石川 伸一
テクノロジーの発展にともない、「食べること」はどう変わってきたのか、そしてこれからどう変わってゆくのかを大胆に予想した本。
この手の未来予測本は大好きなので、読んでいて楽しい。五十年後ぐらいに答え合わせをしたい。
我々がふだん「食と健康」について考えるとき、「食べ物」と「ヒト」についてしか考えない。こういう人はこれを食べるといい、というように。
だが、ヒトの体内で食物を分解・吸収するために働いているのは腸内細菌だ。
だから将来、腸内細菌をコントロールする方向に進歩すると著者は指摘する。
ふうむ。たしかに腸内細菌のマネジメントは欠かせないよな。
健康を考える上で「食べ物」と「ヒト」のことしか考えないのは、国家を考える上で「領土」と「資源や輸出入などモノの流れ」だけを考えて、国民を無視するようなものだよね。
ぼくらの身体の国民は細菌だ。
他の動物にはないヒトの特徴、といえばまずは「大きな脳」が思いうかぶが、「短い腸」もヒトの特徴だ。加熱調理をすることでエネルギーを効率的に摂取することができ、食事に長い時間をかけなくても大きな脳を維持できるようになったわけだ。
ってことは生野菜やフルーツばっかり食ってる人って脳の活動が鈍いのかな。たしかに極端な菜食主義者って脳の活動が鈍いイメージが
ぼくは太らない。
炭水化物が大好き。甘いものも好き。たいして運動もしない。
でも太らない。昔からずっと痩せ型で、四十手前になった今でもほとんど体重が変わらない。そういう体質なのだ。エネルギーの貯蔵ができないし消費カロリーが多い(=燃費が悪い)タイプ。
現代ではお得な体質だが、食糧不足の時代には真っ先に死んでしまうタイプだ。
だから「太らないためには糖質や炭水化物を控えましょう」なんて聞くと、アホじゃねえのとおもう。
もちろんダイエットには運動や食事制限が重要だが、それ以上に「体質」も大きな要素だ。
すぐ太るタイプと、ごはんや甘いものを食べても太らないタイプがいる。それを無視してダイエットや食事療法を語るなんて無意味。
未来では、「21世紀前半までの人はすべての人にいい食事があるとおもってたんだって。ライオンとシマウマに同じ餌を与えとけばいいとおもってたのかな」なんて言われてるかもね。
食生活が変わることに抵抗を感じる人も多いだろう。
コロナ禍で会食を控えましょうと言われていても、なかなか変えられない政治家も多い。
でも、人間の食生活なんてかんたんに変わるものだ。
我々は「家族そろって食事をするのが正しい姿」とおもいこんでいるが、「家族そろって食事」の歴史はすごく浅い。
「最近の家族は子どもの塾通いなどでみんなばらばらに食事をとっている! 個食だ! けしからん! 子どもの正常な発達が!」
なんて人がいるけど、一家そろって食事をしていた時期なんて日本の歴史からしたらごくわずかなのね。
「昔はよかった」系の人が理想とするのは昭和時代が多いけど、日本の歴史において昭和ってすごく異常な時代なんだよね。
専業主婦が主流だったのは昭和だけ、自由恋愛で結婚するのが多数派になったのも昭和、自分で職業を選ぶようになったのも昭和、人口が増えたのも経済が成長したのも二十世紀だけが異常なスピードだった。そもそも「伝統」を意識するようになったのが近代以降。
食生活なんか数十年でかんたんに変わる(その上さもずっと昔からそれが続いていたと信じこんでしまう)のだから、今世紀後半にはまったく別の食生活になっているかもしれないね。
すでにコロナ禍のせいでずいぶん変わったし。
その他の読書感想文は
こちら
0 件のコメント:
コメントを投稿