カラオケ行こ!
和山 やま
上質なコメディ漫画。おもしろかった。
合唱部の部長である聡実くんは、コンクールの後でヤクザの狂児に拉致される。連れてこられたのはカラオケ店。組長が主催するカラオケコンクールで最下位だと、刺青が好き(だけど絵心がない)な組長に刺青を入れられるという。はじめはおびえていた聡実くんだったが、徐々に狂児への指導に熱が入っていき……。
というむちゃくちゃな設定。むちゃくちゃなんだけど、最初のぶっとんだ設定以外は地に足がついている。「この立場に置かれたらこうするかもしれないな」という行動を登場人物たちはとる。みんな、ほんとはいないけど、だけどどこかにはいそうな人たちだ。
笑わせたるでえ! みたいな感じではなく、まじめにおかしなことをやっているのがいい。登場人物みんなまじめだからね。カラオケ大会を主催する暴力団組長も、カラオケ大会に必死になる組員も、中学生に歌を教えてもらおうとする組員も、なんだかんだ言いながらちゃんと教えてる中学生も、みんなふざけてない。でもどこかずれている。
この漫画を読んだ妻は「『動物のお医者さん』みたい」と言っていが、ぼくは同じ佐々木倫子の『Heaven?』や忘却シリーズ(『食卓の魔術師』『家族の肖像』『代名詞の迷宮』)に似ているとおもった。常識人で主張は強くないが自我のしっかりした主人公と、悪気なく周囲に迷惑をかけるパートナー。
そうおもうと、聡実くんが将来の伊賀くんなんじゃないかとおもえてきたぞ。
登場人物がみんななめらかな関西弁を話すので作者も関西出身者かとおもったら沖縄出身なんだそうだ。意外。
こてこてのヤクザ+こてこての関西弁なのに、なぜか上品な仕上がり。ふしぎな味わい。冷しゃぶサラダみたいな漫画だ。豚肉がこんなにさわやかな料理になるなんて。
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