ATMをだますための紙切れ、というのを考えたわけですよ。
ATMがどうやって紙幣を判別しているのか詳しくは知らないが、サイズ、磁気、紋章、すかしなどをチェックしているのだろう。それらはすべてクリアしている紙切れがあるとする。ただし見た目はまったくちがう。たとえば、でかでかとウンコの絵が描かれている。
要するに「人間にはとうてい紙幣に見えないけど、ATMは一万円札と誤認してしまう紙切れ」だ。
このウンコペーパーを製造して、ATMのチェックをかいくぐって入金することができたとして、直後に出金して本物の紙幣をせしめた場合、これは罪になるのだろうか?
刑法第148条には「通貨偽造及び行使等」としてこう書かれている。
はたして、でかでかとウンコが描かれた一万円札と同じサイズの紙切れは、「偽造した紙幣」となるのだろうか?
ま、なるだろう。まちがいなく。ウンコペーパーをATMにつっこんで、まんまと機械を騙してお金を手にしたのに、官憲が「あーこれはウンコペーパーですね。だったらセーフですね。銀行さんには災難だったとおもって諦めてもらうしかないですね」と許すとはおもえない。
というわけでまちがいなく捕まるだろうが、そうなると国家が「このウンコペーパーは一万円札を模したものである」と認めたことになる。通貨偽造の罪で問うためにはある程度似ていることが必要になるからね。ぜんぜん似ていないお金では罪に問えない(そうじゃないとお金のおもちゃを作っているメーカーがみんな処罰されてしまう)。
それはもう「このウンコは福沢諭吉先生のお顔によく似ていらっしゃる」と国が認めたことになるんじゃないの!?
そうなると慶応義塾大学の関係者もだまってはいない。「福沢諭吉先生がこんなウンコに似ているとは失礼千万。福沢先生はもっと凛々しいウンコ、いやお方にあられるぞ!」と怒鳴りこんでくるにちがいない。
国としても弱ってしまう。なにしろ慶応義塾大学OBは政財界のあちこちで大きな顔をしている。それがみんなウンコの子弟だったということになれば日本社会は大混乱だ。いくら天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずとはいえ、ウンコまで人と同等に扱うわけにはいかない。
こうなると刑法第148条の通貨偽造罪の適用はあきらめざるをえない。だがウンコペーパーをATMにつっこんで金をだましとったやつを見逃すわけにはいかない。ウンコは入れるものじゃなくて出すものだ。
なんかないか、なんかないか、と警察総出で見つけてきたのが昭和22年施行の「すき入紙製造取締法」である。この法律にはこうある。
要するに、紙幣とよく似たすかしを入れた紙を製造しただけで罪に問えるのだ。これなら、紙切れの表面が紙幣と似ているかどうかは問題にしなくていい。
ああよかった。これで慶応一門を敵にまわすことなくウンコペーパー犯をしょっぴけるぞ。
と胸をなでおろしたのもつかのま、「すき入紙製造取締法」の第3項にはこうあるではないか。
刑法第148条刑法の「無期又は三年以上の懲役」と比べて、ずいぶん量刑が軽い。うーんしかし、この際量刑のことについては目をつぶるしかあるまい。慶応派閥をウンコ派にするわけにはいかないんだし。なるべく大事にしたくないから五千円の罰金で許してやろう。
というわけで、ウンコペーパーをATMにつっこんで一万円をだましとった男は、五千円の罰金を払って解放されたのでした。とっぴんぱらりのぷう。
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