赤い実 はじけた
名木田 恵子
同世代で、光村図書の国語の教科書を使っていた人ならきっとおぼえているはず。
『耳をすませば』とならんで全国の子どもたちを赤面させた『赤い実 はじけた』。
ふと「どんな話だったっけ」とおもって読んでみたのだが、なんともあっけない話だった。
小学生の女の子が魚屋に行くと同級生の男の子が店番をしている。少し苦手だとおもっていた男の子だけど、魚屋見習いとして一生懸命な姿を見ているうちに「パチン」と胸の中で赤い実がはじけたような気がした……。
というお話。
青春小説の冒頭みたいだけど、これで終わり。
長篇の一部かとおもっていたら教科書用に書き下ろされた短篇(というか掌編)らしく、すごく短い。
三分で読み終える。
この子の恋の行方はどうなるのだろう……と想像する余韻すらない。たぶんどうもならない。小学生の恋なんてそんなもんだ。
他にも小学生の淡~い恋愛(淡すぎてほぼ純白)を描いた短編が収録されているが、はっきりいっておもしろくない。
まあね。小学生の「好き」なんておもしろくないよなあ。
肉欲とか見栄とか打算とか背徳とかがあってこそ恋愛はドラマになる。
安っぽい恋愛ドラマは「純愛」という言葉をよく使うが、本当の純愛なんて単純な欲求だから「尿意」とか「眠たい」とかと同じで、まったく心を動かされないんだよね。
そんな中、父親のDVに苦しむ母子を描いた『な・ぐ・ら・な・い』は唯一読みごたえがあった。といっても児童文学だから暴力の描写なんてぜんぜんソフトなんだけど。
道徳の教科書にはこういう話こそ載せたほうがいいよね。
「国を愛する心」を教えるよりも「子どもを殴るクズが父親だったとき、子どもなりにとれる行動は何か」みたいなことを教えるほうが千倍役に立つから。
その他の読書感想文はこちら
0 件のコメント:
コメントを投稿