2020年11月11日水曜日

【読書感想文】本を双眼鏡で探す家 / 磯田 和一『書斎曼荼羅 1 本と闘う人々』

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書斎曼荼羅 1

本と闘う人々

磯田 和一

内容(e-honより)
有名作家や翻訳家、脚本家、大学教授といった、日頃本と闘っている職業人を取材し、その状況をイラストで紹介。

 京極夏彦、佐野洋、大沢在昌、山田風太郎など、本に関わる人々の〝書斎〟をイラストと文章で紹介した本。

 妹尾河童氏が『河童が覗いた〇〇』というシリーズの連載をやっていたが、あんな感じ。


 ぼくも学生時代は数千冊の本を所有していて、本棚に入りきらないので段ボールに入れて押し入れに積みあげていたら押し入れの中板がひしゃげてしまったことがあった。

 自分もなかなかの蔵書家だとおもっていたが、『書斎曼荼羅』を読むとぼくの蔵書なんて富士山のふもとにある公園の砂山ぐらいのレベルだったと思い知らされる。

 しょっぱな(関口苑生氏・書評家)から、「本が多すぎてストーブが置けないのでガスコンロをつけっぱなし」「本が多すぎることが原因で妻が出ていったので広いマンションに引っ越す(が、引っ越し先でもやはりすぐ本だらけになる)」という強烈なエピソードに仰天される。

 すげえ……。
 しかしガスコンロつけっぱなしとかあぶなすぎるだろ……。これだけ本があったら一度火が付いたらあっという間に燃え広がるだろうし。


 阿刀田高(作家)のエピソードもすごい。

「すごく高い本棚をつくったが、上のほうのタイトルが見えないので本を探すときは双眼鏡で探す」というもの。

 絵があるけど、高い本棚がずらりと並んでいて、図書館みたいな書斎。いや図書館よりもはるかに本の密度は高い。




 いちばん度肝を抜かれたのは、翻訳家・評論家の藤野邦夫氏。


 なんと床に本が敷きつめられているのだそうだ。
 これはどうなんだろう……。たいていの本好きなら、どんなに本が家にあふれかえっててもぜったいに「本に乗る」ということはしないとおもうが。
 こういうことできる人もいるんだなあ。ぼくはこの家に入りたくない。




 井上ひさし氏の『本の運命』というエッセイに、こんな文章が出てきた。

 一番買い込んだのは、朝日新聞で文芸時評をやってた頃でした。たまたまその頃、僕の『吉里吉里人』がびっくりするほど売れて、印税がどんどん入ってきたせいもあった。
 気が大きくなって、「よしっ、世の中に出てる本で、文芸時評の対象になりうるものは全部買ってみよう」と決意して、一年間続けました。出入りの本屋さんに、小説と評論と漫画をとにかく全部取ってくれと頼んで。これは月に四、五百万円かかりました。
 お陰で、印税は本代で消え、税金を払うために借金をして、払い終わるのに五年ぐらいかかったでしょうか。これがきっかけで、本がたくさん売れるのが怖くなった(笑)。
 さすがにこんな買い方は続きませんでしたが、いまでも本代が月に五十万円ぐらいになるでしょうか。ですからうちの、エンゲル係数じゃなくて、本にかかる係数はかなり高い(笑)。

 上には上がいるものだ。

 本の重みで床が抜けた、なんて話を聞くとあこがれると同時にちょっとあこがれる。
『書斎曼荼羅』に出てくる人たちは、地震で本に埋もれて死んだらむしろ本望なんだろうな。

 しかし最近は電子書籍が普及したからねえ。本をたくさん読む人ほど電子書籍のほうがメリットあるからね。もうこんな書斎もなくなっていくんだろうね。


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