星野 智幸
なんというか……。
表現しづらい小説だな。
序盤は商店街立て直し小説みたいな感じの導入だったので、徐々にサイコホラーになってきて戸惑ってしまった。え? なにこれ? この武士みたいなしゃべり方する女の人は何なの? って感じで(ちなみにその武士みたいなしゃべり方の女性はフェードアウトして途中からストーリーにほとんどからまなくなってくる。ほんとなんだったんだ)。
決してうまくない小説なんだよね。武士みたいな女の人もそうだし、悪の黒幕的ポジションの図領も最後はほったらかし。登場人物が多いわりに細かく描ききれてないので「この人誰?」となってしまう。
視点がころころ変わるんだけど、そういう構成の小説を書くにはちょっと技量が追いついていないような……。ストーリー展開も急すぎて「極限状態でもないのに人間がここまでかんたんに洗脳されるか?」という気になる。
と、決して巧みとは言えない小説ではあったけど、しかしなんというかすごいパワーがあった。粗削りだけど、熱量とかオリジナリティとかはびんびん感じる。引きこまれた。
登場人物の言動とかはめちゃくちゃなんだけどね。ぜんぜん筋道が立ってないし。
「洗脳されている側」がめちゃくちゃなのは当然として、「洗脳されている連中と闘う人々」のほうもだいぶヤバい。どっちもおかしい。いかれてる人しか出てこない。
作者もどっか狂ってるんじゃないか。そう思わせる力がある。もしくは本当に狂っているか。
矢部 嵩『魔女の子供はやってこない』を読んだときにも同じことを感じた。これだけ粗いものをちゃんと活字にする出版社もすごい。
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