物件探偵
乾 くるみ
不動産物件をめぐるミステリ短篇集。
お買い得とおもわれた投資用物件だが購入したとたん借り手が退去、全室入居済みとしかおもえないマンションが空室ありとして売りに出されている、事故物件を購入したら謎の女性がやってきた……。
など、日常のちょっとした謎系ミステリ。真相も詐欺やご近所トラブル程度の話で現実にもありそう(ありえない話もあるけど)。
不動産×ミステリという着想はおもしろい。
ミステリの世界で不動産というと「××の館」みたいな奇想天外な建物で起こった殺人事件みたいな話が定番だが(古いか?)、ほんとにありそうな物件を題材にしたミステリというのはありそうでなかったかもしれない。
業界用語の解説もあり、不動産の勉強にもなる。
ただ中古分譲マンションしか扱っていないのが個人的には気に入らない。
なぜならぼくは不動産を購入したことがない(そして購入したいという気もあまりない)から。
ぼくにとって不動産屋といえばもっぱら賃貸のほうなんだよな。
テーマはおもしろいんだけど、小説としておもしろいかというと、うーん……。
決してつまらなかったわけじゃないんだけどね。ミステリとしての粗もないし。
最大の問題は、意外性がないこと。
「宅地建物取引業法にはこんな意外な抜け穴があったのか!」
「この間取りを使ってこんな大胆な犯行ができるのか!」
みたいな驚きがないんだよね。
まあそれをやると、それこそ××館の殺人になってしまうんだろうけど。
あと個人的には探偵役が魅力的じゃなかった。
「物件の声が聞こえる」女性が探偵役なんだけど、好きじゃない。探偵役に超常的な能力を持たせちゃうと、ミステリとしての説得力がなくなるんだよな。
超能力使って犯罪を見破ったら、それもうミステリじゃなくてSFだもん。
西澤保彦作品みたいに、SF+ミステリがメインテーマであるならいいんだけどさ。
乾くるみ作品は『リピート』や『セブン』がパズル的なおもしろさにあふれていたから期待したんだけど、これはそこまでじゃなかったな。
その他の読書感想文はこちら
0 件のコメント:
コメントを投稿