2021年9月6日月曜日

【読書感想文】乾 くるみ『物件探偵』

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物件探偵

乾 くるみ

内容(e-honより)
高利回りのマンションを手に入れたはずが、オーナー生活はなぜか4ヵ月で終了。新幹線の座席が残された部屋、HDDから覚えのない録画が流れたり、バルコニーに鳩の死骸を見つけたり。全て何者かの嫌がらせなのか?格安、駅近、など好条件にも危険が。事故物件をチェックしただけでは見抜けない「謎」を宅地建物取引を極める不動尊子が解明。物件×人を巡る極上ミステリー6話。

 不動産物件をめぐるミステリ短篇集。

 お買い得とおもわれた投資用物件だが購入したとたん借り手が退去、全室入居済みとしかおもえないマンションが空室ありとして売りに出されている、事故物件を購入したら謎の女性がやってきた……。
 など、日常のちょっとした謎系ミステリ。真相も詐欺やご近所トラブル程度の話で現実にもありそう(ありえない話もあるけど)。

 不動産×ミステリという着想はおもしろい。
 ミステリの世界で不動産というと「××の館」みたいな奇想天外な建物で起こった殺人事件みたいな話が定番だが(古いか?)、ほんとにありそうな物件を題材にしたミステリというのはありそうでなかったかもしれない。
 業界用語の解説もあり、不動産の勉強にもなる。

 ただ中古分譲マンションしか扱っていないのが個人的には気に入らない。
 なぜならぼくは不動産を購入したことがない(そして購入したいという気もあまりない)から。
 ぼくにとって不動産屋といえばもっぱら賃貸のほうなんだよな。


 テーマはおもしろいんだけど、小説としておもしろいかというと、うーん……。

 決してつまらなかったわけじゃないんだけどね。ミステリとしての粗もないし。

 最大の問題は、意外性がないこと。
「宅地建物取引業法にはこんな意外な抜け穴があったのか!」
「この間取りを使ってこんな大胆な犯行ができるのか!」
みたいな驚きがないんだよね。
 まあそれをやると、それこそ××館の殺人になってしまうんだろうけど。


 あと個人的には探偵役が魅力的じゃなかった。
「物件の声が聞こえる」女性が探偵役なんだけど、好きじゃない。探偵役に超常的な能力を持たせちゃうと、ミステリとしての説得力がなくなるんだよな。
 超能力使って犯罪を見破ったら、それもうミステリじゃなくてSFだもん。
 西澤保彦作品みたいに、SF+ミステリがメインテーマであるならいいんだけどさ。

 乾くるみ作品は『リピート』や『セブン』がパズル的なおもしろさにあふれていたから期待したんだけど、これはそこまでじゃなかったな。


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