まだいるのかな。
小学校の前で映画の割引券を配ってるおっちゃん。
ぼくが子どものころは夏休み前になると現れた。
朝早くから校門の前に立って、投稿してくる子どもたちにドラゴンボールとかの映画の割引チケットを配っていた。
割引ったって50円引きだか100円引きだかでたいして安くなってないんだけど。
でも小学生はばかだから、カラーで印刷された紙に
「100円引き」
って書いてあるものを見て、
「この紙は100円の価値があるぜー!」
なんつって昂奮して集めてた。
おっちゃんはひとり一枚しかくれないから、校門を出たり入ったりして何枚ももらってるやつがいた。
そういうやつにかぎって映画観にいかないから無価値なんだけど。
でも男子小学生ってタダでもらえるもんなら病気でももらうって人種だから、「(映画を観にいく人にとっては)100円分の価値があるカラープリントの紙」をもらえることはめちゃくちゃうれしかった。
今でもあの類のおっちゃんいるのかな。
もういないかもしれないな。21世紀だもんな。
昔はどろくさい宣伝活動してたんだなー。
とおもったけど、よく考えたらあれはじつに効率的なマーケティング手段だ。
ぼくはWebマーケティングの仕事をしているけど、いちばん頭を悩ませるのは
「いかに狙ったターゲットだけに広告を配信するか」
だ。
たとえば弁護士が遺産相続の広告を出すとして。
・最近、親などの親戚が亡くなった(または亡くなりそう)
・遺産が多い
・親戚間でトラブルになっている(またはなりそう)
という条件をすべて満たしていないと、弁護士にとっては顧客になりえない。
トラブルにならないと弁護士に相談する理由がないし(司法書士とか税理士とかに頼んだほうが安い)、遺産が少なければ弁護士に相談したほうがかえって高くつく。
でも、条件をすべて満たしている人だけに広告を出すのはむずかしい。
「1億円 相続 トラブル」
みたいなキーワードで検索してくれたらいいけど、たいていの人はそんなに丁寧に検索しない。
「相続」「相続トラブル」「相続 相談」とかで検索する。
で、そのうち大半は弁護士にの顧客にならない。
相続額が少なかったり、親戚間でもめていなかったり、まだ親がピンピンしていたりする(芸能人が死んでその相続人が誰なのか知りたいだけ、なんて下世話なやつも多い)。
Web広告は基本的に配信した量に比例して料金が発生するから、関係ない人に配信すればするほど無駄なコストも増えることになる。
だからといって「1億円 相続 トラブル」で検索されたときだけ広告を表示する設定にしても、ほとんどクリックされない(おまけにそういうキーワードは競争も激しい)。
だから
「狙ったターゲットだけに広告配信をする」
ことができるかどうかが、マーケティングの成否のカギを握っている。
これはWebマーケティングにかぎった話ではない。
基本的にどの媒体でも、ターゲットじゃない人の目に増える回数が増えるほど広告の費用対効果は悪くなる。
「小学校の前で男子だけにドラゴンボールの映画の割引券を配る」
は、すごく精度の高いマーケティング手段だ。
的確にターゲットだけにアプローチできる。
たとえば「新聞折りこみで割引チラシを入れる」と比べてみると明らかだ。
折りこみなら、子どものいない家庭にも配られる。
子どもがいたとしても、子どもが目にする前に捨てられる可能性も高い。
すべて無駄になる。
テレビCMならもっと無駄が多い(近くに映画館のない地域にも配信されるしね)。
インターネットの時代になっても、小学生だけにアプローチする広告手法として
「校門の前でビラ配り」ほど効率のいい方法は他にないだろう。
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