたいなら読めばいいじゃないですか。一日五分でも読めば、一ヶ月で一冊ぐらいは読めるでしょ」なんて正しいことを言ってはいけない。読みたくないんだから。
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