キャラクター・パワー
ゆるキャラから国家ブランディングまで
青木 貞茂
ゆるキャラ、マスコットキャラクター、LINEスタンプなど〝キャラクター〟がなぜ日本で特に好まれ、広く使われるのかについて考察した本。
たしかに身のまわりにはキャラクターが蔓延している。子ども向け商品だけでなく、企業も自治体も政党もキャラクターを使っている。
他の国にもキャラクターはあるが、日本とアメリカではキャラクターの性質が少し違うようだ。
なるほどね。たしかに日本のキャラクターには無表情なものが多い。サンリオキャラはだいたい無表情だし、リラックマ、すみっコぐらし、くまモン、しまじろうなど表情に乏しいキャラが多い。
また日本生まれではないが日本で人気のミッフィー(ナインチェ・プラウス)はまったくの無表情だし、ムーミンもピーターラビットも表情はあまり変わらない。
アメリカ生まれのディズニーキャラクター、トムとジェリー、スヌーピーなどが喜怒哀楽をむきだしにするのとは対照的だ。
まあ日本でなじみがないだけで、アメリカにもゆるキャラみたいな表情に乏しいキャラがいるのかもしれないけど。
日米の有名人形劇を見比べてみると、その差は明らかだ。
ひょっこりひょうたん島 (NHKアーカイブス より) |
SESAMI STREET (SESAMI STREET JAPAN より) |
人形劇なのにみんな笑顔(しかし人形劇の人形にこんなに表情があったら、怒りや悲しみの表現がしづらくないのだろうか?)。
企業やブランドや自治体にキャラクターがいるのがあたりまえになっているから何ともおもわないけど、よくよく考えると公式キャラクターというのは奇妙なものだ。
キャラクターがいようがいまいが製品の品質にはなんの関係もない。子ども向けのお菓子ならキャラクター目当てに買う人もいるだろうが、たとえばぴちょんくんがいるからといってダイキン工業のエアコンを選ぶような人はまずいないだろう。
それでもキャラクターは多くの団体が採用しているし、我々もそれを当然のように認知している。
『キャラクター・パワー』によれば、キャラクターには以下のような力があるという。
たしかにね。
熊本の魅力を言葉や文章で長々と説明されるより、くまモンが名産品を持って立っているほうがずっと伝わりやすいし、記憶にも残りやすい。
ネット上の解説記事なんかでも、解説役Aのアイコンと聞き手役Bのアイコンがあって、会話形式で解説する……なんてのもよく見る。あれも、キャラクターがあることでむずかしい話が頭に入ってきやすくなる効果がある。
キャラクターには人間型や無生物型などもあるけど、なんといってもいちばん多いのは動物型だ。
動物には特有のイメージがある。
犬だったらかわいさだけでなく忠実な相棒といったイメージがあるし、ネコやペリカンが運送会社のキャラクターに採用されているのは「大事に運ぶ」イメージによるものだろう。
動物キャラクターを付与することで、対象に特定のイメージを持たせることができる。上で挙げられているように、マイナスのイメージを与えることにも使える。
……といった話が続いて、一章『キャラクターに依存する日本人』あたりは楽しく読んでいたのだが、だんだん辟易してしまった。
なんだか、論理が強引なんだよね。「〇〇というキャラクターが成功したのは××だからだ」「このキャラクターにはこんな心理学的効果がある」みたいな話がたくさん出てくるんだけど、定量的な裏付けはまるでない。
結局ぜんぶ著者の推量なんだよね。「キャラクターには強いパワーがあるから活用すべき」という結論が先に決まっていて、その結論にもっていくためにいろんな理屈を並べ立てているという感じ。まったくもって、理屈と膏薬はどこへでもつくなあという感想。
基本的に紹介されているのは成功事例だけだしね。たしかにキャラクターを使ってうまくいった例は多いけど、キャラクターを使ったけどうまくいかなかった事例はその数百倍あるわけじゃない。たとえばくまモンやひこにゃんは成功したけど、金をかけて作ったのにほとんど効果を生んでいない地方自治体のマスコットゆるキャラはごまんとある。
そのへんに目をつぶって「キャラクター・パワーすごい!」ってのはちょいとずるいぜ。
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