2021年7月21日水曜日

ファスト映画と映画予告編

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 少し前の話になるが、ファスト映画を公開していた人が逮捕された、というニュースを目にした。

 ぼくはその記事でファスト映画なるものを知った。
 ファスト映画とは、映画を10分程度に短縮してあらすじをつけたものだそうだ。
 昔ニコニコ動画で『時間がない人のための~』って動画が流行っていたが、あれだ。

 存在すら知らなかったぐらいなのでぼくはファスト映画を観たことはないが、まあ現代の需要にかなっている動画だなとおもう。

(断っておくが逮捕された人をかばう気はない。逮捕された人はYouTubeで収益を得るために権利者に許可なく映画を切り貼りしていたらしいから完全アウトだ)


 手っ取り早く結末を知りたい、はずれを引きたくない、みんながおもしろいという映画だけを知りたい。
 そういう欲求はどんどん強くなっている。
 小説でも映画でも「感動の物語」「号泣必至」「あっと驚くどんでん返し」「最後の一ページで衝撃を受ける」みたいなちゃちいコピーがあふれている。

「うるせえ。感動するかどうかは見てから自分で決めるわ」とおもうぼくのような人間は少数派なのかもしれない。
 まあぼくも本を買う前にAmazonで星の数をチェックしたりするので、他人の評価を気にしてないわけじゃないんだが……。


 それはそうと、違法に作られたファスト映画がYouTubeにはびこっていると聞くと、これは悪いやつがいっぱいいるというより、映画製作会社の怠慢なんじゃないかとおもってしまう。

 手間暇かけてファスト映画が作られるのは、それが再生されるからだろう。
 需要はある。時間をかけずに映画をダイジェストで観たいという人がいっぱいいる。

 だったら違法アップローダーではなく、権利者がそれに応えてやればいい。


 音楽でもマンガでもお笑いでも、どんどん無料配信でお試しをさせている時代だ。そっちのほうが売れるから。
 あたりまえだ。内容がわからないものは買いづらい。無料版で興味を持ってこそ有料版を買うのだ。ぼくはラーメンズのDVDを全巻持っているが、最初に観たのはニコニコ動画だかYouTubeだかに上がっていた違法アップロード動画だった(今はラーメンズのDVDの内容は全部公式がYouTubeに載せてるけどね)。

 だから映画も、DVDを販売している会社が無料ダイジェストを作ればいい。それによってDVDが売れたり、同じ監督や俳優の作品が売れたりするだろう。


 え? 映画には既に予告編があるって?

 ……あのさあ。
 そうだ。おもいだした。前から言おうとおもってたんだった。
 映画の予告編。あれ何?

 聞くところによると配給会社が勝手に作ったりしてるらしいね。
 あれたいていひどいね。無茶苦茶だよね。内容とぜんぜん関係なかったりする。
 前半のぜんぜん重要でない台詞が、まるで映画全体を決定づける重要な台詞であるかのように使われたりする。
 へたすると本編の夢のシーンとかが、予告編ではまるでクライマックスシーンであるかのように使われていたりする。大嘘じゃん。

 まあ、ちょっとだけ制作側の事情もわかる(ちょっとだけね)。
 映画の予告編は、劇場で他の映画の公開前とかテレビCMとかで使われる。つまり、予告編を観る人は、観ようとおもって観てるわけではない。強制的に予告編を見せつけられているわけだ。
 だから、ネタバレをするわけにはいかない。
「まっさらの状態で観たかったのにー!」と言う人もいるから、ネタバレには気を付けなくてはいけない。本当のクライマックスシーンを使うわけにはいかない。本当のクライマックスシーンを使ったら「ああ、ラスボスはこいつなんだ」とか「最後は崖から落ちるんだ」とかバレちゃうからね。
 そこで苦肉の策として、前半~中盤の「ちょっと盛りあがるけどさほど重要ではないシーン」を、さもクライマックスシーンであるかのような予告編にするんだろう。
 作り手の苦労はわかる。だからある程度はしかたない。かつては


 そう、「予告編はいろんな人が見るからしかたないよね。ネタバレしてほしくない人も目にしちゃうわけだから」で済まされてたのは昔の話。
 今はそうではなくなった。
 YouTubeの動画は(インストリーム広告と呼ばれる5秒経つとスキップ可能な広告も含めて)、途中で停止・スキップができる。
 ユーザーの意思にかかわらず半ば強制的に見せられる&停止不可能な映画館の予告やテレビCMと違い、YouTubeの動画は避けられるし停止できる。

「観たくなければ観なければいい」が通用するのだ。
 だから予告編の中にちょっとぐらいのネタバレは入れてもいい。もちろん謎解きがおもしろさの中核を占める作品ではだめだが、アクション映画やサスペンス映画であればだいたいのストーリーを説明してもさほどおもしろさは損なわないだろう。むしろ「こういうストーリーだったら観に行こう」という人が増えるんじゃないだろうか。

 あらかじめどんな話か知った上で観たい人はたくさんいるのだ。


 違法なファスト映画がはびこるのは、権利者の怠慢があるんじゃないだろうか。
 権利者が公式にファスト映画を作ってYouTubeにアップすればいい。収益にもなるし、DVDの売上にもつながるだろう。
 それをしないから「ニーズはあるのに供給がない」ことになり、違法なアップローダーが現れるのだとおもう。

(これは素人の意見。じっさいは監督や役者の契約で「ファスト映画をつくってYouTubeにアップロードする」ことまで規定していないことがほとんどだろうから、そうかんたんにはいかないんだろうけど……)


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