2022年6月17日金曜日

【漫才】将棋のルール

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「将棋をやってみたいとおもうんだけどさ」

「いいじゃん」

「でもルールがなにひとつわかんないんだよね」

「あー。まあ最初はちょっとむずかしいかもな。でもすぐおぼえるよ」

「将棋のルールわかるの?」

「わかるよ」

「全部?」

「全部? ん、まあ、全部……わかるよ」

「じゃあ聞くけど、ごはんっていつ注文すんの?」

「ごはん?」

「ほら、棋士が対局するときってお昼ごはん食べたりするんでしょ。あれってどのタイミングで注文するの? 誰かが訊きに来るの? それともこっちから『そろそろ注文いいですか』って言うの?」

「えっ、えっ、ちょっと待って。プロ棋士の対局の話?」

「そうだよ」

「いや、将棋のルールっていうから、駒の動かし方とかそういうのかとおもったんだけど」

「そんなのは本読めばすぐわかるじゃん。今知りたいのはごはんの注文に関するルール」

「それはルールじゃないでしょ」

「じゃあルール無用で注文していいわけ? 板前呼んで十万円ぐらいする寿司のコースを握らせてもいいわけ? 対局やってる横でマグロの解体させてもいいわけ?」

「いやさすがにそれはだめでしょ」

「ほら、だったらルールがあるんだよ。将棋のルールは全部知ってるんでしょ。いつ注文するのか教えてよ」

「いやおれがおもってたのは盤上のルールだったんだけど……。まあ、十一時ぐらいに主催者が訊きに来るんじゃない? おひる何にしますかって」

「何頼んでもいいの?」

「いや……さすがにマグロの解体ショーやられたらまずいから……。あ、そうだ、メニューがあるんだよきっと。和食、洋食、中華それぞれのお店の。その中から選ぶんだ。だからいちばん高くてもうな重(上)の五千円とかだろうね

「棋士はいつお金払うの? 注文するとき? それともごはんが届いてから?」

「えっと……どっちでもないとおもう。対局中に財布出してるの見たことないもん。トーナメントのときは主催者持ちかな。将棋以外のことに頭使わせたら悪いし」

「ふだんの対局のときは?」

「どうしてるんだろ。あれかな、将棋協会とかが立て替えておいて、給料払うときにその分差し引いて振りこんでるとかかな」

「でも労働基準法第二十四条に賃金の全額払いの原則があるから貸付金との相殺は禁じられてるんじゃなかったっけ」

「なんだよ妙にくわしいな。将棋のルールは知らないくせに」

「法学部だから」

「めんどくせえなあ。じゃあ対局が終わってから請求してるんじゃないの」

「あのさ、テレビで観たことあるんだけど、棋士って対局中におやつも食べるでしょ」

「ああ、食べてるね。ものすごく頭使うから、甘いものがほしくなるらしいよ」

「おやつを持ち込んで食べるんだってね」

「そうそう。誰が何食べたかとかもけっこう注目されてるよね」

「あれは何持ち込んでもいいの」

「まあだいたいいいんじゃない。そりゃパティシエを持ち込んで作らせるとかはだめだろうけど」

「たとえばお汁粉とか」

「ぜんぜんいいでしょ。甘いし、冬なんかはあったまるだろうし」

「お汁粉の湯気で対局相手のメガネが曇らせる作戦」

「そううまくいくかね。そんなの一瞬でしょ」

「いつまでもメガネが曇るように、煮えたぎったお汁粉を……」

「そんな熱いの自分も食えないじゃん」

「食うときははフーフーして冷ますから大丈夫。あ、待てよ。フーフーしたら二歩で反則負けか」

「くだらねえな。将棋のルールなにひとつ知らないって言ってたくせに、二歩は知ってんのかよ」

「おまえこそ将棋のルールぜんぶ知ってるっていってたくせにぜんぜん知らないじゃないか」

「おれが言ってるのは将棋のルール。さっきからおまえが訊いてきてるのは棋士のルールじゃないか」

「じゃあ将棋のルールについて質問するよ。新しい駒を考えたときはどこに申請したらいいの?」

「……は?」

「だからさ、おれが新しい駒を考えたとするでしょ」

「なに言ってんの?」

「たとえばね、土竜(もぐら)って駒を考案したとするよ。相手の駒や自分の駒の下をくぐって前に進めるやつ」

「だからさっきからなに言ってんの

「これを正式に採用してもらいたいとおもったら、どういう手続きで日本将棋連盟に申請したらいいの? 決まった書式とかあるの? どこで申請書のPDFファイルをダウンロードしたらいいの? 採用された場合の権利関係はどうなるの? 発案者にはいくら入ってくるの?」

「ちょっ、ちょっと待って。ないから。新しい駒が採用されることなんかないから」

「ないの?」

「ないよ」

「えええ……。じゃあおれはなんのために三年もかけたんだ……」

「新しい駒考えてたのかよ」

「数百種類も考えたのに……」

「それもはや将棋じゃなくてポケモンバトルだろ」

「じゃあさ、また別の質問」

「もうやだよ。ぜんぜん将棋のルールの質問じゃないじゃない」

「次で最後だから。次こそちゃんとした質問」

「……わかったよ。最後な」

「ありがとう。じゃあ最後の質問。もしも将棋の駒が寿司ネタだとしたら、それぞれの駒はどの寿司ネタに該当するとおもいますか? また、どの順番で食べるのが正解だとおもいますか?」

「どこが将棋のルールなんだよ!!」




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