2021年1月15日金曜日

【読書感想文】国の金でばかなことをやれる場 / 酒井 敏 ほか『もっと! 京大変人講座』

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もっと! 京大変人講座

酒井 敏 ほか

目次
はじめに ようこそ!京大変人講座へ!
1 熱帯生態学の教室 アリ社会の仁義なき掟―女王アリと働きアリの微妙な関係(昆虫の世界は、知らないことだらけ!
2 科学哲学の教室 曖昧という真実―割り切れないから見えてくる、グレーゾーンに潜む可能性(デカルトは「すべてを疑う」ことを徹底できなかった!?
3 アート&テクノロジー学の教室 アートはサイエンスだ!―アーティストと研究者、二足のわらじで見つけた日本の美(音の振動から生まれたアート
4 宇宙物理学の教室 そうだ!宇宙に行こう!―手話と学問の意外な関係性(ブラックホール、この摩訶不思議な世界
一番小さい学科を選んだら、天文学科だった!? ほか)
5 SUKIる学の教室 「できない」から「できる」んだ―「他人事」になる社会の中で、自分の唯一性を持って生きる(「できない」って、ダメなの?
おわりに 「本能の声」に気づく、従う 


 前作『京大変人講座』のほうがおもしろかったな。

 アリの話はおもしろかったけど書いてあることはごくごくふつうのアリの生態の話だった。ぼくもけっこうアリは好きなので『クレイジージャーニー』の島田拓氏の回とか『香川照之の昆虫すごいぜ!』のアリの回とかを観ていたので、既に知っていることばかりだった。
 アリのことを知らない人からしたらめずらしい話かもしれないけど、「変人講座」というテーマにはあんまりそぐわない気がするな。
「変なアリもいるから変人でもいい」ってのは持っていき方としてちょっと苦しいな。


『SUKIる学の教室』に関しては書いてあることがさっぱり理解できなくて、なんだこりゃ? ぼくの理解力が足りないのか? とおもっていたのだが、おしまいに越前屋俵太さんが「まったく意味がわからなかった」と書いてて安心した。ああ、ぼくだけじゃなかったのか。
 わからなくて当然、わからないことを楽しめ、という講義みたいだ。ふうむ。そういう意図か。最初に言ってよ。



 京大には「変人のほうがえらい、ふつうのやつはつまらない」という風土がある。少なくともぼくが通っていたときはまだそういう風潮があった。

 そして、私は真面目な人こそが常識を脱した変人になれると考えています。
 真面目な人=変人というと、意外に思われるでしょうか。でも私は、真面目な人ほど変人になると確信しています。
 真面目な人は「ちゃんと自分の頭で考えている人」であり、自分の頭で考えている人は、確実に変人になるのです。
 なぜなら、世の中の大多数の人は「世間体」や「常識」に流されて生きています。周りに流されるがまま、「みんながやってるから」という理由で周りに合わせた言動をとっていくうちに、「常人」になっていきます。
酒井 「研究」って言うとなんかかっこいいイメージがあると思いますけど、たぶん本人は、勝手におもしろがってやっているだけなんです。

越前屋 変人たちは「ねばならぬ」で動いているわけじゃなくて、ニコニコしながら研究してるわけだ。

伊勢田 周りの人とか指導教員が「それは研究じゃないよ」と止めたりすれば、「もっとスタンダードな研究をしよう」と考えるかもしれません。でも、京大では他の人と違うことをやっているのを見たら「おう、おもしろいからやれよ」「いいじゃん! いいじゃん!」と、むしろあおるような場合もあります。

越前屋 そうか! みんな止めないんだ。そういう意味では、京大は治外法権なのかもしれないですね。

酒井 もちろん「そんな研究に何の意味があるんだ?」と言い出す人も、いることはいます。だけど、そういう人たちに大きな力があるわけでもない。だから、あれこれ言われても「そんなもん放っておけばいいんだ」と、突っぱねることができるんです。

伊勢田 たしかに、そういうところがありますね。


 多くの学問ってそういうところから生まれるんだよね。ダーウィンだって進化生物学の謎を解き明かそうとおもって学問をはじめたわけじゃないだろうし。たいていの偉大な研究者がそうだろう。

 しかしそんな京大でも、ニュースなんかを見ているとどんどん「人に迷惑をかけないように意味のある行動をとりましょう」という方向に向かっていっているように見える。ちょっとずつだけど。
 国の金でばかなことをできる場所って日本にまだ残ってるんだろうか。どんどん「税金でくだらないことに使うなんてとんでもない!」というせちがらい世の中になっていってる。

 京大にはずっとバカ養成所であってほしいけど。


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