数字のウソを見破る
中原 英臣 佐川 峻
共著だが、二人が共同して執筆しているわけではなく、前半は医師である中原氏が医療分野について書いて、後半は科学評論家である佐川氏が経済や社会の諸々について語っている。
ボリュームが足りないので二人の本をむりやりまとめて合本にした、という感じの作り。
そして前半の中原氏のパートはいまいちだった。
「日本では〇〇という基準で医療をやっているが、欧米では□□という基準が使われている。だから〇〇は適切でない!」
みたいな論調なのだが、正直素人にはそれだけ読んでも〇〇と□□のどちらが正しいのかわからない。日本の基準のほうが正しくて欧米のほうがまちがってるのかもしれないし。
「厚労省が出した数字をそのまま信じるな」というのは首肯できるが、だったら中原氏の出した数字だってそのまま信じられない。
結局この本を読んだだけだと「厚労省は〇〇と言っているが、反対意見もある」ということしかわからないんだよね。
医療に関しては万人に通用する正解がない以上、ちょっと疑わしい数字でも「数字のウソ」とまでは言い切れないんじゃないかな。
佐川さんのパートはおもしろかった。内容は古かったけど(2009年刊行なのでしかたないけど)。
気象庁の天気予報が雨を降るかどうか的中させる確率は約85%だそうだ。
85%と聞くとけっこう当たってるなという気がするが、2008年に東京で雨が降ったのは114 日だけ。
堀井憲一郎さんが『かつて誰も調べなかった100の謎』という本で、天気予報が当たってるかどうかを検証していた。
その調査によると、雨が降った31日のうち、7日前に「7日後は雨」と的中させていたのはたったの1回だけだったそうだ。的中率は驚きの3.2%。ゲタを転がすよりはるかに的中率が低い。
そして今でもほとんど天気予報の的中率は上がってないらしい。週間天気予報は基本的に当たらないのだ。
そしてこの先も週間天気予報の成績が向上する可能性はほとんどない。どれだけコンピュータが進化しても、天気のような複雑なものを正確に予測するのはできないらしい(カオス理論)。
だから「週末の天気は?」と訊かれたときは天気予報など見ずに「晴れるよ」と言っておけばいい。2/3以上は当たるから。
そのほか、地球温暖化、株のナンピン買い、失業率、出生率、平均寿命など雑多な話。
それぞれ興味深いんだけど、いかんせんテーマが多岐にわたりすぎているのですごく浅い。
「食品が製造年月日表記から賞味期限表記になったのは外国からの圧力によるもの」とかテレビ番組で紹介するぐらいならおもしろい内容だけど、本で読むにはものたりない。
根拠とか洞察とかがほとんどないんだよな……。最近の池上彰さんの番組みたい。
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