2022年6月29日水曜日

若い人に薦めたい名著百冊

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そんなものはない!


 いや、ほんとはあるけど、「若いうちにこれだけは読んどいたほうがいいよ」と言ってもうっとうしがられるだけだから言わない!

 読書にかぎらず音楽でもアニメでも映画でも、年寄りの「若いうちにこれだけは抑えとけ」は聞く価値なし。

 だいたい、そういうやつが挙げるものって古いんだよね。

 自分が若い頃に読んで感銘を受けたものだから、今の基準からすると古い。当時はセンセーショナルだったかもしれないけど、今は似たジャンルでもっとレベルの高いものが登場している。年寄りがそれを知らないだけ。


 若い人が知らないってことは、かつては最高峰にいたけど今の基準ではそんなにすごくないってことだ。

 カール・ルイス。ぼくが子どもの頃にその名を知らない人はいなかった。陸上100メートル走世界記録保持者だった人だ。

 でも今の小学生はまず知らない。とっくに世界一じゃなくなってるから。

 それでいい。今の小学生に「カール・ルイスという人がいて、そりゃあ速かったんだよ。短距離走をやるんなら彼ぐらいは知っておいたほうがいい。彼の走りをよく見て勉強してごらん」と説くのは無意味だ。今トップの人の走りを見て真似したらいい。


 そもそも「若い人に薦めたい」とか「十代のうちに読んでおきたい」とかいうあたりが、時代についていけてない人の発言丸出しだ。

 ほんとにいいものなら年齢関係なく勧めたらいい。それができないのは、自分が新しいものを取り入れられていないから。

 えらそうにしたい。でも自分よりも詳しい人がいっぱいいるから、恥ずかしくて知識をひけらかせない。

 そうだ! 若いやつを狙おう! 同じ時間を生きたすごいやつにはかなわないけど、生きている時間が短いやつにはえらそうにできる! だってあいつらが生まれる前の古い作品をこっちは知ってるんだもの! 仮に向こうが知っていたとしても「でも当時はすごかったんだよ。今の子にはわからないだろうけど、時代の空気にうまく乗ったというか……」みたいに言えばこっちの浅薄さをごまかせるし!


 思い返してほしい。自分が若い頃、「若いうちにこれだけは読んどいたほうがいい」と言われて素直に読んだだろうか。読んだとして、勧めてきた人と同じくらいの衝撃を受けただろうか? せいぜい「ふーん、昔はこんなものがありがたがられていたのか」ぐらいじゃなかったか?


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