2022年8月3日水曜日

【読書感想文】奥田 英朗『真夜中のマーチ』/エンタテインメントに振り切った小説

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真夜中のマーチ

奥田 英朗

内容(e-honより)
自称青年実業家のヨコケンこと横山健司は、仕込んだパーティーで三田総一郎と出会う。財閥の御曹司かと思いきや、単なる商社のダメ社員だったミタゾウとヨコケンは、わけありの現金強奪をもくろむが、謎の美女クロチェに邪魔されてしまう。それぞれの思惑を抱えて手を組んだ3人は、美術詐欺のアガリ、10億円をターゲットに完全犯罪を目指す!が…!?直木賞作家が放つ、痛快クライム・ノベルの傑作。


 大金を手に入れるために主人公たちが東奔西走するコン・ゲーム小説。

 恐喝を企て、それが失敗すると窃盗を試み、それも失敗すると仲間を加えて再び窃盗を試み、また失敗すると今度はさらに仲間を増やしてもっと大金の強奪を企て、それもまた失敗すると今度は……と、めまぐるしく展開が変わる。目標は「大金を手に入れる」だが、失敗するごとに目標となる金額はどんどん膨れあがっていき、最終的には10億円をめぐって詐欺師・中国人マフィア・ヤクザを含め4チームが攻防をくりひろげる争奪戦となる。

 細かいリアリティは捨てて、疾走感を優先させたような小説。メッセージ性も哲学も倫理観もかなぐり捨ててとにかくエンタテインメントに振り切ったこの感じ、嫌いじゃないぜ。

 



【以下ネタバレ含みます】


 息もつかせぬ展開で、終盤はハラハラドキドキだったが、最終的にはこぢんまりしたハッピーエンドに着地してしまったのがちと残念。ここまでド派手な物語をくりひろげてきたのだから、最後は想像以上の大成功を収めるか、あるいはすべてを失うぐらいの大失敗か、それぐらいのラストを期待していた。

 あれだけドンパチやったり命を賭けて危ない橋を渡ったのに、最終的に手にするのがひとり三千万円とちょっと。ううむ。もともとはぐれ者のヨコケンはともかく、サラリーマンだったミタゾウや裕福な暮らしをしていたクロチェからしたら割に合わなくないか? 人生を変えられるほどの額じゃないぞ。

 個人的には、もっともっとアホな展開でもよかったとおもうな。

 小説で読むよりも映画にするほうが向いている小説かも(実際ドラマ化されたらしい)。


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